2012年11月30日金曜日

デタラメ東電、新たな2回目TV会議映像公開 福島原発事故

東電、新たなTV会議映像公開 放水の経緯など
福島原発事故

日本経済新聞 2012/11/30 14:06

 東京電力は30日、福島第1原子力発電所事故後に記録した社内テレビ会議の映像を追加公開した。
新たに公開されたのは昨年3月16~22日と3月30日~4月5日の計約2週間分(計335時間54分)。
使用済み核燃料プールの水位が下がり燃料棒が過熱したため、
自衛隊のヘリコプターなどにより必死の放水作業を展開した経緯などが映っている。

 このうち、報道機関に映像データとして提供されたのは計約1時間51分の3つの場面で、
これらは東電のホームページにも掲載された。
原発敷地内にたまった汚染水を海洋放出した際の東電幹部の発言なども収録されている。
残りの映像は報道関係者らに閲覧だけを認めた。

 東電がテレビ会議映像を公開したのは、
事故直後の昨年3月11~15日の映像を今年8月に公開したのに続き2回目。
今回も一般社員らのプライバシー保持などを理由として、音声や画像に処理を施している。

 日本新聞協会などは東電に対し、映像を全面的に公開するよう求めている。

東電TV会議 汚染水放出の混乱浮き彫り
               NHK      11月30日 17時26分

 原発事故直後の対応が記録されたテレビ会議の新たな映像が公開されました。
この中には、去年4月、
関係機関への十分な連絡なしに汚染水を海に放出する決定をした際のやり取りがあり、
映像からは、政府や東京電力本店が現場の切迫感を十分把握できず、
追い込まれて放出を決断するという、当時の混乱ぶりが確認できます。

 新たに公開されたのは、事故から6日目の去年3月16日からの1週間と、
去年3月30日からの1週間の、およそ336時間分のテレビ会議の映像で、
原則、閲覧による公開で、ほかにおよそ2時間分が報道用に提供されました。
 この中には、冷却できなくなった使用済み燃料プールに
自衛隊のヘリコプターなどで放水した際のやり取りや、
関係機関への十分な連絡なしに汚染水を海に放出し、
国内外から批判を浴びた際の対応などが含まれています。
 このうち、汚染水の放出については、
政府や国会の事故調査委員会が検証結果を公表していますが、
実際に現場と本店や政府との間でどのようなやり取りがあったのか
十分明らかになっていません。
 今回の公開によって、その一端が見えてきました。
例えば、去年3月30日のテレビ会議では、
 現場の指揮官の吉田所長が、「水の問題がいちばん大きいことは、
すでに1週間近く言っている。限界だ。
何とかしてくれ」と、汚染水の海への放出も含めて、
緊急に対策を検討してほしいと本店に掛け合っていました。
 しかし、本店側の担当者は
「決して汚染水を外部に放出しないためにどうすればいいか検討している」と発言し、
現場の危機感との間にずれが生じているのが確認できます。
 その後、事態が悪化し、放出当日の去年4月4日午前9時のテレビ会議では、
吉田所長が「手足を縛られたなかで頑張れと言われても、到底頑張れない」と発言し、
状況が一変して、一気に海への放出が決まっていったことが分かります。
  一連のやり取りを見ると、政府や本店が現場の切迫感を十分把握できず、
汚染水の海への放出という極めて重大な決断を、
追い込まれて決めていった混乱ぶりが浮かび上がります。
 ただ、こうしたやり取りの多くは閲覧の映像の中にあり、
提供された動画の中にはほとんど含まれていませんでした。
 このほか、去年3月17日、3号機の燃料プールに
自衛隊のヘリコプターで上空から放水しようとした際のテレビ会議の映像には、
「来たぞ、4機目だ」、「ああ、霧吹きだ」などと、
冷却手段がなくなった燃料プールへの放水に期待しながら
見守るしかない現場の苦悩も見て取れます。
 

 今回の公開は、
ことし8月以来2回目で、事故対応の検証に欠かせないテレビ会議の映像について、
東京電力は事故から1か月に当たる去年4月11日までの分を公開する方針を示していて、
残る2週間分について、来年1月下旬をめどに公開するとしています。

