2013年1月31日木曜日

日銀の重苦しい朝

守るのは組織 日銀の重苦しい朝(ルポ迫真) 
                                             日本経済新聞  2013/2/1 3:30

昨年12月17日。日銀は重苦しい朝を迎えた。前日の衆院選で安倍晋三(58)が率いる自民党が圧勝。最初に異変に気付いたのは中堅以下の職員だった。
 「8階で何かが起きている」。日銀本店でひそひそ話が広がった。8階は正副総裁や審議委員、理事らの部屋が並ぶ。2日後に金融政策決定会合が迫り、通常なら8階では経済データや政策の文言の説明に追われる職員が走り回る。その日は朝から「全くアポイントが入らない」。幹部に面会できず立ち尽くす職員が廊下にあふれた。



日銀は1月22日、物価目標導入を決めた(金融政策決定会合)
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日銀は1月22日、物価目標導入を決めた(金融政策決定会合)

 このころ総裁の白川方明(63)らは自民大勝で現実味を帯びた日銀法改正への対応を協議していた。「2%の物価上昇率目標」を迫る安倍の主張を丸のみすべきか。中央銀行として筋を通すべきか。議論は紛糾した。

 「総裁の職を賭して、戦うべきだ」。OBには主戦論者も目立った。しかし白川らは物価目標をのむ代わりに、日銀法改正を避ける方向にカジを切った。「中銀の独立性が失われ組織をがたがたにされてもいいのか」。関係者によると、有力OBの鶴の一声が決め手となった。海外中銀幹部からも独立性を脅かす法改正を危ぶむ意見が続々と寄せられた。白川は3日後、物価目標の検討を発表した。

 安倍は1月15日、内閣官房参与に就いた米エール大名誉教授の浜田宏一(77)ら金融緩和に積極的な有識者7人を官邸に招き昼食をとった。

 「日銀法改正が必要です」。物価目標の話はもう終わったとばかりに、提案が相次いだ。浜田は「僕は弱腰だが」と控えめに語るが、一部には総裁の解任権に関する言及もあった。今の日銀法に解任権はない。

 浜田とともに参与に就いた静岡県立大教授の本田悦朗(58)は政府・日銀の共同声明で「できるだけ早期」とした2%の物価上昇率の目標について「2年以内の結果で勝負だ」と力説する。本田は官邸の一室に陣取り日銀の出方に目を光らせる。

 日銀職員はどう思うか。40歳代の男性は「何年も前から『物価目標』でも何ら問題はないと思っていた」と語り、別の40歳代の男性は「円安・株高も含め人々は何かが変わるかもしれないと思い始めている。この勢いを利用すればデフレを本当に脱却できるかもしれない」と半信半疑で期待する。OBに比べ現役の敗北感は薄い。(敬称略)

2013年1月30日水曜日

重要メンテナンスやるつもり無し国・自治体は設計図を保管せず

インフラ詳細図 多くの自治体で保存せず
                                                                                                              1月31日 18時19分


インフラ詳細図 多くの自治体で保存せず
中央自動車道のトンネル事故をきっかけに、社会インフラの老朽化対策を強化する必要性が指摘されていますが、点検や補修にとって重要な橋やトンネルの詳細な図面が保存されていない自治体が多いことが、NHKの調査で分かりました。

去年12月に起きた中央自動車道笹子トンネルの天井板崩落事故では、40年ほど前の建設当時に作られた詳細な図面などの書類が保存されていなかったことが分かっています。
今月、NHKが全国67の都道府県と政令指定都市の道路部局を対象にアンケート調査を行った結果、▽87%に当たる58の自治体は「詳細図」と呼ばれる建設当時の図面が残っていない橋があると答え、▽88%に当たる59の自治体は、同様に「詳細図」がないトンネルがあると答えました。
「詳細図」がなくなった理由については、「庁舎や事務所の移転の際に紛失した」とか、「一定の保管期限が過ぎたので破棄した」という答えが多く、中には「なくなった理由が分からない」という自治体もありました。
「詳細図」は、コンクリートの中の鉄筋の配置など内部の構造が記録されているため、強度を確認したり、本格的な補修を行ったりする際に不可欠ですが、図が保存されていない自治体では、補修工事を行うために1000万円以上の費用をかけて改めて図面を作り直すケースもあるということです。
橋の維持管理に詳しい、東京都の元副参事の高木千太郎さんは「図が残っていないのは、これまで維持管理が軽視されてきたことの象徴で、このまま放置すれば適切な点検や補修ができず、事故にもつながりかねない。図の保存について早急に対策を取るべきだ」と指摘しています。

