2013年1月31日木曜日

日銀の重苦しい朝

守るのは組織 日銀の重苦しい朝(ルポ迫真) 
                                             日本経済新聞  2013/2/1 3:30

昨年12月17日。日銀は重苦しい朝を迎えた。前日の衆院選で安倍晋三(58)が率いる自民党が圧勝。最初に異変に気付いたのは中堅以下の職員だった。
 「8階で何かが起きている」。日銀本店でひそひそ話が広がった。8階は正副総裁や審議委員、理事らの部屋が並ぶ。2日後に金融政策決定会合が迫り、通常なら8階では経済データや政策の文言の説明に追われる職員が走り回る。その日は朝から「全くアポイントが入らない」。幹部に面会できず立ち尽くす職員が廊下にあふれた。



日銀は1月22日、物価目標導入を決めた(金融政策決定会合)
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日銀は1月22日、物価目標導入を決めた(金融政策決定会合)

 このころ総裁の白川方明(63)らは自民大勝で現実味を帯びた日銀法改正への対応を協議していた。「2%の物価上昇率目標」を迫る安倍の主張を丸のみすべきか。中央銀行として筋を通すべきか。議論は紛糾した。

 「総裁の職を賭して、戦うべきだ」。OBには主戦論者も目立った。しかし白川らは物価目標をのむ代わりに、日銀法改正を避ける方向にカジを切った。「中銀の独立性が失われ組織をがたがたにされてもいいのか」。関係者によると、有力OBの鶴の一声が決め手となった。海外中銀幹部からも独立性を脅かす法改正を危ぶむ意見が続々と寄せられた。白川は3日後、物価目標の検討を発表した。

 安倍は1月15日、内閣官房参与に就いた米エール大名誉教授の浜田宏一(77)ら金融緩和に積極的な有識者7人を官邸に招き昼食をとった。

 「日銀法改正が必要です」。物価目標の話はもう終わったとばかりに、提案が相次いだ。浜田は「僕は弱腰だが」と控えめに語るが、一部には総裁の解任権に関する言及もあった。今の日銀法に解任権はない。

 浜田とともに参与に就いた静岡県立大教授の本田悦朗(58)は政府・日銀の共同声明で「できるだけ早期」とした2%の物価上昇率の目標について「2年以内の結果で勝負だ」と力説する。本田は官邸の一室に陣取り日銀の出方に目を光らせる。

 日銀職員はどう思うか。40歳代の男性は「何年も前から『物価目標』でも何ら問題はないと思っていた」と語り、別の40歳代の男性は「円安・株高も含め人々は何かが変わるかもしれないと思い始めている。この勢いを利用すればデフレを本当に脱却できるかもしれない」と半信半疑で期待する。OBに比べ現役の敗北感は薄い。(敬称略)

2013年1月30日水曜日

重要メンテナンスやるつもり無し国・自治体は設計図を保管せず

インフラ詳細図 多くの自治体で保存せず
                                                                                                              1月31日 18時19分


インフラ詳細図 多くの自治体で保存せず
中央自動車道のトンネル事故をきっかけに、社会インフラの老朽化対策を強化する必要性が指摘されていますが、点検や補修にとって重要な橋やトンネルの詳細な図面が保存されていない自治体が多いことが、NHKの調査で分かりました。

去年12月に起きた中央自動車道笹子トンネルの天井板崩落事故では、40年ほど前の建設当時に作られた詳細な図面などの書類が保存されていなかったことが分かっています。
今月、NHKが全国67の都道府県と政令指定都市の道路部局を対象にアンケート調査を行った結果、▽87%に当たる58の自治体は「詳細図」と呼ばれる建設当時の図面が残っていない橋があると答え、▽88%に当たる59の自治体は、同様に「詳細図」がないトンネルがあると答えました。
「詳細図」がなくなった理由については、「庁舎や事務所の移転の際に紛失した」とか、「一定の保管期限が過ぎたので破棄した」という答えが多く、中には「なくなった理由が分からない」という自治体もありました。
「詳細図」は、コンクリートの中の鉄筋の配置など内部の構造が記録されているため、強度を確認したり、本格的な補修を行ったりする際に不可欠ですが、図が保存されていない自治体では、補修工事を行うために1000万円以上の費用をかけて改めて図面を作り直すケースもあるということです。
橋の維持管理に詳しい、東京都の元副参事の高木千太郎さんは「図が残っていないのは、これまで維持管理が軽視されてきたことの象徴で、このまま放置すれば適切な点検や補修ができず、事故にもつながりかねない。図の保存について早急に対策を取るべきだ」と指摘しています。