汚染水放出に至った経緯は

汚染水の海への放出が決まるまでの経緯を、
政府や国会が設置した事故調査委員会の報告書の記述などからまとめます。
 発端は、事故から8日後の去年3月19日。
6号機の地下の電源設備がある部屋に
汚染水が流れ込んでいるのが見つかったことから、検討が始まります。
 「電源設備に被害が出ると、
重大な事故に至っていない5号機と6号機にも影響が及ぶおそれがある」。
こうした危機感から、
3月23日には、6号機の地下にたまっている汚染水を海に放出したいと、
初めて「海洋放出」を当時の保安院に伝えています。
 しかし、放射性物質の濃度が法令で定める基準より高かったため、
東京電力はいったん、「海への放出は困難」と判断します。
その後、6号機につながる立て坑の水が地下に流入していることが分かり、
今度は、この水の海への放出を検討しますが、こちらも濃度が高く、再び断念します。
 一方、この間に重大な事態が発生します。
3月24日、3号機の地下にたまった汚染水で、作業員3人が被ばくをする事故が起きます。
原子炉から流れ出た高濃度の汚染水がタービン建屋などにたまっていたことが原因で、
東京電力と国は特別チームを作り、汚染水への対策を本格化していきます。
 この中で、高濃度の汚染水を放置すれば、
立て坑から外に漏れ出るおそれがあるとして、移送先を確保することになり、
特別チームは3月28日、
別の施設にたまった比較的低い濃度の汚染水を海に放出する方針を固めます。
 これに対して、4月1日、特別チームの全体会議で、
「汚染水の海への放出は絶対にありえない」という強い意見が出されます。
 事態が変わったのはその翌日。
最も恐れていた、高濃度の汚染水の海への流出が起きたのです。
2号機の立て坑から、ピットと呼ばれる施設を通じて、海に漏れ出ました。
 この事態を受けて、翌4月3日に開かれた政府と東京電力の会議の席上、
「やむをえず低い濃度の汚染水を海に放出せざるをえないかもしれないが、
国民が納得できる説明が必要」という意見が出されます。
 そして、4月4日朝のテレビ会議で、
吉田所長が「手足を縛られたなかで頑張れと言われても、
到底頑張れる状況にない」と現場の状況を訴えると、
一気に海洋放出に傾き、
政府内での了承、原子力安全委員会からの技術的な助言など、
事務的な手続きが同時並行で進められ、
原子炉等規制法の64条に基づく「危険時の措置」と判断され、
海への放出が決まりました。
 こうした一連の経過について、
国会の事故調査委員会は「大量の汚染水の処理は当初より予測可能で、
十分な検討や対策が行われていれば、
海への放出を余儀なくされる事態は回避できた可能性が十分に考えられる。
 本店はふかん的、長期的視点から、現場を支援する役割を十分に発揮できなかった」
と指摘しています。
また、関係者の理解を完全に得られないまま放出したことについても、
「放出計画を適切に説明する時間的な余裕があれば、
こうした事態は避けられた可能性がある」と厳しく指摘しました。


2012年11月24日土曜日

100万円以上? 1票の価値、お金に換算すると

                         [日経プラスワン2012年11月24日付]     エコノ探偵団
■選挙・活動費から計算すると1000円

 「候補者は1票を得るのにいくら使うのかしら」。明日香は総務省の資料を調べた。2009年8月の前回総選挙で、東京都の小選挙区候補者の運動費は合計約5億4900万円。総得票数が約688万票なので1票当たり約80円支出した計算だ。全候補者が運動費を法定上限額まで使った場合は約400円になる。

 「候補者にも聞いてみよう」。明日香は前衆院議員の一人に実態を尋ねた。「前回総選挙では自腹で約1千万円用意し、所属政党から千数百万円の支援を受けました」。得票数が約10万だったので1票当たり二百数十円になる計算だ。

 ただ、議員活動は選挙期間中だけではない。「地元事務所の維持費などで年間2千万円近くかかる」という。明日香は電卓をたたき「仮に任期中4年間の活動費も次の選挙に向けた費用だと考えれば、1票1千円くらいね」とつぶやいた。

 「“市場価格”も知りたいわ」。明日香は買収価格を調べることにした。警察庁に問い合わせると前回選挙での検挙事例を教えてくれた。捜査第2課によると「運動員が有権者20人に現金約3千~5千円を渡した」「有権者3人に、投票と票のとりまとめの見返りに1500~6千円相当の牛肉を提供した」などの例があったという。「こういうルール違反はなくさなきゃ」

 事務所で報告すると、所長が「視点が候補者側に偏ってないか。依頼人が知りたいのは有権者にとっての価値だろ」と鋭く指摘した。明日香は「調べ直します」と慌てて飛び出した。

■シンクタンクに試算してもらうと…

 「経済学ではどう考えてるのかしら」。追手門学院大学教授の奥井克美さん(49)に聞くと、選挙の分析では「投票者が投票によって得られる報酬」=「自分の1票が選挙結果に影響を与える確率」×「自分の支持する候補者が当選した場合に得られる効用(満足度)と支持しない候補者が当選した場合の効用の差」―「投票に行くコスト」+「投票することの市民としての義務感」という式がよく使われるという。



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 「自分の1票で結果が変わる可能性が高いほど、価値は上がるわけですね」。逆に自分の票が結果に影響を与える確率がゼロに近いと、投票の価値はほぼ「義務感」―「投票のコスト」だけになる。「(交通費など投票にかかる)コストが変わったときに、価値がプラスになる(投票に行く)かどうかを分析する研究が多いですね」と奥井さん。

 どうも1票の価値の水準を求める式ではないようだ。困った明日香は、シンクタンクに1票の価値を試算してもらうことにした。

 ニッセイ基礎研究所の高山武士さんに意見を求めると「国の予算から計算してはどうですか」と試算を示した。政府予算(一般会計)は年間約90兆円。配分が投票結果で決まると考え、有権者約1億人で割ると1人当たり年90万円。「衆議院の任期は平均約3年なので1回の選挙で約270万円の価値があるといえそうです」と高山さん。

 明日香が驚くと、高山さんは「予算の半分は税収ではなく国債という“前借り”で賄われるので注意が必要です」と付け加えた。将来の自分にツケを回しているのと同じで、返済負担は平均余命の長い若者の方が重くなるという。

