2013年7月26日金曜日

そろり始まる円安劇場第2幕

2013/7/26 6:00

アベノミクスに背を押された急激な円安・ドル高が、1ドル=100円でぱたりと足を止めた。金融緩和、財政出動、成長戦略の「3本の矢」を打ち尽くし、円安を噴かすエンジンが見当たらない。100円の節目達成で円安は終わるのか。市場の戸惑いをよそに、円安劇場第2幕が静かに始まろうとしている。


画像の拡大
80円から100円へと瞬く間に駆け抜けた円安を体感した人は、少し拍子抜けするかもしれない。アベノミクスや日銀の異次元緩和、米量的緩和の出口戦略といった刺激的な材料なき円安は、極めて緩やかなものになる可能性が高いからだ。第2幕を先導するのは、需給や金利差といった古典的な相場材料だ。


 「迷ったら、原点に返れ」。寄せては返す為替相場の荒波を乗り越えてきたベテランの為替ディーラーたちが胸に刻んだ教訓でもある。

■赤字が減らない仕掛け

 7月24日。2013年上期の貿易統計が発表になった。4兆8438億円の過去最大の赤字。景気回復で輸出が増えても、原子力発電所の稼働停止で膨らむ燃料輸入を補えない。赤字が減らない理由は決済通貨にある。

 輸入に占める外貨の割合は約8割。燃料はドル建てで取引され、輸入企業は円を売ってドルを調達しておかなければならない。一方、輸出に占める外貨は6割強にとどまる。長引く円高時代に海外分業を迫られた輸出企業は関連会社や取引会社と円建ての取引を増やした。結果として、本来は円安で起こるはずの価格調整機能が働かず、赤字がいっこうに縮まらない。
野村証券の池田雄之輔チーフ為替ストラテジストはこう指摘する。「エジプトの政情不安が再び原油価格を押し上げている。貿易赤字が円安を支える土台になる構図は当面変わりそうにない」。リーマン・ショックを乗り越えた世界経済の復調気配も、一段の原油高を期待する投資家への思惑を誘う。需給が放つシグナルは完全に円安方向を指している。
 金利差はどうか。答えは単純明快だ。  
画像の拡大

■発言より金利差に関心
 5月22日に米量的緩和第3弾(QE3)の出口論に踏み込み、急激な円高・ドル安の巻き戻しを招いた米連邦準備理事会(FRB)のバーナンキ議長。米緩和縮小の開始時期は年末なのか、それとも6月に前倒しされるのか――。それ以降、議長の発言は市場の熱心な注目を浴び、ヘッジファンドが言葉尻をとらえて大規模な円買いや円売りを繰り返す展開が続いてきた。
 だが、こうした混乱も次第に収束しつつある。市場は「結局のところ、緩和縮小の時期は雇用統計の内容次第で変わる」ということに気づき、FRBが緩和縮小の基準として示す毎月の失業率の動向を冷静に見極める姿勢に変わり始めた。
 ヘッジファンドの思惑による売買が剥がれれば、最後に残るのは「いずれFRBは緩和縮小に動く」という事実だけ。これに対し、日銀は4月の異次元緩和導入時に「マネタリーベースを今後2年間で2倍に増やす」と宣言している。目指しているのは、FRBの正反対の政策運営、つまり緩和拡大だ。

日米の金利差は既に拡大に向かっている。需給要因に加え、金利差要因もまた、FRBの緩和縮小が本格化する来年にかけて円安方向へとなびく。


画像の拡大
為替相場は様々な要因や思惑が複雑に絡み合い、方向感を見極めるのが難しい。だが裏を返せば、大きな相場材料が見当たらない時期は、需給や金利差といった実体経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)に左右されやすくなる。為替ディーラーたちが取引に迷った時に「原点に返る」とは、そういうことだ。


 世界経済を見渡せば、日米が復調に向かい、ユーロ圏も最悪期をようやく脱しつつある。波乱材料がなく、需給や金利差を映す円安は、統計や金利の数値が急変動しない分、緩やかな動きになりやすい。

 アベノミクスをテーマにした激動の円安劇場第1幕では、円相場が半年間で20円も急落するという乱高下が繰り広げられた。

 これから新たに始まる第2幕は、がらり場面が一転。相場全体に安堵感が漂う静かな展開になりそうだ。強いて言えば、1年から1年半をかけて5~10円の緩やかな円安が進むといったイメージか。最近のはやりに名を借りれば、「ゆるキャラ」ならぬ「ゆる円安」が始まる可能性が高い。