2013年1月29日火曜日

日本そして自民党へのクリントン国務長官の素晴らし~ぃ御土産

米国務長官、対中で珠玉の「置き土産」  編集委員 秋田浩之
                        日本経済新聞   2013/1/29 7:00

 こう言っては失礼かもしれないが、ここまでやるとは予想外だった。
「ヒラリー」こと、クリントン米国務長官である。
まもなく退任し、米外交の表舞台から身をひく。


関連記事
・1月19日日経夕刊3面「日米、対中連携を強化、米長官、尖閣防衛で踏み込む」
・1月20日日経朝刊2面「米、尖閣巡り中国に強い警告」
・1月20日朝日朝刊3面「日本、同盟強化へ歓迎」
・1月21日日経朝刊2面「中国、『強烈な不満表明』」

 そして退任の直前、尖閣諸島をめぐり、中国から激しく押し込まれる日本に、
クリントン長官はとっておきの置き土産を残した。

 「(尖閣諸島は)日本の施政下にあると認識している。
その施政権を一方的に害する、いかなる行為にも反対する」

 1月18日、訪米した岸田文雄外相との共同記者会見で、こう言い切ったのだ。
何の変哲もない言いぶりに思えるが、実はそうではない。
この発言に踏み切るまでには、オバマ政権内でかなりの議論があったのである。



■「ルビコン川」渡った米国

 なぜならこれによって、米国はこれまで以上に旗幟(きし)を鮮明にして、
尖閣問題で日本側を支持することになるからだ。
ある意味で、「ルビコン川」を渡ったといってもいい。なぜ、そうなるのか。

 米政府は尖閣諸島が日中のどちらに属するかについて、中立を崩していない。
そのうえで、米国は日米安全保障条約に基づき、尖閣の防衛義務を負っていると説明してきた。
その理屈はこうだ。

(1)尖閣は日本が実効支配し、自分の施政下に置いている。

(2)日米安保条約は「日本の施政下にある領域」に及ぶと規定されている。

(3)だから、尖閣は条約の適用条件を満たしている。

 ところが、これだと将来的に大きな問題が生じかねない。
中国は尖閣の領空や領海への揺さぶりをくり返している。
この結果、もし日本の実効支配(施政権)が崩れたら、尖閣は日米安保条約の対象から外れてしまう。
そんなふうにも解釈できるからだ。

 実際、安全保障政策にかかわった元米政府高官は、中国の狙いがそこにあると読む。

「日本による実効支配を崩せば、もはや尖閣には日米安保条約は適用されなくなる。
中国はこう思っている。だから尖閣への揺さぶりを強めているのだ」
 この分析が正しいとすれば、クリントン長官の1月18日発言の重みは大きい。
そうした中国の意図を完全に封じ込めることになるからだ。
彼女が言ったことを分かりやすく意訳すれば、次のようになる。

 尖閣の実効支配を中国が力ずくで奪おうとしても、米国は認めない。
仮にそういう展開になったとしても、米国は引き続き、日米安保条約を尖閣に適用する――。


 
会談後、共同記者会見する岸田外相とクリントン米国務長官(1月18日、ワシントンの米国務省)=共同
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会談後、共同記者会見する岸田外相とクリントン米国務長官(1月18日、ワシントンの米国務省)=共同

 
■事実上認めた日本への帰属

これは事実上、日本による尖閣の永続的な支配を認めているようなものだ。
尖閣が日中のどちらの領土か、米国はこれからも公式には中立を貫くだろう。
だが、クリントン発言によって、米国の立場はかなり日本寄りになったのである。

 「彼女は外交の実務を知らない。日米関係が軽んじられないか」。
クリントン長官が4年前に就任したとき、日本政府内からはこんな不安が聞かれた。

 クリントン長官の夫であるクリントン元大統領は在任中、
米中を「戦略的パートナー」と呼び、日ごとに中国に軸足を傾斜していった。
そんな経験から、彼女も同じ路線を走るのではないか。日本側にはそんな懸念もくすぶっていた。

 だが、良い意味で予想は大きく外れた。
彼女の在任中、オバマ政権は中国の台頭をにらみ、日米同盟を重視する姿勢を崩さなかった。

 「クリントン長官は当初、強硬な対中観を持っていたわけではなかった。
だが、2010年以降、中国の南シナ海での強硬ぶりを目の当たりにして、一気に見方が厳しくなった」