■高齢者、現役世代の2倍か

 「世代によって1票の価値に差がありそうね」。明日香は日本総合研究所を訪れチーフエコノミストの山田久さんに話を聞いた。「予算を、受け取る世代別に分けて考えてみましょう」と山田さん。例えば一般会計の教育関連支出は若い世代が受け取り、社会保障給付費のうち年金関連は65歳以上の人が受け取る。

 こう考えると、1年間に国から得る便益は65歳以上で1人126万円、65歳未満の有権者で58万円(2009年度)。予算配分の格差を解消するために「人数が減り政治への影響力が下がる若者には1人に1票以上与える案などを検討すべきです」と山田さん。

 「若者の投票率の低さが不公平な予算配分につながった可能性があります」。SMBC日興証券のエコノミスト、宮前耕也さん(33)はこう指摘する。前回選挙で20代の投票は49%、70代は80%だった。



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 内閣府の05年の試算では、1974~83年生まれの人は、社会保障の受益と負担のバランスが1世帯当たり生涯で約1660万円のマイナスだ。「これを、投票に来ない若者を政治家が冷遇した結果だと見なし、みんなが選挙に行けば負担超過をゼロにできると仮定します」。平均寿命までの間、衆院選が21回あるなら1回の投票の価値は約80万円。「ただし、若者みんなの投票が前提です」。明日香は「投票に行かないと不利な扱いを受けかねないわけね」と思った。

 「1票の価値の格差は地域間でもありますよ」。アジア太平洋研究所の副主任研究員、村上一真さん(38)は一般会計を国会議員数で割って1人あたりの「予算責任額」を算出。これを各小選挙区の有権者数で割ったという。

 例えば一番高い高知県第3区の1票の価値は議員の任期4年で約182万円。逆に千葉県第4区は76万円。実に2.4倍近い差がある。「最高裁で1票の格差が違憲状態だと指摘されたけど、金額で見ると改めて不公平感が募るわ」と明日香はまゆをひそめた。

 「投票しないと損だということがよく分かりました」。納得した依頼人を見送った所長が「久しぶりに投票したくなったな」。夫人の円子がくぎを刺した。「“負け馬”投票券を買う気じゃないでしょうね」

<昔は高額納税者の特権 「タダで投票」は国民運動の成果>

 日本で最初に総選挙が行われたのは1890(明治23)年7月1日。ちなみに投票日は今と違い火曜だった。選挙権は満25歳以上の男性で「直接国税を15円以上納めた者」だけに与えられた。

 当時の15円を現在の額に直すのは、比較できる消費者物価の統計がないため難しい。投票日の中外商業新報(後の日本経済新聞)に載った商品相場から単純計算すると数万円だが、有権者が総人口のわずか1%だったことからすると、もっと価値があったのは間違いない。例えば、税制は違うが確定申告した人の所得の上位1%から考えると1千万円程度になりそうだ。

 たくさん税金を納めた人だけの特権だった選挙だが、全員が喜んで投票に行ったわけではないようだ。投票から3日後の中外商業新報は「東京府民、政治思想の冷熱」の見出しで、東京府(当時)の選挙区で最大37%の棄権が出たと、批判的な調子で報じている。

 納税条件撤廃を求める国民の運動の結果、1900年に10円、19年には3円に引き下げられ、初選挙から35年後の25年に普通選挙法が成立する。ただ、25歳未満や女性に参政権はなかった。20歳になれば誰でも「タダ」で投票できる権利は、先人たちの努力で勝ち取ったものだ。
 



2012年11月22日木曜日

日経平均、年初来の上昇率1割超す

日経平均、年初来の上昇率1割超す 

主要指数で「ベスト10」入り

                                                                                     2012/11/22 15:41

22日の日経平均株価 は続伸し、5月2日以来約6カ月半ぶりに9300円台を回復した。野田佳彦首相による14日の解散方針表明後、上げ幅は702円(8%)に達した。世界の主要株価指数の中では、年初来の騰落率ランキングで「ベスト10」に入った。


 昨年末から22日までの日経平均の上昇率は10.8%となった。野田首相が解散表明する直前の13日時点で2.5%だったのと比較すると、その後の上げの大きさが目立つ。

 18カ国・地域(21指数)の年初来のパフォーマンスを比較すると、日経平均は14日時点で15位だったが、直近では10位に浮上。韓国総合指数の3.2%上昇や米ダウ工業株30種平均の5.1%上昇を大きく上回る。

 トップのタイ総合の24.5%高やアテネ総合の22.0%高、独DAXの21.8%高には及ばないが、米ナスダック 総合指数の12.3%上昇やシンガポール・ST指数の11.9%上昇に続く。自民党の安倍晋三総裁が選挙戦で円安を公約に掲げたことで、日本株の先高期待が高まった。

 この間、買いを主導したのは海外投資家。22日発表された11月第2週の東証の投資部門別売買状況では、外国人の買越額が1292億円と10月第3週以来の高水準に膨らんだ。市場では「今後1、2週間中には心理的節目である9500円を試す展開となる」(広木隆・マネックス証券チーフ・ストラテジスト)との声が出ている

