2013年11月3日日曜日

物価上昇見通し、「2年で2%」維持 日銀リポート

2013/10/31 20:53
 
 日銀は31日開いた金融政策決定会合で、新しい経済・物価見通しをまとめ、4月に打ち出した「2年程度で2%」に達するとの物価上昇シナリオを維持した。黒田東彦総裁は会合後の記者会見でシナリオ達成へ「道筋を順調にたどっている」と述べ、政策運営への自信を強調。ただ2人の政策委員が達成は困難だと反対意見を表明するなど、日銀内の足並みの乱れも残す結果となった。
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 決定会合では、半年に1度公表する「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」をまとめた。2015年度の消費者物価上昇率(生鮮食品と消費税率引き上げの影響を除く)見通しは4月リポートで示した1.9%を今回も維持。民間エコノミストの予測平均(0.9%)との差はなお大きく開いたままだ。
 黒田総裁は記者会見で4月に導入した大規模な金融緩和の効果について「実体経済や金融市場、人々のマインド(心理)や期待など好転の動きが幅広く見られている」と強調。「15年度の真ん中か前半」には物価上昇率が目標の2%に達するとの見方を示した。
 安定的な物価上昇へカギを握るとして、日銀が重視する賃金も「企業収益の拡大、労働市場の引き締まり、政労使協議などにより上昇が見込まれる」と期待を表明。日銀予想よりも遅れている海外経済も「次第に持ち直していく」と強気な見立てを披露した。
 来年4月の消費税率の引き上げによる景気腰折れリスクは、政府の経済対策によって「緩和されている」と分析。仮に2%の物価目標の達成が困難な事態が生じれば「必要な調整は行っていく」との従来方針を改めて説明し、追加緩和も除外しない考えを示した。
 ただ会合では、木内登英、佐藤健裕、白井さゆりの3政策委員が展望リポートに反対。このうち木内、佐藤の両委員は4月に引き続き「(15年度までの)見通し期間の後半にかけて、2%に達する可能性が高い」との表現に反対。改めて「2年で2%」は達成困難だと異論をはさんだ。
 白井委員はより下振れリスクを意識した記述に変更するよう提案。全9人の政策委員の15年度物価予測の内訳をみると0.7~2.2%にばらついた。なお少なくとも2人が15年度も1%に届かないとの見通しだ。
 展望リポートでは、9人の政策委員の意見を集約し、15年度までの実質経済成長率と消費者物価上昇率の見通しを公表。7月の「中間評価」で示した直近の景気・物価見通しから「おおむね不変」だと結論づけた。
 物価見通しは13年度のみを小幅修正し、7月のプラス0.6%から同0.7%へ引き上げた。成長率は外需回復の遅れから13年度は7月の2.8%から2.7%へやや引き下げ。一方、14年度は政府の経済対策の効果を織り込み、7月の1.3%から1.5%へ小幅に引き上げた。