 ただ市場から波乱要因が完全に消えうせたわけではない。なだらかな舞台に大きな落とし穴がしつらえてあるとすれば、景気減速傾向が次第に鮮明になってきた中国を含む新興国経済の行方だ。

1990年代後半の世界市場の大混乱を覚えているだろうか。きっかけは、米国が過剰に膨らんだ経常赤字を補うため、世界の投資マネーをウォール街に呼び込もうと打ち出した「強いドル」政策だった。
 当時、自国通貨をドルに連動(ドルペッグ)させていたアジアの新興国は、ドル高に伴う自国通貨高に輸出産業などが即応できなかった。ヘッジファンドによるアジア通貨への激しい売り浴びせもあり、タイやマレーシアなどアジア各国は相次いでドルペッグから離脱。変動相場制への移行を余儀なくされ、通貨の急落を招いた。その余波はアジアへの輸出依存を強めつつあった日本にも悪影響を及ぼし、その後の未曽有の金融危機の一因にもなったという指摘もある。

■G7主導で市場監視を

 通貨危機の苦い教訓もあり、アジアの新興国は現在、ドルペッグをほとんど採用していない。このためFRBの緩和縮小によるドル高がアジア市場にどの程度の悪影響を及ぼすかは未知数だ。

 ただ5月22日の「バーナンキ・ショック」では、実際に緩和縮小を始めたわけでもないのに、新興国市場に流入していた緩和マネーが逆流し、インドルピーが対ドルで過去最安値を更新するといった混乱を引き起こした。しかも世界市場の一体化が進む現在では、新興国市場の混乱はアジアに限らず、中南米や東南欧の諸国にも瞬く間に連鎖するようになっている。

 2008年秋のリーマン・ショック以降、世界経済のかじ取り役は先進国によるG7に代わり、先進国に新興国を加えたG20が担うようになった。だが世界経済のけん引役はリーマン・ショック後の新興国主導から、再び先進国主導に変わりつつある。

 まもなくリーマン・ショックから5年。「先進国vs新興国」の利害対立で有効な対策を打ち出しきれないG20に代わり、復調したG7が世界市場の安定に指導力を発揮する。それこそが日本の望む緩やかな円安を担保する近道のように思える。




2013年7月8日月曜日

風俗と慰安婦と米兵問題 橋下氏発言の報道

風俗と慰安婦とアメリカ兵の問題 橋下発言と、その報道に思うこと

       (ダイヤモンドオンライン 2013年05月31日掲載) 2013年5月31日(金)配信

橋下徹大阪市長兼維新の会共同代表が、在日米軍司令官に風俗の活用を奨めた発言を撤回し、謝罪した。徹さんの発言が一回転するから撤回なのかはさておき、撤回に至るまでの経緯は多くのメディアが報じているから措いておくにしても、だ。

 橋下さんが言いたかったのは、アメリカ兵による犯罪……、とりわけ多発する性犯罪を何とかできんのかお前らは、ということだったはずなのだが、この問題が報じられて以降、論点はどんどん違う方向へ逸れていった。

 戦場で生命を賭す兵士たちの極限の緊張状態を和らげるために、との主旨で風俗と慰安婦の話を持ち出したのだが、弁護士資格を持つ論者が用いたレトリックとしては稚拙だった感は否めないにしても、だ。

 橋下さんの真意を問い、なおかつ、アメリカ兵が犯す犯罪の実態はどうなのかを取り上げるメディアはなかった。橋下さんを擁護しろとまでは私も言わないが、橋下発言の背景に言及し、橋下さんが何故あのような要請をしたのかに触れるメディアがあってもいいはずだった。

 横須賀基地のある神奈川県だけで、この一年に性犯罪や家宅侵入、暴行、傷害罪で逮捕されたアメリカ兵は二〇人をくだらないんだぞ。不祥事の総合商社と言われる神奈川県警だって道を譲るくらい問題を起こしているんだぞ、アメリカ兵は。

 つい一昨日も、横須賀で女子中学生のスカートの中を盗撮しようとしていたアメリカ兵が捕まったんだぞ。逮捕したのは神奈川県警だけど。
相模原署内の交番では、相談に来た女性にわいせつ行為を働いた巡査もいたけど。

 橋下批判が噴出する中で、先週は長崎県佐世保市でアメリカ兵による強姦事件が発生した。こういう大事な問題を放っておいて、メディアの論点は従軍慰安婦問題一色だった。いまもなお、その傾向は変わらない。

