2013年6月11日火曜日

アベノミクスの迷い 政治アカデメイア

踊り場アベノミクスの迷い映す「神学論争」
 首相の安倍晋三が「秋に成長戦略第2弾に取り組む。思い切った投資減税を決める」と言い始めた。検討中の成長戦略は14日に閣議決定の運び。それを待たずに自ら踏み込み不足を認めたに等しい。そんなちぐはぐの底流には踊り場のアベノミクスの迷いを映す「神学論争」がある。

■「政労使協議の場」の裏にある麻生VS茂木

 「企業の設備投資が増えても、働き手の賃金はなかなか上がらない。ここは政労使でよく話し合わないとうまくいかない」

 6日の経済財政諮問会議。副総理・財務相の麻生太郎は政権発足時からの持論を繰り返した。これに民間議員の一人が「雇用改革も含め、政労使でざっくばらんな議論ができる場を政治の指導力でつくってほしい」と歩調を合わせると、経済財政・再生相の甘利明が「首相と相談して枠組みを考える」と応じた。



6日の経済財政諮問会議では政労使で雇用改革を議論する枠組み作りが話し合われた(首相官邸)
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6日の経済財政諮問会議では政労使で雇用改革を議論する枠組み作りが話し合われた(首相官邸)

 賃上げや雇用改革を巡る政労使の3者協議は、この日固まった経済財政運営の基本方針「骨太方針」素案も触れている。5日に産業競争力会議がまとめた成長戦略の素案も、3者による「包括的な課題解決に向けた共通認識を得る場」の新設を明記した。もう既定路線なのに、麻生はダメ押しとばかりこだわって見せた。背景にあるのが経済産業相の茂木敏充との論争だ。

 茂木 「設備投資を3年間でリーマン・ショック前の水準である70兆円以上に戻すため、既存の税制の拡充に加え次元の異なる支援策を講じる。思い切った税制措置・金融措置で、過剰供給構造にある業界の再編も迫る」

 麻生 「企業がリスクを取る意欲が減少している現状で、投資減税したら本当に投資をするのか。合併も誰かに言われたからではなく、生き残るために起きるものだ。政策減税の深掘りだけで企業が動くのか疑問だ」

 論争に火が付いたのは5月22日の競争力会議だ。茂木が打ち出したのは「企業の過少投資」「政府の過剰規制」「業界内の過当競争」の3つの是正を目指す「産業競争力強化法案」の策定である。規制改革に加え、設備投資や事業再編を促す税制措置、公的融資などの政策手段を5年間で集中投入するという。
茂木は成長分野への設備投資の爆発的増加を起点にして「企業収益が増え、個人所得も増えて消費の拡大につながり、また民間投資につながる好循環をつくりたい」と訴える。「異次元」を口にするが、内実は経済産業省が通産省時代からしばしば立案してきた伝統的な経済の供給サイド活性化の思想といえる。
■設備投資と賃上げ、起点はどちら

 これに真っ向から疑念をぶつけたのが麻生だ。「国内総生産(GDP)の6割は消費だ。民間投資の拡大と賃金の向上が両方来ないと消費は拡大しない」と需要サイドにも目を向ける。5月28日の諮問会議でも、消費を活気づける賃上げなしにはデフレ脱却もおぼつかない、と経営者の決断を求めた。内部留保をため込んだままなら「損をする」ような税制措置までほのめかした。

 「政策で民間企業にインセンティブをつければ、自然に生産性が上がり、雇用や所得の増加による好循環が動くのか。そうはならない。そうしなければ損をするような形にしないとダメではないか。企業の決断が必要だ。物価だけ上がり、賃金が上がらないと大変なことになる」

 元経営者の麻生には、雇用は守っても賃金は上げず、コスト削減で内部留保を増やして設備投資は控える企業の行動がデフレ下では合理的とも映る。流れを変えたいが、至難の業だと直感する。財務省にも「成長戦略にも真に異次元の発想が必要ではないのか」と「賃上げ→消費活性化→企業収益の向上→投資拡大」と賃上げを起点に逆回りの好循環を説く論者さえいる。