2013年1月29日火曜日

日本そして自民党へのクリントン国務長官の素晴らし~ぃ御土産

米国務長官、対中で珠玉の「置き土産」  編集委員 秋田浩之
                        日本経済新聞   2013/1/29 7:00

 こう言っては失礼かもしれないが、ここまでやるとは予想外だった。
「ヒラリー」こと、クリントン米国務長官である。
まもなく退任し、米外交の表舞台から身をひく。


関連記事
・1月19日日経夕刊3面「日米、対中連携を強化、米長官、尖閣防衛で踏み込む」
・1月20日日経朝刊2面「米、尖閣巡り中国に強い警告」
・1月20日朝日朝刊3面「日本、同盟強化へ歓迎」
・1月21日日経朝刊2面「中国、『強烈な不満表明』」

 そして退任の直前、尖閣諸島をめぐり、中国から激しく押し込まれる日本に、
クリントン長官はとっておきの置き土産を残した。

 「(尖閣諸島は)日本の施政下にあると認識している。
その施政権を一方的に害する、いかなる行為にも反対する」

 1月18日、訪米した岸田文雄外相との共同記者会見で、こう言い切ったのだ。
何の変哲もない言いぶりに思えるが、実はそうではない。
この発言に踏み切るまでには、オバマ政権内でかなりの議論があったのである。



■「ルビコン川」渡った米国

 なぜならこれによって、米国はこれまで以上に旗幟(きし)を鮮明にして、
尖閣問題で日本側を支持することになるからだ。
ある意味で、「ルビコン川」を渡ったといってもいい。なぜ、そうなるのか。

 米政府は尖閣諸島が日中のどちらに属するかについて、中立を崩していない。
そのうえで、米国は日米安全保障条約に基づき、尖閣の防衛義務を負っていると説明してきた。
その理屈はこうだ。

(1)尖閣は日本が実効支配し、自分の施政下に置いている。

(2)日米安保条約は「日本の施政下にある領域」に及ぶと規定されている。

(3)だから、尖閣は条約の適用条件を満たしている。

 ところが、これだと将来的に大きな問題が生じかねない。
中国は尖閣の領空や領海への揺さぶりをくり返している。
この結果、もし日本の実効支配(施政権)が崩れたら、尖閣は日米安保条約の対象から外れてしまう。
そんなふうにも解釈できるからだ。

 実際、安全保障政策にかかわった元米政府高官は、中国の狙いがそこにあると読む。

「日本による実効支配を崩せば、もはや尖閣には日米安保条約は適用されなくなる。
中国はこう思っている。だから尖閣への揺さぶりを強めているのだ」
 この分析が正しいとすれば、クリントン長官の1月18日発言の重みは大きい。
そうした中国の意図を完全に封じ込めることになるからだ。
彼女が言ったことを分かりやすく意訳すれば、次のようになる。

 尖閣の実効支配を中国が力ずくで奪おうとしても、米国は認めない。
仮にそういう展開になったとしても、米国は引き続き、日米安保条約を尖閣に適用する――。


 
会談後、共同記者会見する岸田外相とクリントン米国務長官(1月18日、ワシントンの米国務省)=共同
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会談後、共同記者会見する岸田外相とクリントン米国務長官(1月18日、ワシントンの米国務省)=共同