 彼女を知る米有力紙の外交記者はこう語る。
だとすれば、尖閣をめぐって強硬な態度に出ている中国は、墓穴を掘ったことになる。

 同国の習近平総書記は25日、訪中した公明党の山口那津男代表に会い、
日中首脳会談について「真剣に検討したい」と語った。このままでは中国の利益にならない。
習氏もそう感じ始めているのだろう。
 

2013年1月28日月曜日

第二次安倍内閣の初国会所信表明演説の要旨

安倍首相の所信表明演説の要旨
                           日本経済新聞  2013/1/28 13:49


 アルジェリア人質事件発生以来、総力を挙げて情報収集と人命救出に取り組んできたが、世界の最前線で活躍する何の罪もない日本人が犠牲になったことは痛恨の極みだ。

 無辜(むこ)の市民を巻き込んだ卑劣なテロ行為は、決して許されるものではなく、断固として非難する。事件の検証を行い、国民の生命・財産を守り抜く。国際社会と引き続き連携し、テロと闘い続ける。

■はじめに

 私はかつて病のために職を辞し、大きな政治的挫折を経験した人間だ。過去の反省を教訓として心に刻み、丁寧な対話を心がけながら真摯に国政運営に当たっていく。

 国家国民のために再び我が身をささげようとする私の決意の源は、深き憂国の念にある。

 デフレと円高から抜け出せない日本経済の危機。東日本大震災からの復興の危機。我が国固有の領土・領海・領空や主権に対する挑発が続く、外交・安全保障の危機。学力の低下が危惧される教育の危機。このまま、手をこまねいているわけにはいかない。

 額に汗して働けば必ず報われ、未来に夢と希望を抱くことができる、まっとうな社会を築いていこう。そのためには、日本の未来を脅かしている数々の危機を突破していかなければならない。

 内閣発足に当たって、私は全ての閣僚に「経済再生」「震災復興」「危機管理」に全力を挙げるよう一斉に指示した。危機の突破は、全閣僚が一丸となって取り組むべき仕事だ。危機を突破しようとする国家の確固たる意思を示すため、与野党の英知を結集させ、国力を最大限に発揮させよう。

■経済再生

 我が国にとって最大かつ喫緊の課題は、経済の再生だ。

 私が経済の再生に最もこだわるのは、長引くデフレや円高が、「頑張る人は報われる」という社会の基盤を根底から揺るがしているからだ。

 これまでの延長線上にある対応では、デフレや円高から抜け出すことはできない。だからこそ、これまでとは次元の違う大胆な政策パッケージを提示する。断固たる決意をもって、「強い経済」を取り戻していこう。

 既に、経済再生の司令塔として「日本経済再生本部」を設置し「経済財政諮問会議」も再起動させた。この布陣をフル回転させ、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略という「3本の矢」で経済再生を推し進める。

金融政策については、従来の政策枠組みを大胆に見直す共同声明を、日銀との間で取りまとめた。日銀において2%の物価安定目標をできるだけ早期に実現することを含め、政府と日銀がそれぞれの責任で共同声明を実行していくことが重要であり、一層の緊密な連携を図っていく。
 先にまとめた緊急経済対策で景気を下支えし、成長力を強化する。補正予算はその裏付けとなる。「復興・防災対策」「成長による富の創出」「暮らしの安心・地域活性化」という3つを重点分野として、大胆な予算措置を講じる。速やかに成立させ、実行に移せるよう各党各会派の理解と協力をお願いする。

 他方、財政出動をいつまでも続けるわけにはいかない。民間の投資と消費が持続的に拡大する成長戦略を策定し、実行する。

 イノベーションと制度改革は、社会的課題の解決に結びつくことによって暮らしに新しい価値をもたらし、経済再生の原動力となる。最も大切なのは、未知の領域に果敢に挑戦していく精神だ。今こそ世界一を目指していこう。

 世界中から投資や人材をひきつけ、全ての人々が生きがいを感じ、何度でもチャンスを与えられる社会。男女が共に仕事と子育てを容易に両立できる社会。中小企業・小規模事業者が躍動し、農山漁村の豊かな資源が成長の糧となる、地域の魅力があふれる社会。そうした「あるべき社会像」を、確かな成長戦略に結びつけることで、必ずや「強い経済」を取り戻す。同時に、中長期の財政健全化に向けてプライマリーバランス(基礎的財政収支)の黒字化を目指す。

■震災復興

 復興という言葉を唱えるだけでは何も変わらない。まずは政府の体制を大転換する。これまでの行政の縦割りを排し、復興庁がワンストップで要望を吸い上げ、現場主義を貫く。今般の補正予算でも、思い切った予算措置を講じ、被災地の復興と福島の再生を必ずや加速する。