 発端は橋本市長の発言には違いないが、風俗の話が従軍慰安婦に飛んで、歴史観の話になり、村山談話と河野談話が掘り起こされ、強制連行があったか否かで識者が激論を飛ばす。問題視するのはそこですか? と首をひねっていたのは私だけなのかしら。
橋下さんという方は、よっぽどメディアに嫌われているのだろう。
 あるいは、橋下さんは、会見の席でくだらない質問をする記者に、もっと勉強してこい的なことを平気で言うようなところがあるから、その腹いせとばかりに叱られた記者さんたちが徒党を組んで橋下叩きに躍起になっているのかも。
 でなければ、外圧に弱く、アメリカさんにゃ逆らっちゃいけないと刷り込まれているかのいずれかだ。アメリカさんに従軍慰安婦を“性奴隷”と翻訳されて、それは違うと反論した“社員ジャーナリスト”なんかひとりもいない。
 ちょっと外側から今回の過熱した報道を見ると、ライブドアの粉飾決算が明るみに出たころの堀江叩きの構図ととてもよく似ている。出る杭は打たねば、というスピリッツが日本のジャーナリズムにはあるかのようだ。という私もマスコミの一員なんですけど。
 にしても、だ。
 今回の騒動での収穫は、日本維新の会という政党がやっぱりどーしようもない自己保身の集団だったとわかったことかもしれない。その情けなさに関しては、たった三年で政権を奪取された民主党のだらしなさにも匹敵する。ひょっとすると、この二つの政党は五年後にはなくなってるんじゃないか?
 と思ってしまったほどだ。
 橋下さんを擁護した維新の会のメンバーはというと、石原慎太郎共同代表と松井一郎幹事長兼大阪府知事、そして西村慎吾議員くらいだった。他はみ~んな知らんぷり。いたんですか、親分のピンチに助け船を出そうとした会員は。特に知名度の薄い方で。
 「橋下氏らしい発言だ。現実に慰安婦があったということは、必要とされていたということだ。ものごとを本気で解決するには、上辺だけの議論ではダメだ。橋下氏の発言は、問題意識を本音でぶつける中での発言だった」(松井一郎談)
 と言ったそのあとに、合法的な風俗店はいっぱいあるから、軍関係者にも楽しんでもらえばいい――、と発言しているのだが、松井さんが火だるまになることはなかった。
こういう問題が起きると、決まって総攻撃の指揮を執るかのごとく登場する福島瑞穂さんも、風俗を楽しんで発言には触れなかった。女性蔑視だ、女性をモノ扱いしていると声高に叫ぶフェミニズム団体の方々も、松井さんの風俗を楽しんで発言はスルーだった。
 ということは、風俗を活用して、はNGになるが、風俗を楽しんで、はOKということだ。ってことは、橋下さんも、アメリカ兵は日本の風俗を楽しんでくださいと言っていれば、福島さんらが目くじらを立てることもなかったってことなのかしら。
 「軍と売春はつきもので、歴史の原理みたいなもの。決して好ましいものではないが、彼は基本的にそんなに間違ったことは言っていない」
 石原慎太郎さんはこう言い、私も個人的には石原さんと同意見だが、そうすると私もフェミニズムの方々に叩かれるのだろう。そして、西村さんのあの発言である。
 「日本には韓国人の売春婦がうようよいる(中略)。海外では慰安婦がセックス・スレイブ(性奴隷)に転換されている。これが国際的に広がれば、謀略が成功しかねない。だから、反撃に転じたほうがいい」
 ちなみに、この西村発言の三日前、横浜では、観光ビザで入国した韓国人男性が三人、売春行為で逮捕されています。男性の売春だから“男娼”です(これに、部屋を提供したとして別の韓国人男性も捕まり、逮捕は計四人)。外国人男娼の逮捕は全国で初でした。
 売春婦がうようよいるかは知りませんが、男娼は三人いましたよ、西村さん。
 という話は措いといて、西村議員はすぐさま発言を撤回し、党に迷惑をかけたとして離党届を提出したが、維新の会はこれを拒否。除名処分にするとの見解を示した。このとき、さきの松井幹事長は、除籍のみならず議員辞職を求め、議席を返してもらいたいとまで言った。
 西村さんは橋下さんと同じ弁護士出身の代議士だが、難関と言われる司法試験をパスし、弁護人を経験したにしてはどうにもケンカ下手というのか、簡単に揚げ足を取られるような脇の甘さがあるような気もするが、維新の会のメンバーで手を挙げたのはこの三人だけだ。あとはダンマリを決め込んでいる。苦し紛れに、小沢鋭仁国対委員長がこんなことを言ってますが。