 甘利が麻生の主張に耳を傾け、1980年代のオランダのワッセナー合意をモデルに政労使の3者協議に取り組む。使用者側が賃上げに動く代わりに、労働側は雇用の流動化を容認する。政府は賃上げする企業への優遇措置や雇用規制改革で政策的に後押しする。これらをパッケージで議論し、政府が間に入ることで打開を目指す。諮問会議に専門調査会を設置する方向だ。










アベノミクス官邸会議が決めた主な施策
◎骨太方針=経済財政諮問会議
・ プライマリーバランスの赤字を15年度までに半減、20年度までに黒字化
・ その後の債務残高GDP比の安定的な引き下げ
・ 社会保障支出も聖域とはせず、見直し
◎成長戦略=産業競争力会議
・ 中長期的に2%以上の労働生産性の向上
・ 10年間の平均で名目3%程度、実質2%程度のGDP成長
   (10年後に1人当たり名目国民総所得(GNI)が150 万円以上拡大)
・ 政労使の「包括的な課題解決」に向けた3者協議を新設
・ 規制改革の突破口として、首相主導の「国家戦略特区」を創設
・ 設備投資や事業再編を促す「産業競争力強化法案」を立案
・ 17年度末までに40万人分の保育の受け皿を用意し、待機児童を解消
・ 環太平洋経済連携協定(TPP)、日中韓自由貿易協定(FTA)などの交渉促進
・ 公的年金などが保有する金融資産(公的・準公的資金)の運用方法の再検討
◎規制改革に関する答申=規制改革会議
・ 医薬品のインターネット販売の原則解禁
・ 認可保育所への株式会社、NPO法人の参入促進
・ 職務や勤務地などを限定した正社員の雇用ルールを14年度に整備
・ 労働者派遣制度を年内にも抜本見直し


アベノミクスのミッシングリンク(失われた輪)は設備投資か賃上げか。必要条件と十分条件の関係とも見えるが、麻生・茂木論争をもう一皮むけば、安倍内閣の権力構造の深奥での暗闘も浮かび上がる。経産官僚主導で進む政策決定に、財務官僚が懐疑的な目を向ける構図だ。
■経産省VS財務省の写し絵

 安倍の秘書官には政務担当の今井尚哉(昭和57年入省)、柳瀬唯夫(59年)と経産官僚が2人いる異例の布陣だ。元経産相の甘利が責任者だった自民党の衆院選公約に沿い、政策決定の司令塔として内閣に日本経済再生本部を新設し、競争力会議を置いたところから経産省色は鮮明だった。甘利は経産省製造産業局長の菅原郁郎(56年)に成長戦略を仕切らせている。

 財務省は民主党政権が休眠させた経済財政諮問会議の復活に動いて「マクロ政策は諮問会議、ミクロ政策は競争力会議」とすみ分けを試みた。税制問題は、両者のはざまで腰を据えた議論が進んでこなかった。麻生の茂木批判には、2013年度から設備投資や研究開発を促す法人税の軽減措置を拡充したばかりで、さらなるつまみ食いの減税要求をけん制する意図もにじんだ。

 参院選を控えて市場の期待をつなぎ留めたい安倍は、なりふり構わず年末の税制改正前倒しを口にする。従来型の成長戦略に疑念を隠せない財務省も異次元の金融緩和で乱高下しがちな長期金利に気が気でない。14年4月の消費税率引き上げ問題を抱え、アベノミクスをどう下支えするか、傍観者ではありえない。不協和音を抱えながら政権の「総力戦」は続く。=敬称略
 

2013年6月10日月曜日

市場が「最大野党」、アベノミクスの浮沈かかる

グローバルOutlook
今週はアベノミクスの浮沈を賭けた1週間となる。10~11日に日銀は金融政策決定会合 を開き、14日の閣議で成長戦略や骨太方針を最終決定する。今や「最大野党」となった株式、為替市場を落ち着かせるには、政権の意思と行動が問われよう。