世界の主要株価指数の騰落率
タイ総合 24.5%
アテネ総合 22.0%
独DAX 21.8%
インドSENSEX 19.4%
南アFTSE・JSE全株 17.2%
香港ハンセン指数 16.8%
インドネシアジャカルタ総合 13.0%
米ナスダック総合 12.3%
シンガポールST指数 11.9%
日経平均 10.8%
仏CAC40 10.0%
豪オールオーディナリーズ 6.8%
米ダウ工業株30種平均 5.1%
英FTSE100 3.2%
韓国KOSPI 3.2%
ロシアRTS 2.8%
伊FTSEMIB 2.0%
台湾加権指数 0.2%
ブラジルボベスパ ▲0.9%
中国上海総合 ▲7.7%
スペインIBEX35 ▲8.9%

(注)年初来。▲は下落。日経平均以外は21日時点

 上昇のけん引役はニコンリコーキヤノン といった輸出関連株。足元で円相場が1ドル=82円台半ば、1ユーロ =106円前後に下落しており、収益採算の悪化懸念が後退している。日銀が10月に発表した企業短期経済観測調査 (短観)では、2012年度の大企業製造業の想定為替レートは1ドル=79円06銭だった。

 野村大和 など証券株の上げも目立つ。最近の地合い改善に加え、自民党が政権公約で証券取引の活性化を盛り込み、材料視された。出遅れ感の強い鉄鋼株にも買いが集まるなど、物色の裾野が広がっている。

 ただ、選挙戦の行方は流動的で、思惑先行に色彩も濃い。市場では、「本格的に上昇するには、中国の景気回復が必要。売買高の増加を伴って上昇しているわけではないため、上値は重そう」(石川照久・みずほインベスターズ証券エクイティ情報部部長)との声も出ている。
 

東証大引け、円安を好感して大幅続伸 

5月2日以来の9300円台

2012/11/22 15:18
 
22日の東京株式市場で日経平均株価 は大幅に続伸し、前日比144円28銭(1.56%)高の9366円80銭で高値引けとなった。5月2日(9380円)以来、約半年ぶりの高値となる9300円台で終えた。外国為替市場で円相場が1ドル=82円台半ばと4月上旬以来の円安水準に下落し、自動車や精密など輸出関連株に輸出採算の改善を期待した買いが集まった。大引けにかけて株価指数先物に断続的な大口買いが入るなど、海外ヘッジファンド など短期資金の流入はきょうも続いていたという。トヨタ が4月上旬以来の3500円台回復となった。
12月の衆院選後に政権が交代するとの思惑や、新政権が日銀に大胆な金融緩和を迫るとの見方を引き続き支えに、市場では円安・株高基調の継続を見込む声が多い。3連休を控えた週末とあって、利益確定目的の売りに上値を抑えられる場面もあったが、旺盛な買い意欲が売りを吸収した。大引けにかけては「急激な相場上昇に追いついていない投資家による追随買いや、伸び悩みを見込んでいた売り方による買い戻しも入ったようだ」(立花証券の平野憲一顧問)という。
前場中ごろ過ぎに発表された、11月の中国製造業購買担当者景気指数(PMI)速報値は50.4と、好不況の判断の節目となる50を13カ月ぶりに上回った。上海株式相場の反応は乏しかったが、中国景気の減速懸念が後退したとの見方から中国関連銘柄の下支え要因との声があった。
東証株価指数 (TOPIX)も続伸した。
東証1部の売買代金は概算で1兆1818億円、売買高は20億2715万株。東証1部の値上がり銘柄数は1223と全体の72%を占めた。値下がり銘柄数は347、変わらずは120だった。

2012年11月12日月曜日

一審が無罪でも二審判決の入裁は被告なんだ



控訴審判決のため、東京高裁に入る「国民の生活が第一」代表の小沢一郎被告(12日午前)
控訴審判決のため、東京高裁に入る
「国民の生活が第一」代表の小沢一郎被告(12日午前)
[画像あり] 写真一覧    日本経済新聞 電子版2012年11月12日

小沢代表に2審も無罪 東京高裁
11月12日 13時40分

小沢代表に2審も無罪 東京高裁
国民の生活が第一の小沢一郎代表が政治資金を巡って強制的に起訴された裁判で、2審の東京高等裁判所は「収支報告書の記載が正しいと考えていた可能性がある」として、1審に続いて無罪を言い渡しました。

小沢一郎代表(70)は、平成16年と17年分の資金管理団体の収支報告書にうその記載をしたとして強制的に起訴されましたが、1審の東京地方裁判所は、ことし4月、無罪を言い渡しました。
9月に東京高等裁判所で行われた2審の裁判で、検察官役の指定弁護士は有罪にすべきだと主張したのに対し、代表の弁護団は再び無罪とするよう求めていました。
12日の判決で、東京高等裁判所の小川正持裁判長は「当時、秘書が細かな経緯を説明せず、小沢代表も収支報告書の記載が正しいと考えていた可能性がある。無罪だと判断した1審の判決は正当なものだ」と指摘し、1審に続いて無罪を言い渡しました。
法廷で無罪を言い渡された小沢代表は表情を変えず、裁判長に向かって数秒間、頭を下げました。
その後、裁判長に促されて席に座ると、正面を向いて判決の理由を聞いていました。
これまでに検察審査会の議決によって強制起訴されたケースは6件ありますが、判決が言い渡された2件はいずれも無罪となっていて、初めてとなった今回の2審でも無罪と判断されました。