 「あれは橋下氏の個人的な発言だと思う」
 だそうです。橋下発言は維新の会とは関係ないところで起きた火事らしい。
 我が身の党……、もとい、みんなの党も、参院選での維新の会との協力体制を解消すると発表した。それどころか、我が身の党……、もとい、みんなの党代表の渡辺善美氏は、維新の会に合流しなくてよかったとまで吐き捨てた。私、この方のお父さまに取材したことがあるけど、お父さまのほうがもうちょっと義理堅くて潔かった。
 逆風の中で橋下擁護にまわれば次の選挙が危ない、と思っているセンセイ方はたくさんおられるようで、維新の会は、あたかも橋下徹を坂本龍馬に仕立てようとしているのかもしれない。そうすると、松井さんが中岡慎太郎役になるのか。
 すると、ひょっとしたら維新の会は五年後にはなくなっているかも、というところに話はまた戻ってしまうが、橋下さんは、次の参院選で維新が惨敗し、その原因が自分の発言にあれば辞任すると言っている。
 が、私には、孤立する親分を助けようとしない腰抜けどものほうが、結果的に維新の会を終焉に向かわせるような気がしてならない。ボスを守れない政治家に、国民の生活を守ることなんかできるわけがない。
 と思わないか?
 維新の会の行く末は、グレーな要素はあっても、小沢一郎を切り捨てた民主党と同じ道をたどるのだ、きっと。維新の会のメンバーは橋下人気に縋り、民主党は小沢さんの手腕に縋って入党したくせに。
 日本語で言うところの“風俗”が、英語圏の諸外国に翻訳されたとき“売春”と意味が変わる。慰安婦(Comfort women)を性奴隷(Sex slaves)と表現するよう命じたのはあのヒラリー・クリントン国務長官で、つい一年前のことだ。
 ヒラリーさんは、ご存じのとおり民主党の上院議員です。おわかりですね、民主党です。モニカ・ルインスキーさんと“不適切な関係”をもったビル・クリントン元大統領の奥さまです。
 ヒラリーさんが鶴の一声で、従軍慰安婦を性奴隷と言うように、と命じたときの政権与党が、いまは野党に追い落とされた民主党。当時の玄葉光一郎外務大臣は異を唱えたが、従軍慰安婦=性奴隷は瞬く間に国際世論のスタンダードになってしまった。
 そういった意味でも、やっぱり何をやってたんだ民主党は、なのだが、ついでに、何をやってたんだ日本のメディアは、にもなる。
 橋下さんと西村さんの発言の背景には、そのような国際世論を許容してはならないという強い意志があった――、と私は見ているが、アメリカ兵はどうしてこんなに問題ばかり起こすのだ、と司令官に詰め寄る姿勢を強く見せ、謝罪なり反省の弁を引き出せば、お二人も謝罪する羽目にはならなかったとも思っている。もっとも、アメリカは謝ったほうが負けの文化だから、めったに謝罪しないんですけどね。
 「橋下さんが、米兵による事件、事故が多く起こるのは問題だ。綱紀粛正はどうしているか、と問うと、司令官は、フィットネスとジョギングだと二回、小ばかにした感じで応えた。それで橋下さんは業を煮やして、風俗に行けばいいと発言したのです」
 と、橋下さんがジェイムス・フリン司令官と面談した際、同席した下地幹郎前衆議院議員は週刊文春の取材に応えている。
 すると、橋下さんのほうが焦れて、言わなくてもいいことまでつい口走ってしまったということになる。捉えようによっては、海千山千の司令官にいいようにあしらわれたとも言える。若さが露呈したか。
 また、面談での風俗活用発言は、日本側の出席者三〇人全員で口外しないことを申しあわせていたとのことだが、橋下さん自らが、そのオフレコの禁を破った、と維新の会関係者が匿名で証言してもいる。
 橋下さんが記者会見で打ち明けたとき、リップサービスの度が過ぎたのか、それとも、よほど言いたいことがあったのかは定かではないが、発言の中から風俗の活用と従軍慰安婦問題に争点が集中した――、というのが今回の騒動だ。
 ともすれば、アメリカの民主党寄りだったり、韓国や中国に“いい顔”を見せたいうえに橋下嫌いな新聞社がとりたててこの騒動を大きくしたのかも。ありますね、自虐史観がお好きな新聞社。