 
■事実上認めた日本への帰属

これは事実上、日本による尖閣の永続的な支配を認めているようなものだ。
尖閣が日中のどちらの領土か、米国はこれからも公式には中立を貫くだろう。
だが、クリントン発言によって、米国の立場はかなり日本寄りになったのである。

 「彼女は外交の実務を知らない。日米関係が軽んじられないか」。
クリントン長官が4年前に就任したとき、日本政府内からはこんな不安が聞かれた。

 クリントン長官の夫であるクリントン元大統領は在任中、
米中を「戦略的パートナー」と呼び、日ごとに中国に軸足を傾斜していった。
そんな経験から、彼女も同じ路線を走るのではないか。日本側にはそんな懸念もくすぶっていた。

 だが、良い意味で予想は大きく外れた。
彼女の在任中、オバマ政権は中国の台頭をにらみ、日米同盟を重視する姿勢を崩さなかった。

 「クリントン長官は当初、強硬な対中観を持っていたわけではなかった。
だが、2010年以降、中国の南シナ海での強硬ぶりを目の当たりにして、一気に見方が厳しくなった」

 彼女を知る米有力紙の外交記者はこう語る。
だとすれば、尖閣をめぐって強硬な態度に出ている中国は、墓穴を掘ったことになる。

 同国の習近平総書記は25日、訪中した公明党の山口那津男代表に会い、
日中首脳会談について「真剣に検討したい」と語った。このままでは中国の利益にならない。
習氏もそう感じ始めているのだろう。
 

2013年1月28日月曜日

第二次安倍内閣の初国会所信表明演説の要旨

安倍首相の所信表明演説の要旨
                           日本経済新聞  2013/1/28 13:49


 アルジェリア人質事件発生以来、総力を挙げて情報収集と人命救出に取り組んできたが、世界の最前線で活躍する何の罪もない日本人が犠牲になったことは痛恨の極みだ。

 無辜(むこ)の市民を巻き込んだ卑劣なテロ行為は、決して許されるものではなく、断固として非難する。事件の検証を行い、国民の生命・財産を守り抜く。国際社会と引き続き連携し、テロと闘い続ける。

■はじめに

 私はかつて病のために職を辞し、大きな政治的挫折を経験した人間だ。過去の反省を教訓として心に刻み、丁寧な対話を心がけながら真摯に国政運営に当たっていく。

 国家国民のために再び我が身をささげようとする私の決意の源は、深き憂国の念にある。

 デフレと円高から抜け出せない日本経済の危機。東日本大震災からの復興の危機。我が国固有の領土・領海・領空や主権に対する挑発が続く、外交・安全保障の危機。学力の低下が危惧される教育の危機。このまま、手をこまねいているわけにはいかない。

 額に汗して働けば必ず報われ、未来に夢と希望を抱くことができる、まっとうな社会を築いていこう。そのためには、日本の未来を脅かしている数々の危機を突破していかなければならない。

 内閣発足に当たって、私は全ての閣僚に「経済再生」「震災復興」「危機管理」に全力を挙げるよう一斉に指示した。危機の突破は、全閣僚が一丸となって取り組むべき仕事だ。危機を突破しようとする国家の確固たる意思を示すため、与野党の英知を結集させ、国力を最大限に発揮させよう。

■経済再生

 我が国にとって最大かつ喫緊の課題は、経済の再生だ。

 私が経済の再生に最もこだわるのは、長引くデフレや円高が、「頑張る人は報われる」という社会の基盤を根底から揺るがしているからだ。

 これまでの延長線上にある対応では、デフレや円高から抜け出すことはできない。だからこそ、これまでとは次元の違う大胆な政策パッケージを提示する。断固たる決意をもって、「強い経済」を取り戻していこう。

 既に、経済再生の司令塔として「日本経済再生本部」を設置し「経済財政諮問会議」も再起動させた。この布陣をフル回転させ、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略という「3本の矢」で経済再生を推し進める。