弁護団“良識に基づいた判決”

判決のあと、小沢代表の弁護団の弘中惇一郎弁護士は「きょうの2審は、小沢代表が事前の説明を受けていないことなどを認めていて良識に基づいた無罪判決だと思う。
指定弁護士は、常識的な判断をして上告をせず速やかに裁判の終止符を打つべきだ」と話しました。
また、判決について、検察幹部のひとりは「そもそも検察審査会の『起訴すべき』の議決は正しくなかったと言え、無罪は当然だ。
上告の理由は見当たらず、このまま無罪が確定するのではないか」と話しています。

“上告は今後検討”

検察官役の指定弁護士を務める大室俊三弁護士は会見で「上告するかどうかは指定弁護士3人で検討して決めたい」と述べ、今後の対応については明らかにしませんでした。
また、判決に対しては「主張が理解されず残念だ。
会計責任者を指導監督する政治家が『責任者に任せているから知らない』と言えば責任に問われないと誤解されるのではないか」と述べました。

官房長官“個別事件なので所感述べず”

藤村官房長官は、記者会見で「国民の生活が第一の小沢代表に2審の判決が言い渡されたということは聞いたが、詳細な中身は聞いていない。個別の具体的な事件に関する裁判所の判断のことなので、政府として所感を述べることはない」と述べました。
また、今回の無罪判決が次の衆議院選挙に与える影響について、藤村長官は「選挙のことは政党間の話であり、各党の幹事長などは言及するかもしれないが、政府として言及することはない」と述べました。

裁判の経緯

小沢代表は東京地検特捜部が不起訴にしたあと、検察審査会の議決を経て強制的に起訴され、裁判が行われてきました。
裁判の舞台となったのは、小沢代表の資金管理団体「陸山会」が平成16年に購入した東京・世田谷区の土地で、購入資金として小沢代表が4億円を出し、当時の秘書らに渡しました。
東京地検特捜部はこの4億円が陸山会の収支報告書に記載されておらず、報告書の内容はうそだとして元秘書3人を起訴しましたが、小沢代表については明確な証拠がないとして不起訴にしました。
しかし、検察審査会が二度にわたって起訴すべきと議決したため、去年1月、強制的に起訴されました。
1審の裁判で小沢代表は「すべて秘書に任せており、罪に問われる理由はまったくない」とみずからの関与を否定し、一貫して無罪を主張しました。
ことし4月、東京地方裁判所は「代表が具体的な事情を知らなかった可能性があり、うその記載だと認識していたとは言えない」と無罪を言い渡しました。
指定弁護士が控訴し、9月に東京高等裁判所で行われた2審の審理では「うその記載だと認識していたはずだ」と有罪にするよう求めた一方、代表の弁護団は「明確な認識はなかった」と再び無罪を求めていました。
この日、指定弁護士は元秘書を証人として呼ぶことや証拠を調べることを新たに求めましたが、東京高裁はいずれも認めず、審理は一日で終わっていました。

2012年11月8日木曜日

12年度上半期の経常黒字、過去最少の2兆7214億円

                                                                          2012/11/8 10:27
 財務省が8日発表した2012年度上半期(4~9月期)の国際収支速報によると、モノやサービス、配当、利子など海外との総合的な取引状況を示す経常収支は2兆7214億円の黒字となった。年度上期としては現行の統計を開始した1985年以来の最少だった。

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 同時に発表した9月単月の経常収支は5036億円の黒字。ただ月による特殊要因を除いた季節調整済みでは1420億円の赤字となった。第2次石油ショックの影響で輸入額が拡大した1981年3月以来、31年半ぶりの経常赤字だった。

 12年度上半期の経常黒字は前年同期から41.3%減った。輸出から輸入を差し引いた貿易収支の赤字幅が2兆6191億円となり、年度半期ベースとしては85年以来で最大となったことが響いた。

 欧州債務問題の影響で欧州向け輸出が前年同期比16.2%、中国向けが8.2%減少。商品別では自動車や船舶が落ち込んだ。一方、火力発電所の稼働が拡大し、液化天然ガス(LNG)の海外調達が増えたため、輸入額は3.4%増えた。

 旅行や輸送の動向を示すサービス収支は1兆6791億円の赤字。訪日外国人観光客が増えて旅行収支の赤字幅は縮小したものの、貿易縮小により商社の手数料収入が減った。

 企業が海外投資から受け取る利子・配当などを示す所得収支の黒字幅は2.1%増え、7兆5024億円だった。
 

10月の街角景気、3カ月連続で悪化 「さらに弱く」
指数2.2ポイント低下                    2012/11/8 14:01

 内閣府が8日発表した10月の景気ウオッチャー調査(街角景気)によると、街角の景気実感を示す現状判断指数は39.0で、前月比2.2ポイント低下(悪化)した。悪化は3カ月連続。
 基調判断は「このところ弱まっている」から「さらに弱まっている」に変更した。
 