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日経平均株価 は先週、1万3000円を下回ったが、土俵際として意識される水準がある。1万2397円と1万1883円だ。前者は今年3月期末の株価で、ここを下回ると新年度に入ってからの株価上昇は帳消しとなる。


 後者の1万1883円は、昨年初から日本株を10兆円強買い越した外国人投資家にとって、含み益がゼロになる水準だ。外国勢の含み益は今年5月22日には3.2兆円に膨らんだが、日経平均が1万2887円まで下落した先週末には9000億円弱と、1兆円の大台を下回った。

 計算上は日経平均があと約1000円下がるだけで、アベノミクス相場に賭けて投資した日本株は、含み益がなくなってしまう。今回の上げ相場で全体として売り越した日本の投資家と違って、外国勢は土俵際なのだ。10兆円強も投資している日本株で損を出したくない。そう考えれば、売りを手控える可能性はある。

 日本株をめぐる攻防は、為替市場にも波紋を投げかけている。今回の日本株高の起点は、アベノミクスの第1の矢である大胆な金融緩和と円高修正である。円安の下で日本株投資を増やした外国勢は、為替リスクを抑えるために、先物の円売りを膨らませていた。
 大手資産運用会社の試算によると、日本株投資に伴う円の先物売りは10兆円規模にのぼっていた。その巻き戻しが出るとの観測から、先週の為替市場では円高が進んでいる。

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日銀の政策決定会合では、市場混乱の収拾策が焦点となり、追加緩和が打ち出されよう。その際に重要なのは、デフレ 脱却という基本だ。物価を上向かせ実質金利 を押し下げることは、企業が保有する資金を投資などに向かわせるうえでも欠かせない。
 長期金利 上昇の抑制を意識する余り、国債 購入に力点を置くようだと、債券から株式への資金シフトを滞らせかねない。上場投資信託 (ETF)が購入対象として重要性を増しているとみられる。
 5日に示した政府の成長戦略に対しては、税の問題を素通りにしたとの不満も、市場参加者の間では強い。これに対し、安倍晋三首相は「日本経済新聞」のインタビューで設備投資減税を実施すると明言した。この減税については財務省とも話はついているもようだ。
 市場に漂っている不透明感は7月の参院選後の政策運営。軸足が憲法改正などに移るとの観測もあったが、首相自身が経済優先の政策運営を確約した。政権の姿勢はかなりハッキリした。市場にこうしたメッセージが届けば、景気と企業業績の好転を背景にアベノミクス相場の復活につながる期待も残る。

2013/6/10 7:00     [有料会員限定]





2013年5月31日金曜日

日本株急落、波乱再び 欧米変調でリスク回避拡大

いったん収束に向かいつつあった株式相場が再び逆風にさらされた。30日の東京株式市場では日経平均株価が大幅に反落し、終値は737円安と今年2番目の下げ幅になった。米国では金融緩和が「出口」に向かうとの観測で長期金利が上昇基調になり、世界の株式市場でリスクを回避する動きが拡大。特に不安定さが残る日本では市場関係者の予想を上回る下げにつながった。荒れた相場はまだ続くとの見方も多い。
 日経平均の終値は前日比5%安の1万3589円03銭。1000円超下落する前日の22日に付けた年初来高値と比べると2000円超(1割)下げた。短期筋の株価指数先物への売りも続き、取引終了直前の1分間だけで100円近く下げた。