金融政策については、従来の政策枠組みを大胆に見直す共同声明を、日銀との間で取りまとめた。日銀において2%の物価安定目標をできるだけ早期に実現することを含め、政府と日銀がそれぞれの責任で共同声明を実行していくことが重要であり、一層の緊密な連携を図っていく。
 先にまとめた緊急経済対策で景気を下支えし、成長力を強化する。補正予算はその裏付けとなる。「復興・防災対策」「成長による富の創出」「暮らしの安心・地域活性化」という3つを重点分野として、大胆な予算措置を講じる。速やかに成立させ、実行に移せるよう各党各会派の理解と協力をお願いする。

 他方、財政出動をいつまでも続けるわけにはいかない。民間の投資と消費が持続的に拡大する成長戦略を策定し、実行する。

 イノベーションと制度改革は、社会的課題の解決に結びつくことによって暮らしに新しい価値をもたらし、経済再生の原動力となる。最も大切なのは、未知の領域に果敢に挑戦していく精神だ。今こそ世界一を目指していこう。

 世界中から投資や人材をひきつけ、全ての人々が生きがいを感じ、何度でもチャンスを与えられる社会。男女が共に仕事と子育てを容易に両立できる社会。中小企業・小規模事業者が躍動し、農山漁村の豊かな資源が成長の糧となる、地域の魅力があふれる社会。そうした「あるべき社会像」を、確かな成長戦略に結びつけることで、必ずや「強い経済」を取り戻す。同時に、中長期の財政健全化に向けてプライマリーバランス(基礎的財政収支)の黒字化を目指す。

■震災復興

 復興という言葉を唱えるだけでは何も変わらない。まずは政府の体制を大転換する。これまでの行政の縦割りを排し、復興庁がワンストップで要望を吸い上げ、現場主義を貫く。今般の補正予算でも、思い切った予算措置を講じ、被災地の復興と福島の再生を必ずや加速する。

■外交・安全保障

 外交・安全保障についても、抜本的な立て直しが急務だ。

 何よりもその基軸となる日米同盟を一層強化する。2月第3週に予定されている日米首脳会談で、緊密な日米同盟の復活を内外に示す。同時に米軍普天間基地の移設をはじめとする沖縄の負担の軽減に全力で取り組む。

 大きく成長していくアジア太平洋地域で、我が国は、経済のみならず、安全保障や文化・人的交流など様々な分野で、先導役として貢献を続けていく。

 今年は日・東南アジア諸国連合(ASEAN)友好協力40周年に当たる。2015年の共同体構築に向けて、成長センターとして発展を続けるASEAN諸国との関係を強化していくことは、地域の平和と繁栄にとって不可欠であり、日本の国益でもある。

 国境離島の適切な振興・管理、警戒警備の強化に万全を尽くし、国民の生命・財産と領土・領海・領空は、断固として守り抜いていくことを宣言する。

 アルジェリア人質事件は、国家としての危機管理の重要性について改めて警鐘を鳴らすものだった。テロやサイバー攻撃、大規模災害、重大事故などの危機管理対応について、24時間、365日体制で、さらなる緊張感を持って対処する。

 北朝鮮に「対話と圧力」の方針を貫き、全ての拉致被害者の安全確保及び即時帰国、拉致に関する真相究明、拉致実行犯の引き渡しの3点に向けて全力を尽くす。

■おわりに

 我が国が直面する最大の危機は、日本人が自信を失ってしまったことだ。日本経済の状況は深刻で、今日明日で解決できるような簡単な問題ではない。しかし、「自らの力で成長していこう」という気概を失ってしまっては、個人も、国家も明るい将来を切りひらくことはできない。

 何よりも、自らへの誇りと自信を取り戻そう。私たちも、日本も、自らの中に眠っている新しい力を見いだして、成長していくことができるはずだ。危機を突破し、未来を切りひらく覚悟を共に分かち合おう。「強い日本」を創るのは、私たち自身だ。

 