内閣府が8日発表した10月の景気ウオッチャー調査(街角景気)によると、足元の景気実感を示す現状判断指数は前月比2.2ポイント低下の39.0と、3カ月連続で悪化した。指数が40を下回るのは2011年5月(36.0)以来、1年5カ月ぶり。内閣府は基調判断を前月の「このところ弱まっている」から「さらに弱まっている」へ下方修正した。判断を引き下げるのは2カ月連続。 2012/11/8  15:24

 沖縄県・尖閣諸島の国有化を巡る日中関係の悪化懸念が一段と強まった。中国や尖閣問題に関連するコメント数は83と、9月調査の59から増えた。「海外旅行は急激に落ち込んでいる」(近畿の都市型ホテル)、「中国への販売が厳しくなっている」(北陸の精密機械器具製造業)など声が相次いだ。

 エコカー補助金終了に関しては「来店客数・販売台数とも激減している」(四国の乗用車販売店)といい、反動減の影響がみられ始めた。世界経済の減速を背景に「製造業の求人意欲が相変わらず鈍い」(中国の人材派遣会社)と指摘があった。

 先行き判断指数は1.8ポイント低下の41.7と6カ月連続で悪化。現状・先行きとも好不況の分かれ目となる50を6カ月連続で下回った。全国的に景況感が悪化するなか、近畿の先行き判断指数は改善した。阪急百貨店うめだ本店の増床開業などで「年末にかけて徐々に活気を取り戻す感じがする。年賀状印刷の受注も昨年を上回っている」(コピーサービス業)という。

 調査は景気に敏感な小売業など2050人を対象と、3カ月前と比べた現状や2~3カ月後の予想を「良い」から「悪い」まで5段階で評価して指数化する。

2012年11月7日水曜日

オバマ氏再選、4年前の「熱狂」遠く ハーレムを歩く

 ニューヨーク市中心部マンハッタン北部にある黒人居住区のハーレム。米大統領選が投開票された6日夜、同地区の目抜き通りの広場にいると、1人の黒人男性が近寄ってきた。重いリヤカーを引き、いかにも疲れた表情を浮かべ、「誰もいないんじゃ、商売なんてできやしない」と吐き捨てた。「4年前はそれはすごい人だったんだ。今年も期待して来たら、裏切られた」と続ける。



4年前と様変わりし、広場では特設ステージが消えていた
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4年前と様変わりし、広場では特設ステージが消えていた

 オバマ氏が初の黒人大統領になった4年前の11月。この広場には数千人の群衆が集まった。黒人だけではない。ラティーノと呼ばれる中南米の移民や、欧州の観光客などあらゆる人々が姿を見せた。「オバマを大統領に!」。それぞれの言語で手書きされた色とりどりの横断幕。地元の黒人たちが持参した打楽器のジャンベ。特設ステージに設置された巨大スクリーンで早々と「オバマ当選」が伝わると群衆の興奮は絶頂に達し、道路では車が派手にクラクションを鳴らした。

 貧しい人はオバマ氏に日々の暮らしをよくしてくれるように願い、外国人は単独主義に走ったブッシュ政権から脱し、米国が国際協調に回帰することを願った。記者も4年前、たまたま現場を取材する機会に恵まれた。人種や世代の垣根を越えて人々が熱狂する姿に、新たな時代の到来を感じずにはいられなかった。

 そして4年後。再び訪れた広場では特設ステージが消えていた。寒さもあってか、地下鉄の駅を出ると足早に家路を急ぐ人々。4年前の熱狂が遠い夢だったかのように、広場は静寂に包まれていた。

 「これを買っていかないか」。重いリヤカーを引いていたチャーリーと名のる行商人は、黒いカバンからTシャツを1枚取り出した。オバマ氏の顔がプリントされ、「チェンジ(変革)」の文字が躍る。よく見てみると「2008年」とある。「12年のバージョンはないの」と聞くと、あっさり「そんなものはない」との答え。

 別れ際、「ちまたではこんな歌が流行しているんだ」とメロディーに乗せて歌い出した。「Please give him a second chance. This time he will do better(どうか彼に2度目のチャンスをくれてやってくれないか。今回はうまくやるはずだから)」。

 オバマ氏が09年1月に米大統領に就任してから4年弱。金融危機で負った傷が深かったとはいえ、米景気の回復ペースは鈍く、米国民が当初抱いた期待には届かなかった。足元で米住宅市場には回復の兆しが見えるものの、失業率は今なお8%近い水準にある。長期失業者も社会問題化し、所得水準が下がるほど明るい未来は描きにくい。



選挙結果を固唾をのんで見守る人々(ハーレム地区の公共ホール)
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選挙結果を固唾をのんで見守る人々(ハーレム地区の公共ホール)

 広場から1キロメートルほど離れたハーレムの公共ホールでは、大統領選の結果を速報するイベントが開かれていた。参加者のほぼすべてがオバマ氏の支持者。選挙人の獲得数が増えるたびに、歓声や拍手がわき起こる。だが定員400人程度の会場を見渡せば、ちらほらと空席も。会社員のゼイン・スタックハウスさん(40)は「同じ黒人としてオバマ氏を応援したが、2期目のオバマ氏に過度な期待をしているわけではない」と語る。医療保険の充実などのオバマ氏の政策は支持しつつも、力強い米経済の復活は見込めないだろうとあきらめ顔だ。