 過熱への警戒感から売りが膨らんだこれまでと30日の違いは、欧米市場の変調という外部要因がきっかけになった点だ。

 前日29日、米連邦準備理事会(FRB)が金融緩和の早期縮小に踏み切るとの観測が浮上し、欧米株が下落。30日のアジア市場でもフィリピン株などが急落し、リスク回避の動きが広がった。「FRBの緩和縮小が世界市場に波乱をもたらしかねないリスクが再確認された」(BNPパリバ証券の河野龍太郎氏)
金融引き締めは景気の底堅さを示し、必ずしも悪材料ではない。だが投資家は「出口」に至る難しさを警戒、米10年物国債利回りは最近、2012年4月以来の水準に上昇した。「景気の足取りに比べ金利上昇ペースが速くなれば住宅市場の足を引っ張り、米国株高の構図が崩れる」(クレディ・スイス証券の白川浩道氏)との指摘も出る。
 世界の投資家がリスク回避に動く中で日本株の下げが目立ったのは、相場の不安定さが収まりきっていなかったためだ。
 先物と現物株を組み合わせた取引の残高は、5月中旬に6年2カ月ぶりの水準に膨らんでいた。ファンド勢の先物買いが膨らむことで現物株も押し上げられてきたが、最近は先物の売りに引きずられて現物株も下げる動きだ。証券会社も先物の売り手になっている。株高局面でヘッジファンドとの取引に絡んだリスク管理のために先物を買っており、株価が下がると損失を限定するため、保有高の縮小を迫られる。
 この動きに拍車をかけるのが短期筋の売りだ。「『円売り・株式先物買い』を続けてきた一部ファンドが、いったん取引を解消している」(欧州系証券トレーダー)
 損失リスクを避けたい投資家が円買いに動くことで円高が進み、さらに株安を招くというリスクも日本株にはある。
 もっとも、急落を経ても日経平均の年初来の上昇率は3割にのぼり、1~2割の米国株やドイツ株を上回る。指標面の割安感から、投資家が好業績銘柄を選ぶ動きが再開する可能性もある。30日の大阪証券取引所の夜間取引では日経平均先物が上昇、1万4000円に迫る場面もあった。30日午前の米国株式市場ではダウ工業株30種平均が反発して推移している。
 荒れた相場はなお続きそうだが、「企業業績や国内景気は堅調で、日経平均が1万3000円を大きく下回るとは考えにくい」(三井住友アセットマネジメントの浜崎優氏)との声もある。     2013/5/31 1:20 nikkei.com

2013年5月22日水曜日

世界で最も影響力のある女性ランキング

forbes

(2013年5月22日 Forbes.com)

 フォーブスの「世界で最も影響力のある女性 2013」には著名政治家や企業経営者、富裕な活動家、セレブたちが名を連ねる。こうした女性たちとともに、トップ100人には次世代の起業家やメディア専門家、技術者、慈善活動のリーダーなども肩を並べている。資産額やメディア露出度、影響力をもとにランク付けした。



世界で最も影響力のある女性 上位10人
順位 名 前 肩 書
1 アンゲラ・メルケル 独首相
2 ジルマ・ルセフ ブラジル大統領
3 メリンダ・ゲイツ ビル&メリンダ・ゲイツ
財団共同会長
4 ミッシェル・オバマ 米大統領夫人
5 ヒラリー・クリントン 前・米国務長官
6 シェリル・サンドバーグ 米フェイスブック
最高執行責任者
7 クリスティーヌ・ラガルド IMF専務理事
8 ジャネット・ナポリターノ 米国土安全
保障省長官
9 ソニア・ガンジー インド国民会議派
総裁
10 インドラ・ヌーイー 米ペプシコCEO
フォーブスがまとめた「世界で最も影響力のある女性 2013」上位10人。トップ100に日本人はランクインしていない

 フォーブスが選んだのは、政界・経済界の実力者といった従来の分類の枠を超えた女性たちだ。権威や権力といった我々の持つ概念自体、こうした変革を進める人物たちの活躍によって変わってきており、その過程で、世界はより生き生きと活気に満ちた方向に変容している。