■外交・安全保障

 外交・安全保障についても、抜本的な立て直しが急務だ。

 何よりもその基軸となる日米同盟を一層強化する。2月第3週に予定されている日米首脳会談で、緊密な日米同盟の復活を内外に示す。同時に米軍普天間基地の移設をはじめとする沖縄の負担の軽減に全力で取り組む。

 大きく成長していくアジア太平洋地域で、我が国は、経済のみならず、安全保障や文化・人的交流など様々な分野で、先導役として貢献を続けていく。

 今年は日・東南アジア諸国連合(ASEAN)友好協力40周年に当たる。2015年の共同体構築に向けて、成長センターとして発展を続けるASEAN諸国との関係を強化していくことは、地域の平和と繁栄にとって不可欠であり、日本の国益でもある。

 国境離島の適切な振興・管理、警戒警備の強化に万全を尽くし、国民の生命・財産と領土・領海・領空は、断固として守り抜いていくことを宣言する。

 アルジェリア人質事件は、国家としての危機管理の重要性について改めて警鐘を鳴らすものだった。テロやサイバー攻撃、大規模災害、重大事故などの危機管理対応について、24時間、365日体制で、さらなる緊張感を持って対処する。

 北朝鮮に「対話と圧力」の方針を貫き、全ての拉致被害者の安全確保及び即時帰国、拉致に関する真相究明、拉致実行犯の引き渡しの3点に向けて全力を尽くす。

■おわりに

 我が国が直面する最大の危機は、日本人が自信を失ってしまったことだ。日本経済の状況は深刻で、今日明日で解決できるような簡単な問題ではない。しかし、「自らの力で成長していこう」という気概を失ってしまっては、個人も、国家も明るい将来を切りひらくことはできない。

 何よりも、自らへの誇りと自信を取り戻そう。私たちも、日本も、自らの中に眠っている新しい力を見いだして、成長していくことができるはずだ。危機を突破し、未来を切りひらく覚悟を共に分かち合おう。「強い日本」を創るのは、私たち自身だ。

 

2013年1月27日日曜日

バカボケ民主党の思考は維新の選挙準備が整わないうちに解散

もう内幕をバクロした藤村前官房長官のどうしようもない軽さ

       
                    2013年1月29日(火)7時0分配信 日刊ゲンダイ
 
 毎日新聞が24~25日の2回に分けて、藤村修前官房長官(63)の独占インタビューを掲載したが、
その内容には驚いてしまう。何にって、民主党政権がナ~ンにも考えていなかったことだ。


 例えば、野田前首相が自爆解散を決めた昨年末の衆院選。
負けると分かって解散したのは“謎”とされてきたが、
 藤村氏は、〈維新の選挙準備が整わないうちに解散するということだった〉とサラリ。
判断した時期については〈昨年11月2日だ。
首相公邸でエネルギー問題の閣僚懇談会をやって、
岡田克也副総理と私が残って野田首相と話した〉と暴露した。
当初、想定したのは12月9日投開票だったが、
党首討論で解散を打ち出す案に合わせて修正し、16日投開票になったという。
要するに、確固たる戦略は何もなく、出たとこ勝負だったわけだ。
これじゃあ、落選議員は浮かばれないが、
それ以上に、つい2カ月前まで政権中枢にいた前官房長官が少しも悪びれる様子もなく
舞台裏をバラす国は世界でも例がないだろう。
思いつきで解散を決めた野田前首相もバカだが、女房役も大バカだった。
外交評論家の天木直人氏はこう言う。



「本来は墓場まで持っていく話です。
下野し、議員を落選した身とはいえ、政治家としての意識が希薄過ぎる。
民主党は一時期、(生活代表の)小沢氏だけが不満分子のように報じられていたが、
インタビューを読む限り、政権、党内ともにバラバラで体を成していなかったことがよく分かりました」



 ちなみにインタビューの中では、
自民党の麻生副総理が度々、藤村氏に解散を迫ったことが明かされている。
なぜ、麻生が……と思ったら、「2人は日伯(ブラジル)議連で意気投合し、
親しくなった間柄」(関係者)なのだそうだ。



「谷垣禎一・前自民党総裁のシリを叩き、主戦論をたきつけていたのが麻生副総理です。
政権内で今、デカイ顔をしているのも『解散はオレが仕掛けた』と思っているからでしょう」
                                            (永田町事情通)