2013年1月27日日曜日

バカボケ民主党の思考は維新の選挙準備が整わないうちに解散

もう内幕をバクロした藤村前官房長官のどうしようもない軽さ

       
                    2013年1月29日(火)7時0分配信 日刊ゲンダイ
 
 毎日新聞が24~25日の2回に分けて、藤村修前官房長官(63)の独占インタビューを掲載したが、
その内容には驚いてしまう。何にって、民主党政権がナ~ンにも考えていなかったことだ。


 例えば、野田前首相が自爆解散を決めた昨年末の衆院選。
負けると分かって解散したのは“謎”とされてきたが、
 藤村氏は、〈維新の選挙準備が整わないうちに解散するということだった〉とサラリ。
判断した時期については〈昨年11月2日だ。
首相公邸でエネルギー問題の閣僚懇談会をやって、
岡田克也副総理と私が残って野田首相と話した〉と暴露した。
当初、想定したのは12月9日投開票だったが、
党首討論で解散を打ち出す案に合わせて修正し、16日投開票になったという。
要するに、確固たる戦略は何もなく、出たとこ勝負だったわけだ。
これじゃあ、落選議員は浮かばれないが、
それ以上に、つい2カ月前まで政権中枢にいた前官房長官が少しも悪びれる様子もなく
舞台裏をバラす国は世界でも例がないだろう。
思いつきで解散を決めた野田前首相もバカだが、女房役も大バカだった。
外交評論家の天木直人氏はこう言う。



「本来は墓場まで持っていく話です。
下野し、議員を落選した身とはいえ、政治家としての意識が希薄過ぎる。
民主党は一時期、(生活代表の)小沢氏だけが不満分子のように報じられていたが、
インタビューを読む限り、政権、党内ともにバラバラで体を成していなかったことがよく分かりました」



 ちなみにインタビューの中では、
自民党の麻生副総理が度々、藤村氏に解散を迫ったことが明かされている。
なぜ、麻生が……と思ったら、「2人は日伯(ブラジル)議連で意気投合し、
親しくなった間柄」(関係者)なのだそうだ。



「谷垣禎一・前自民党総裁のシリを叩き、主戦論をたきつけていたのが麻生副総理です。
政権内で今、デカイ顔をしているのも『解散はオレが仕掛けた』と思っているからでしょう」
                                            (永田町事情通)



 あの時期に、麻生と藤村が解散をめぐってやりとりしていたなんて、マンガだ。
ますます、政治に絶望的になる話である。

(日刊ゲンダイ2013年1月26日掲載)

2013年1月26日土曜日

大気汚染の中国

大気汚染悩める中国、深刻度示す「鼻毛地図」
                                                      2013/1/31 7:00      日本経済新聞

 中国で現在、「鼻毛地図」の名前で呼ばれるインターネットのサイトが話題となっている。地図上のアジア太平洋地域の都市をクリックすると、6段階ある大気汚染の度合いを鼻毛の長さで表示するという仕組みだ。




都市の大気汚染の度合いを鼻毛の長さ(画面右側)で示すサイト「鼻毛地図」
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都市の大気汚染の度合いを鼻毛の長さ(画面右側)で示すサイト「鼻毛地図」

 中国では10日から有害物質を含む濃霧が各地で断続的に発生、人々は深刻な大気汚染に悩まされている。健康被害を与える恐れがある「PM2.5」と呼ばれる微粒子状の物質の大気中濃度が、北京市では12日に一時、1立方メートル当たり993マイクログラムに達した。近くの景色もかすむほど視界はきかず、マスクをして外出する人が相次いだ。ちなみに日本の基準では同35マイクログラム以下と定められている。

 中国環境保護省によれば、ここ最近発生した濃霧は、中国の31ある省・直轄市・自治区のうち17の地域に及んだ。国土の面積の実に約4分の1を覆い、人口の半分近い約6億人が影響を受けている。収まる気配のない汚染濃霧に、鼻毛地図を見て「自分の街は今日も鼻毛がボーボーだよ」と苦笑いするしかない状態だ。