 今年の100人には、9つの国のリーダーがいる。該当する国の国内総生産(GDP)を合計すると11兆8000億米ドルに上る。その1人が、1位に選ばれたドイツのアンゲラ・メルケル首相だ。100人のリストのうち24人の最高経営責任者(CEO)が経営する企業の年間売上高は合わせて8930億ドル。16人は自分の企業を立ち上げた人たちだ。今回初めて選ばれた富豪3人のうち2人は、ファッションブランド「トリー・バーチ」創業者のトリー・バーチ氏とインナーウエアブランド「スパンクス」創業者のサラ・ブレークリー氏である。全体では14人の富豪が選ばれ、資産額はあわせて820億ドルを超える。

 2013年世界で最も影響力のある女性の内訳をざっと見てみよう。
■新顔

南大門の復元記念式で市民に手を振る韓国の朴大統領(4日、ソウル)=共同
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南大門の復元記念式で市民に手を振る韓国の朴大統領(4日、ソウル)=共同



 今年初めてトップ100に入ったのは15人。韓国の朴槿惠大統領(11位)、ロッキード・マーチンCEOのマリリン・ヒューソン氏(34位)、トリー・バーチ氏(69位)、サラ・ブレークリー氏、インターネット検索サービス会社の百度(バイドゥ)最高財務責任者(CFO)、ジェニファー・リー氏(98位)などだ。

■常連

 10回目の発表となった今回、注目されたのは、初回の2004年にトップ100に入っていた顔ぶれで、今回も残っている15人だ。テレビ司会者のオプラ・ウィンフリー氏(13位)は当然のようにランクイン。ヒラリー・クリントン氏(5位)も揺るがない。



国際通貨基金(IMF)のラガルド氏。この日は職権乱用疑惑で事情徴収が行われた(23日、パリ)=AP
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国際通貨基金(IMF)のラガルド氏。この日は職権乱用疑惑で事情徴収が行われた(23日、パリ)=AP

 さらに、国際通貨基金(IMF)専務理事のクリスティーヌ・ラガルド氏(7位)、インドの政治家ソニア・ガンジー氏(9位)、米ペプシコCEOのインドラ・ヌーイー氏(10位)、国連開発計画(UNDP)総裁のヘレン・クラーク氏(21位)、米下院議長を務めたナンシー・ペロシ氏(22位)、米ディズニーABCテレビジョングループ社長のアン・スウィーニー氏(24位)、米ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント共同会長のエイミー・パスカル氏(36位)、英エリザベス2世(40位)、フィデリティ・インベストメント フィナンシャル部門社長のアビゲイル・ジョンソン氏(60位)、テマセクCEOでリー・シンガポール首相の配偶者であるホー・チン氏(64位)、ジャーナリストのダイアン・ソーヤー氏(73位)、『ハリー・ポッター』シリーズで知られる作家のJ・K・ローリング氏(93位)、米フォックス・ニュースのアンカー、グレタ・バン・サステレン氏(97位)だ。



■ナンバーワン

閣僚会合に到着したメルケル首相。首相府長官の誕生日に贈る花を持ち上げた(15日、ベルリン)=AP
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閣僚会合に到着したメルケル首相。首相府長官の誕生日に贈る花を持ち上げた(15日、ベルリン)=AP



 独のメルケル首相は10年で8回ランクイン。そのうち7回が1位だった。



■女性初

 トップ100のうち40%は「女性で最初に○○した人」だった。例えば、アフリカ初の国家元首(リベリアのエレン・ジョンソン・サーリーフ氏)、ギビング・プレッジという社会貢献キャンペーンに参加を表明したサラ・ブレークリー氏、米IBMのジンニ・ロメッティCEOら。もっと際立っているのは、複数の「最初」という記録をもつ女性だ。アイビーリーグ大学初の女性学長で、女性初のロックフェラー財団のトップでもあるジュディス・ロディン氏、そしてヒラリー・クリントン氏も同様だ。

スピーチするクリントン前国務長官(2月、ワシントン)=AP
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スピーチするクリントン前国務長官(2月、ワシントン)=AP
■ヒラリー健在