 な~んてバイアスさえかかってしまう。
 週刊新潮で『変見自在』というコラムを連載中の高山正之さんが、興味深い資料を紐解いていた。このコラムは、週刊新潮を読むときの楽しみのひとつと言ってもいいくらいに痛快なのだ。
 ずっと以前、高山さんには私が集めた資料をお貸ししたこともあるのだが、この方は、それはそれは入念に資料を漁る方で、ジャーナリズム系のコラムを書かせたら、この高山正之、毎日新聞の牧太郎、櫻井よしこのお三方が日本のトップ3だろうと思っている。私なんかと違い、実に説得力のあるコラムをお書きになるのだ、この人たちは。他にもジャーナリズム系のコラムを書かれている方、ごめんなさい。
 高山さんのコラムによると、日本の敗戦後、厚木にアメリカの部隊が入ったその日の夜、アメリカ兵による最初の強姦事件が起きたとあり、その十日後にも中野のアパートに押し入った米兵が制止する男性ら数人を殴り倒し、押し入れに隠れた女性を襲った等々の記録を当時の新聞から引き出している。
 事件は全国的に広まり、一日で四六件もの強姦事件が起きたような驚くべき事実を挙げ、また、当時の調達庁が調べたところでは、一九五一年にサンフランシスコ講和条約が結ばれるまでの六年間で、実に二五三六人の日本人男性が、妻や娘を守ろうとしてアメリカ兵に殺害されたとある。
 信じられるかい、二五〇〇人以上だぞ。止めようとした男性が二五〇〇人以上も殺害されているのなら、被害に遭った女性はどれだけいると思うのだ。
 私は、決して、古い話だからの一言で片づけることはできないと思う。アメリカ兵による性犯罪は、いまもなお起きているのだ。従軍慰安婦制度そのものに目を向け、慰安婦の苦痛を推し量る裁量も大切だが、アメリカ兵の被害に遭った女性、そしてアメリカ兵に殺された男性の無念にも目を向ける必要はあるはずだ。
 だから、私は福島瑞穂さんやフェミニズム運動の方々に問いたいのだ。
 それぞれの立脚点から橋下さんを女性の敵とばかりに批判されるのは結構だが、アメリカ兵が犯す性犯罪について、この方々はどう思っておられるかということだ。何かあるとすぐ発言なさるのも結構だが、では、橋下さんのように在日米軍司令部に乗り込んだことはあるのか。あるいは、乗り込んでもの申す気はおありなのか。
 それとも、日本のフェミニストはやっぱりアメリカさんにはダンマリですか。
 風俗を活用せよという発言はとりあえず措いといてもらい、その前の、多発するアメリカ兵の性犯罪と事件を何とかできんのか――、とツッコんだ橋下さんは、フェミニストならば“よく言った”と賞賛に値すると私は思うのだが、福島さんらには、橋下さんの意を汲もうとする姿勢はないようだ。
 日本を“レイプ国家”と指さすアメリカの兵士が、日本に来て女性を襲っているんだぞ。おかしいじゃないか。
 だから、私は思うのだ。真意を読めない人が、橋下叩きに走るのではないかと。
 日米安全保障条約の名のもと、日本国を衛る名目で駐留しておきながら、その日本国の婦女子に悪さをするアメリカ兵を、私は正義漢面した卑怯者たちだと思っている。わいせつ行為を繰り返す警察官と同じくらい卑劣だとも思う。
 清廉潔白な兵士もいるだろうし、品行方正なお巡りさんだっていることは知っているが、法を犯し、秩序と規律とモラルを踏みにじる兵士や警察官がいることも、紛れもない事実だからだ。
 私の橋下さんへの共感は振り子のように行ったり来たりで、竹島を日韓で共同管理したらいいなどと言ったときは閉口したものだが、多発するアメリカ兵の性犯罪を苦々しく思い、何とかならんのかこいつら、という点に関しては、私はとことん橋下徹を擁護してもいい。
 アメリカ兵の愚行暴行蛮行から日本の婦女子を守りたいという考えは、見上げたものではないか。どう思うよ、日本の男性諸君。
 でも、だからといって風俗を活用せよとの方向に論理が傾くのは稚拙だったとしか言いようがないし、風俗と従軍慰安婦の問題ばかりに固執するメディアも、ちょっとおかしいのです。
 風俗発言に注視するのなら、アメリカ兵の犯罪にも目を向けなければ、フェアな報道とは言えない。そして、慰安婦を性奴隷に置き換えられたままでいいわけがない。