 鼻毛地図サイトは、アジア・太平洋地域の都市の大気汚染防止を目的とする情報ネットワーク「クリーン・エア・イニシアチブ・フォー・アジアン・シティーズ」(クリーン・エア・アジア)が運営している。鼻毛の長さ以外に、都市の大気汚染の度合いに応じて6つに色分けして表示している。例えば29日の状況を見ると、中国の大半の都市は汚染の度合いのひどいオレンジ色で覆われ、一部では最も汚染がひどいことを示す赤もある。

 中国の大気汚染は、以前から問題視されていた。経済の急速な発展に伴い、工場や自動車からの有害物質の排出量は年々増加傾向にあるからだ。こうした中、今冬は例年になく寒さが厳しく、暖房用石炭の使用に伴う排気が増加。そこに風が弱く、有害物質を含んだ空気が拡散しないという気象条件が加わり、汚染がさらに悪化した。

 事態を重く見た各地の地方政府は、有害物質の排出を一時的に制限する緊急対応策を実施した。北京市は11日から建材や化学などの工場を対象に操業制限を実施。58カ所の工場が生産を完全に停止したほか、41カ所の工場に有害物質の排出量の30%削減を義務付けた。また公用車の30%を使用禁止にした。

 北京市に隣接する河北省でも石家荘、保定など各市が13~14日に相次いで対策を実施。石家荘は工場の操業制限などに加え、市内700カ所の建設現場の工事を停止させ、動きは中国全土に広がった。

しかし、その場しのぎの対応策をあざ笑うかのように汚染濃霧はその後も発生し続けた。北京市では28日にも6段階の大気汚染指数で最悪のレベルを記録した。渤海と黄海に面しており、比較的空気がきれいだとされる大連市(遼寧省)も28日はPM2.5が同200マイクログラムを超え、地元の日本人学校が児童の健康に配慮して屋外での活動を自粛した。


濃霧で太陽もかすんでしか見えない(中国・遼寧省)
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濃霧で太陽もかすんでしか見えない(中国・遼寧省)

 対策の効果が上がらないことに業を煮やしたのか、北京市は28日、「公用車使用30%削減」の徹底を改めて指示を出した。対策をとっているかどうか管理・監督を強化し、違反した場合は責任を追及するとしている。

 中国は以前から環境保護の重要性をことあるごとに訴えてきた。昨年11月に開かれた第18回共産党大会での活動報告でも「美麗中国(美しい中国)」との目標を掲げ、環境保護の重視の姿勢を強調した。

 しかし掛け声倒れの感は否めない。大気汚染の関連法規の整備が進んでいないことが象徴的だ。中国紙の経済参考報(電子版)によれば、大気汚染物質の削減を目的とする「大気汚染防治法」の修正案の草案を巡り、環境保護省が2010年1月に国務院法制弁公室に提出したにもかかわらず、3年たった今でも審議中で法制化されていない。草案では硫黄分の少ない高品質な石炭の使用促進や汚染物質を削減する脱硫装置の導入など、汚染防止への取り組みが触れられているが、現状では絵に描いた餅となっている。

 根本的な解決に向けての道のりはなお遠い。24~25日に開催された全国環境保護工作会議で、周生賢・環境保護相は大気汚染対策のロードマップを示した。大気中の汚染物質の量が環境基準を上回る割合が15%より低い都市については15年までに基準に収まるように、15~30%上回る都市については20年までに基準に収まるように努力する。汚染が深刻な基準を30%以上上回る都市については中長期計画を作成、15年以上先となる30年までに、すべての都市で大気汚染指数で下から2番目のレベルに収まるようにするとしている。

 鼻毛地図に表示されている長い鼻毛は、問題が根本的に解決されるまでさらに長い時間がかかることも象徴しているといえそうだ。

2013年1月24日木曜日

首相執念 物価目標巡り暗闘1カ月

首相執念 折れた日銀
物価目標巡り暗闘1カ月 期限、あいまい決着
                                                    2013/1/23 3:30