 クリントン氏の経歴は「最初」のオンパレードだ。ファーストレディーから米上院議員を経て大統領候補となり、国務長官になった唯一の女性。現在は一市民だが、クリントン氏は世界で最も注目され、発言に関心が集まる女性であり続けている。2016年大統領選で民主党の大統領候補となるとの見方が優勢で、自由主義圏の次代のリーダーと目されている。クリントン氏は今も、発言を控えるなどということは考えていないようで、1回につき20万ドルとも推計される講演料で先月は講演に回り、1400万ドルと言われる本の出版契約も結んでいる。



■技術畑のリーダー

米フェイスブックのサンドバーグCOO(2012年10月、ニューヨーク)=ロイター
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米フェイスブックのサンドバーグCOO(2012年10月、ニューヨーク)=ロイター



 「最も影響力のある女性たち」に技術者部門が設けられて今回が2回目となる。トップ25人中、5人が技術者部門からランクインした。米フェイスブックのシェリル・サンドバーグ氏(6位)、米IBMのロメッティ氏(12位)、米ヒューレット・パッカードのメグ・ウィットマン氏(15位)らだ。技術者部門に入ったのは全部で16人。米グーグルのスーザン・ウォジスキ広告担当上級副社長や、華為技術(ファーウェイ)会長の孫亜芳氏(77位)らがいる。





女優とともにイベントに現れたバーチ氏(中央。6日、ニューヨーク)=ロイター
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女優とともにイベントに現れたバーチ氏(中央。6日、ニューヨーク)=ロイター

■台頭する女性起業家

 今回顕著だったのは、自らが創業者だったり、創業した会社のオーナーだったりという女性の多さだ。その多くが自らの名前を冠したブランド自体が、ファッションの最先端をリードする存在になっている。ミウッチャ・プラダ氏(58位)、ザラの創業者、ロザリア・メラ氏(66位)、トリー・バーチ氏、ダイアン・ファン・ファステンバーグ氏(74位)、などが選ばれた。この他の起業家たちには、オプラ・ウィンフリー、米インターネットメディア「ザ・ハフィントン・ポスト」編集長のアリアンナ・ハフィントン氏(56位)、中国の不動産王、張欣氏(50位)、インド初のバイオテクノロジー企業を起業したキラン・マズムダル・ショウ氏(85位)などが並ぶ。
■セレブたちの新たな役割

主要8カ国(G8)外相会合の1つに出席した米女優のアンジェリーナ・ジョリーさん。乳がん予防のため乳房を切除したと今月告白した=ロイター
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主要8カ国(G8)外相会合の1つに出席した米女優のアンジェリーナ・ジョリーさん。乳がん予防のため乳房を切除したと今月告白した=ロイター



 単に有名人であるだけでなく本業以外でも、重要なテーマの広報大使のような活動やビジネスへの進出など十分に注目に値する活躍をしている。オプラ・ウィンフリー氏はハーポ・プロダクションと南アフリカでOprah Winfrey Leadership Academy for Girlsを設立した。国連の活動に協力するのはアンジェリーナ・ジョリー氏(37位)、シャキーラさん(52位)、ジゼル・ブンチェン氏(95位)。ビヨンセさん(17位)はファッションブランドの「House of Dereon」を取り仕切る。ソフィア・ベルガラ氏はタレントマネジメント会社「LatinWE」を共同経営している。





「アジアの未来」で演説するタイのインラック首相(24日、東京)=ロイター
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「アジアの未来」で演説するタイのインラック首相(24日、東京)=ロイター

■アジアで急増するビジネスウーマン

 アジア地域では中国やシンガポールからニュージーランド、タイに至るまで、全体的に活躍が目立つ。起業家の台頭は目覚ましく、張欣氏、孫亜芳氏、香港のソリーナ・チャウ氏らが名を連ねる。また、アジアでは政治でトップに就く女性が多い。新顔では韓国大統領の朴槿惠氏。このほか、ミャンマーの反体制活動家で国会議員のアウン・サン・スー・チー氏(29位)、豪首相のジュリア・ギラード氏(28位)、タイ首相のインラック・チナワット氏(31位)がランクインした。