 今回の大統領選直前の世論調査でオバマ氏への黒人の支持率は91%。前回選挙の黒人のオバマ氏への投票率(96%)と比べ、圧倒的な差があるわけではない。ただ「オバマ氏が米国を変える」という夢を抱いた4年前との温度差は否定しがたい。

 「米景気の浮揚と教育水準の向上、この2点に集中してほしい」。そう語る黒人の書店員、アルフォンソ・ダリスさん(40)は、オバマ氏再選にホッと胸をなで下ろした。「中低所得者に冷淡」なロムニー氏が大統領になることだけは避けたいシナリオだったからだ。

 オバマ氏再選を前向きに受け止めつつも、熱狂からは遠く離れた人々。ハーレムを歩いて見えてきたのは、米国民が抱く「出口の見えない閉塞感」だった。

(ニューヨーク=川上穣)

2012年11月6日火曜日

景気「すでに後退局面の可能性」

景気「すでに後退局面の可能性」 3月がピークか
                           9月の一致指数、6カ月連続マイナス
                                                           2012/11/6 19:21

 内閣府が6日発表した9月の景気動向指数(2005年=100、速報値)によると、景気の現状を示す一致指数は91.2となり、前月比2.3ポイント低下した。下降は6カ月連続。内閣府は基調判断を「足踏み」から「下方への局面変化」に下方修正し、「すでに景気後退局面に入った可能性が高い」との暫定的な判断を示した。


 日本経済は2009年3月を谷とする景気拡大局面が続いていた。景気のピーク(山)の時期は有識者による景気動向指数研究会の議論を経て内閣府が正式に判定するが、民間エコノミストには「今年3月がピークだった可能性が高い」(第一生命経済研究所)との見方が目立つ。

 一致指数を下押ししたのは自動車関連の出荷や生産の落ち込みだ。海外景気の減速で自動車の輸出が低迷し、エコカー補助金の終了によって国内の販売も減り、出荷や生産が停滞した。生産の落ち込みは製造業を中心に残業時間や求人の減少につながり、雇用にも波及している。

 「下方への局面変化」は景気の山がそれ以前の数カ月にあった可能性が高いことを示す。東日本大震災直後の昨年5月以来1年4カ月ぶりに局面変化と判断した。10月も指数がさらに低下すれば、基調判断は景気後退の可能性が高いことを示す「悪化」に下方修正される。

 数カ月後の先行きを示す先行指数は1.5ポイント低下の91.7と2カ月ぶりに下がった。生産活動の停滞を受けて原材料などの在庫が増えたためだ。製造業での新規求人の減少も響いた。景気に数カ月遅れる遅行指数は0.6ポイント低下の86.7と2カ月ぶりに低下した。

 内閣府は先行きについて「世界経済のさらなる下振れや輸出の減少を注視していく必要がある」としている。

 景気動向指数は景気が上向きか下向きかを把握するのに適した経済指標で構成し、基調は機械的に判定される。経済全般に関する政府の総括な評価は毎月の月例経済報告で示される。

2012年11月5日月曜日


原発作業員登録数 説明の3分の1だった               11月5日 18時47分

 
東京電力が、福島第一原子力発電所の廃炉に向けて、現場で働く作業員として登録した人数が、先月時点で、これまで説明してきたおよそ2万4000人より少ない、8000人であることが、取材で分かりました。
東京電力は、「再び登録する人がいる」などとして、短期的には作業員の確保に問題はないとしていますが、長期的な確保に懸念が出ています。
福島第一原発では、メルトダウンした3つの原子炉の核燃料の取り出しなど、前例のない廃炉に向けた作業が続けられていて、今も1日3000人が働いていますが、過酷な作業で辞める人も多く、作業員の確保は大きな課題です。
これについて東京電力は、ことし必要となる作業員の人数を1万1700人と想定し、これに対して、現場で働くために登録した人がおよそ2万4000人いるとして、「要員の不足は生じない見込み」と、これまで説明してきました。ところが、この2万4000人は、事故以降、福島第一原発で働いたことのある作業員の総数で、このうちの1万6000人はすでに登録を解除し、先月時点で登録のある人は8000人であることが、東京電力への取材で分かりました。東京電力は、「いったん登録を解除しても再び登録する人がいる」などとして、短期的には作業員の確保に問題はないと説明しています。
しかし、再登録した作業員の人数を把握していないうえ、一度現場を離れた人が再び登録する保証はなく、その一方で必要な人数は想定より増え続けており、作業員の確保の見通しは不透明な状況です。こうした状況について、東京電力は「確保できる作業員の人数が、一定の幅を持って不確かさであることは事実だ。今後、長期的な確保が相当難しくなる可能性があり、人材の育成に力を入れていく必要がある」と話しています。