 政府と日銀は22日、2%の物価上昇率目標を盛り込んだ共同声明を公表し、新たな金融政策へ一歩踏み込んだ。慎重姿勢を崩さなかった日銀を動かしたのは、衆院選前からデフレ脱却に向けた「レジームチェンジ(体制転換)」を求め続けた安倍晋三首相の執念だった。世界的に関心を集める政策実験が動き出す形だが、目標達成のハードルは高い。
記者会見する白川日銀総裁=22日
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記者会見する白川日銀総裁=22日
記者の質問に答える安倍首相=22日
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記者の質問に答える安倍首相=22日
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 「画期的な文書だ」。22日午後、共同声明の報告に首相官邸を訪れた日銀の白川方明総裁に、安倍首相はねぎらいの言葉をかけた。だが政府・日銀の連携強化に向けた文書が「共同声明」として仕上がるまでの約1カ月、首相と日銀は物価目標を巡って暗闘を続けた。

「劇薬」の解任権


 「物価目標が達成できなければ、日銀総裁を解任できるようにすべきだ」。15日昼、安倍首相が麻生太郎財務相、甘利明経済財政・再生相らを呼んで開いた勉強会。首相のブレーンの一人が配った政府・日銀の共同声明の試案には、日銀にとって「劇薬」の総裁解任権が盛り込まれていた。

 共同声明で論点となったのは、物価目標2%の達成期限と、達成できなかった場合の責任の所在。「日銀と政府の共同責任」というのが、財務省・内閣府と日銀の事務方が当初想定した落としどころだった。

 「デフレ脱却は金融緩和だけでは無理」「潜在成長力引き上げに向けた政府の努力も不可欠」というのが白川総裁の持論。物価安定の「めど」として掲げてきた1%の物価目標を2%に引き上げる案はのんだが、日銀だけが責任を負う形は避けようと粘った。

 9日の経済財政諮問会議。「日銀は責任をもってやってください」。首相は席上の白川総裁に迫った。同総裁が政府に成長力強化を求める持論をぶった直後の不規則発言。空気は凍り、2%の物価上昇率が「日銀の目標」として明確に位置付けられる方向性が固まった。

 「長期、中長期はあり得ない」。目標達成の期限でも首相は持論を押し通した。着地点は「できるだけ早期に」。前倒しでの実現を求める首相側と、期限を区切られて過度な緩和を迫られる事態を懸念する日銀が折り合ったのは「スピード感を示す」(政府関係者)表現だった。目標達成の期限や、達成できなかった場合の責任論は曖昧なまま決着した。

委員2人「反対」


 衆院選で圧勝した首相の勢いに折れた日銀。しこりは残る。「いまの物価がマイナス圏なのに、いきなり2%の物価目標を掲げても中央銀行の信認を失うだけだ」。行内の異論はこの一点に集約される。

 「まずは物価上昇率1%を着実に目指すべきだ」と訴えてきた木内登英、佐藤健裕両審議委員は、22日の政策決定会合で2%目標の導入にそろって反対票を投じた。今後、2%の物価目標を目指した金融政策運営に、民間エコノミスト出身の両審議委員は異論を唱え続ける可能性が高い。

 「日銀法改正と今年4月の総裁人事がちらついた」。日銀幹部は苦渋の表情を浮かべる。日銀が守り通したのは日銀法が掲げる「金融政策の独立性」だ。日銀法改正の可能性について22日の記者会見で問われた菅義偉官房長官は「共同声明を見る限り、そういう必要はなくなってきている」と理解を示した。

 安倍首相や首相のブレーンの浜田宏一・米エール大学名誉教授(内閣官房参与)が主張していた雇用の安定を日銀の政策目標に含める案もひとまず見送られた。

 だが白川総裁が「相当思い切った努力が必要」と認める通り、物価上昇率2%という目標達成のハードルは高い。実現の見通しがつかなければ、日銀への風圧が強まる構図は安倍政権が続く限り、変わりそうにない。