■世界を癒やす、養う、導く

 企業や国のトップに就いている人以外で、トップ100に入った顔ぶれには、NPOやNGOを率いる人たちがいる。彼女たちは巨額の予算を取り仕切り、大きな影響力を持つ。ゲイツ氏やIMF専務理事のラガルド氏、世界保健機関(WHO)事務局長のマーガレット・チャン氏(33位)、世界食糧計画(WFP)事務局長のアーサリン・カズン氏、ハーバード大学のドリュー・ギルピン・ファウスト氏などだ。

By Caroline Howard, Forbes Staff

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2013年5月20日月曜日

シャープも個人も間違えた「あの時」の円安株高

アベノミクスで進んだ円安・株高。ドル円レートに関しては今後1ドル=110円もあり得るとの見方が増え、業績への底上げ効果も期待される。一方で気になるのが、総合的な為替の水準を示す実質実効レートが、シャープも個人も投資を間違えた「あの時」の水準に近づいていることだ。
 金融危機前の2007年の円安のピークは1ドル=124円。すでに円安が進んだ足元から見てもまだ2割以上も円安だ。しかし「為替の本当の水準は『実質レート』で考えるのが、国際金融の常識」(国際通貨研究所のチーフエコノミストを経て現在は龍谷大学教授の竹中正治氏)。

 実質レートというのは、名目為替レートからインフレ 率格差の影響(例えば物価が上がった国はその分通貨価値が下がる)を取り除き、それ以外の要因による買われすぎ・売られすぎを判断する指数。さらにドルに限らずユーロ など様々な通貨を総合的に集計(実効化)したのが実質実効レート(グラフA)だ。



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「実質実効為替レート は長期的には過去の中心的な水準に回帰する。これは投資の重要な判断材料になる」(JPモルガン・チェース銀行の佐々木融・債券為替調査部長)


 グラフAで気になるのは、足元の実質実効レートが、金融危機前の07年の円安水準にかなり近づいていることだ。
「実質実効レートを振り返ると、足元のトレンドだけで判断することの危うさが浮かび上がる」と話すのは著名株式ストラテジストの北野一氏。
 例えば1990年代半ばの異常な円高局面で海外生産比率を大きく引き上げたアイワはその後の円安局面で競争力が低下、ソニーに吸収された。その反対に、実質実効レートが大幅に円安に乖離(かいり)していた07年に堺新工場の建設を発表したのがシャープだった。この時期はパナソニックなどでも工場の国内回帰が見られた。

 「家電メーカーの失敗の本質の一つは、実質実効レートでみると為替が異常値だった時期に、それが続くと判断して投資を行ったことにもあるのではないか」(北野氏)

 同様の行動は個人の投資にも見られる。06~07年の時期に、個人はこぞって猛烈な外国債券への投資を行った。しかしやがて実質実効レートは過去の中心的な水準(当時から見て円高方向)に回帰し、大きな為替差損を負った。



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ドル円でも状況は似ている。グラフBは過去のドル円レート(1)と購買力平価から試算した目安レート(3)との関係。長期間、ドルは円よりインフレ率が平均2~3%高かった。このためドルの購買力(モノが買える力)が減って通貨の価値は下がった。逆に目安レートが示す円の価値は上がり続けた。
実際のドル円レートも数年規模の「円高・円安の波」で上下にうねりながらも、目安レートにおおまかに沿った動きになっていた。
 そして最近の大幅な円安方向への転換。ドル円レートの目安レートからの円安方向への乖離率は、07年当時とかなり似たものになっている。

 もちろん実質実効レートにしても購買力平価が示すドル円レートにしても、乖離がどこまで広がるか、修正時期はいつかをあてることはできず、あくまで長期で為替を考えるための、ざっくりした判断材料にしか過ぎない。