待遇悪化 東電のコスト削減も影響か

福島第一原発の仕事を辞めた作業員が指摘する「待遇の悪化」には、東京電力のコスト削減に伴う、元請け・下請け企業の受注金額の低下が影響しているものとみられます。
NHKは先月、東京電力から福島第一原発の廃炉作業の仕事を直接受注している元請け企業28社を対象にアンケートを行い、15社から回答を得ました。
その結果、原発事故直後からこれまでの受注単価の傾向について、67%に当たる10社が、「受注単価は下がる傾向にある」と回答しました。
また、その理由については、10社のうち8社が、東京電力のコスト削減に伴う「競争入札の拡大」で、価格競争が激しくなったこと挙げています。
これらの企業の一部は、アンケートの中で、「受注する金額が下がり、質のよい作業員を確保することが難しくなっている」などと、受注金額の低下が作業員の確保に与える影響を明らかにしています。東京電力は、電気料金の値上げなどの認可の条件として、徹底したコスト削減を求められていますが、その一環として行っている競争入札が、結果として、福島第一原発の現場作業員の待遇の悪化にも影響しているものとみられます。

専門家“期待値では困る”

計量経済学が専門で、原発の作業員の労働問題にも詳しい、東京大学大学院の縄田和満教授は、東京電力が確保できるとしている作業員の人数の根拠について、「事故前と違って、福島第一原発の作業環境は、放射線量が高く過酷な環境で、再び登録するかは分からない。期待値でやられては困る。最低でもこれだけは必ず確保できるというレベルを考えないと、作業の継続の面で大きな問題が出る」と指摘しました。
また、東京電力のコスト削減に伴う待遇の悪化で現場を去る作業員が相次いでいるという指摘について、縄田教授は「人件費はまだ目に見えるのでカットしにくいが、安全管理や安全教育など、目に見えないコストが切られないか、危惧している。待遇というのは、単に金銭面だけでなく、長期的な健康管理も含めた意味で、待遇が悪くなれば、誰も働こうと思わなくなる」と述べました。
そのうえで縄田教授は、「東京電力に責任があるのは明らかだが、残念ながら何十年も続ける体力がない可能性が高い。東京電力の財務状況を考えると、国の援助が必要で、あまり好ましくはないが、国がバックアップせざるをえない」と指摘しました。

2012年11月4日日曜日

Wi-Fi ワィファィ? よくわからないIT用語ランキング

 よく見聞きするけど、実は意味がよくわからない――。そんなデジタル・IT(情報技術)用語をネット調査で聞いたところ、インターネットやスマートフォン(高機能携帯電話=スマホ)に関わる言葉が並んだ。



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 IT系サイトで用語解説コラムを担当するオフィスマイカの松田真理さんは「5年前に比べ、パソコンや家電など製品に関する用語を取り上げる回数が減った」と話す。

スマホ系・英略語が上位

 代わりに増えたのが通信やスマホの関連用語だ。携帯電話に詳しいライターの佐野正弘さんは「Wi―Fiや3Gなどはもともと通信業界の中だけで使われていた専門用語。それが最近、CMなどの宣伝文句に使われることが増え、一般の人の会話にも入り込んできた」と見ている。

 デジタル・IT用語の多くはカタカナかアルファベット。早稲田大学の笹原宏之教授によると「パンやタバコなど、外来語をカタカナで取り入れるようになったのは室町時代以降」のこと。カタカナ語の歴史は古いものの「出てきたばかりの言葉は意味の見当がつきにくい。さらに最近は英語の頭文字だけの略語が増え、意味を把握しづらくなってきている」(笹原さん)という。

「マルチメディア」は死語?

 あまり使われなくなった言葉もある。例えばスマホを使ってどこでも動画を楽しめる環境は、以前なら「マルチメディア化が進んだユビキタス社会」といわれただろう。

 1990年代の日経朝刊ではマルチメディアという単語を使った記事は10年間で7212件あった。これが2000年代になると1314件に減る。ユビキタスは「同時にあらゆる所に存在する」というラテン語で、家の中だけでなく町の至る所でコンピューターを利用できる社会を示した。現在はかなり実現しているが、一方でユビキタスという言葉はあまり聞かなくなった。


調査の自由回答では読み方を間違えていたという声も多かった。「Wi―Fi(ワイファイ)をウィーフィーと読んでいた」人は複数いて、中には「Wi―FiをゲームソフトのWii Fitと同じ読み方でウィーフィットと言っていた」人も。並べてみると確かに似ている。「IT(アイティー)をイットと読んでいた」という昔話もあった。

新用語、続々お目見え
 デジタル用語は日々、新しいものが登場している。ランキングに入らなかった言葉でも、スマホやタブレット端末を使ったモバイル生活では、次の3つもキーワードだ。
 【LTE(エルティーイー) 略語の元の言葉は「ロングタームエボリューション」(長期的な進化)。携帯電話の通信の仕様で、3Gよりも通信速度が速い。NTTドコモの「Xi(クロッシィ)」もLTEサービスのひとつ。
 【テザリング】スマートフォンなどが持つデータ通信機能を利用して、複数の機器をインターネットに接続できるようにすること。
 【ブルートゥース】パソコンやスマートフォンと周辺機器などをつなぐ無線通信規格。例えばスマートフォンとヘッドホンをつなぐ場合などに利用される。

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 調査の方法 日経生活モニターへの予備調査で「最近よく聞くが理解があいまいなデジタル・IT用語」を聞き、それをもとに137語のリストを作成した。この137語について、インターネット調査会社マクロミルを通じて10月中旬、全国の20~60代以上の男女1000人を対象に調査。「見たり聞いたりしたことがある」と回答した人が50%を超えた用語の中から「意味がわからない」「人に説明する自信がない」という回答が多かったものをランキングした。