 黒田日銀による緩和が「異次元」であるからには、過去の乖離の水準を突破してもおかしくはない。いずれ見込まれる米国の利上げなどを背景に、中期的にまだ円安余地はあり得るとの見方は多い。JPモルガンの佐々木氏も「今年ドル円で105円、来年には110円もあるかも」とみる。市場では再来年には120円との予測もある。

 一方で佐々木氏は「購買力平価を軸にした投資判断は、過去、中長期ではかなり有効だった。この先の円安の余地は今までほど大きくなくなりつつある」と話す。

 冒頭の竹中教授はかつて金融機関で為替ディーラーとしても活躍したプロ。自らも投資家として、購買力平価を軸に長期投資を続け、金融危機前にはいち早く円安の終わりを見通して投資成績を向上させた。

 現在の状況を「まだ円安余地はあるかもしれない。しかし自分自身の投資としてはこの先さらに外貨建て資産を積極的に積み増す水準ではなくなったと判断している」という。つまりだんだん慎重さが求められる水準になっている。
実質実効レートや購買力平価を巡っては、今、さらに根本的な問いかけが起きている。過去の長期の円高トレンドの理由である日本のデフレ が終わり、インフレ率が高まるなら、グラフBでみた購買力平価の右肩下がりのトレンドも終わるかのかどうかという点だ。
 「長期の為替は金利や貿易収支ではなく、あくまでインフレ率格差で決まるというのがセオリー」(佐々木氏)だけに重要な問題だ。

 日米のインフレ率格差はここ二十数年、年に2~3%という持続的で強固なものだった。このことが長期平均で年に2~3%ずつ円の名目レートが切り上がっていった背景だ。

 ただ、アベノミクスで日本のインフレ率がもし本当に2%に上がるとしても、前提として世界的に経済が上向いていないと困難だ。「そのときに米国も同じ水準にとどまっているとは考えづらい」(ドイツ証券の田中泰輔チーフ為替ストラテジスト)。つまりインフレ率格差の逆転までは起きづらいとの見方が多い。

 竹中教授や佐々木氏も「足元の円安は、数十年繰り返されてきた円高・円安のうねりの一つである可能性が高い」とみる。ということは、数年内にもし110~120円などへ加速しても、いずれ再び円高方向への転換も個人の長期投資の上では頭のすみに置いておく必要があるということだ。

 それでも2~3%という過去の両国のインフレ率の乖離が、小さくなることは考えられる。その場合、「購買力平価の円高方向への右肩下がりのピッチも、小さくなる可能性は高い」(田中氏)。
田中氏は「すでに90年代後半以降は、金融危機後の一時期を除き、実際のドル円レートが購買力平価が示す水準より円安方向に動きがちになっている。日本の経済力の低下が背景にある」と、構造変化が始まっていると指摘する。
 もちろん財政悪化を懸念した円売りなどで日本のインフレ率が極端に上昇、持続的に米国を上回るような事態になれば、購買力平価が円安方向に転換する可能性もないわけではない。今後の長期的な焦点は、インフレ率格差が逆転するような「異次元」の変化が起きたり、実質レートのトレンドが過去の中心的な水準から円安方向に変化したりするかどうかだ。田中氏は「実質レートの変化は起き始めているかもしれない」とみる。

 ただしこれは、まだ現時点では断定的な判断は困難だ。すでに外貨資産を一定程度持っている人は、竹中教授のように「さらに積み増す水準ではなくなりつつある」との判断もある一方で、リスクに備えた分散という意味では、外貨建て資産が少ない人はある程度増やしておくことも必要だ。

 すでに円高修正がかなり進んだ現時点としては「単純に為替だけで稼ごうと思わず、海外企業の株式など、成長性の高い外貨建て資産に投資するという視点も非常に重要」(田中氏)だろう。
                                                                                                編集委員    田村正之         2013/5/20 7:00