 あの時期に、麻生と藤村が解散をめぐってやりとりしていたなんて、マンガだ。
ますます、政治に絶望的になる話である。

(日刊ゲンダイ2013年1月26日掲載)

2013年1月26日土曜日

大気汚染の中国

大気汚染悩める中国、深刻度示す「鼻毛地図」
                                                      2013/1/31 7:00      日本経済新聞

 中国で現在、「鼻毛地図」の名前で呼ばれるインターネットのサイトが話題となっている。地図上のアジア太平洋地域の都市をクリックすると、6段階ある大気汚染の度合いを鼻毛の長さで表示するという仕組みだ。




都市の大気汚染の度合いを鼻毛の長さ(画面右側)で示すサイト「鼻毛地図」
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都市の大気汚染の度合いを鼻毛の長さ(画面右側)で示すサイト「鼻毛地図」

 中国では10日から有害物質を含む濃霧が各地で断続的に発生、人々は深刻な大気汚染に悩まされている。健康被害を与える恐れがある「PM2.5」と呼ばれる微粒子状の物質の大気中濃度が、北京市では12日に一時、1立方メートル当たり993マイクログラムに達した。近くの景色もかすむほど視界はきかず、マスクをして外出する人が相次いだ。ちなみに日本の基準では同35マイクログラム以下と定められている。

 中国環境保護省によれば、ここ最近発生した濃霧は、中国の31ある省・直轄市・自治区のうち17の地域に及んだ。国土の面積の実に約4分の1を覆い、人口の半分近い約6億人が影響を受けている。収まる気配のない汚染濃霧に、鼻毛地図を見て「自分の街は今日も鼻毛がボーボーだよ」と苦笑いするしかない状態だ。

 鼻毛地図サイトは、アジア・太平洋地域の都市の大気汚染防止を目的とする情報ネットワーク「クリーン・エア・イニシアチブ・フォー・アジアン・シティーズ」(クリーン・エア・アジア)が運営している。鼻毛の長さ以外に、都市の大気汚染の度合いに応じて6つに色分けして表示している。例えば29日の状況を見ると、中国の大半の都市は汚染の度合いのひどいオレンジ色で覆われ、一部では最も汚染がひどいことを示す赤もある。

 中国の大気汚染は、以前から問題視されていた。経済の急速な発展に伴い、工場や自動車からの有害物質の排出量は年々増加傾向にあるからだ。こうした中、今冬は例年になく寒さが厳しく、暖房用石炭の使用に伴う排気が増加。そこに風が弱く、有害物質を含んだ空気が拡散しないという気象条件が加わり、汚染がさらに悪化した。

 事態を重く見た各地の地方政府は、有害物質の排出を一時的に制限する緊急対応策を実施した。北京市は11日から建材や化学などの工場を対象に操業制限を実施。58カ所の工場が生産を完全に停止したほか、41カ所の工場に有害物質の排出量の30%削減を義務付けた。また公用車の30%を使用禁止にした。

 北京市に隣接する河北省でも石家荘、保定など各市が13~14日に相次いで対策を実施。石家荘は工場の操業制限などに加え、市内700カ所の建設現場の工事を停止させ、動きは中国全土に広がった。

しかし、その場しのぎの対応策をあざ笑うかのように汚染濃霧はその後も発生し続けた。北京市では28日にも6段階の大気汚染指数で最悪のレベルを記録した。渤海と黄海に面しており、比較的空気がきれいだとされる大連市(遼寧省)も28日はPM2.5が同200マイクログラムを超え、地元の日本人学校が児童の健康に配慮して屋外での活動を自粛した。


濃霧で太陽もかすんでしか見えない(中国・遼寧省)
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濃霧で太陽もかすんでしか見えない(中国・遼寧省)

 対策の効果が上がらないことに業を煮やしたのか、北京市は28日、「公用車使用30%削減」の徹底を改めて指示を出した。対策をとっているかどうか管理・監督を強化し、違反した場合は責任を追及するとしている。

 中国は以前から環境保護の重要性をことあるごとに訴えてきた。昨年11月に開かれた第18回共産党大会での活動報告でも「美麗中国(美しい中国)」との目標を掲げ、環境保護の重視の姿勢を強調した。

 しかし掛け声倒れの感は否めない。大気汚染の関連法規の整備が進んでいないことが象徴的だ。中国紙の経済参考報(電子版)によれば、大気汚染物質の削減を目的とする「大気汚染防治法」の修正案の草案を巡り、環境保護省が2010年1月に国務院法制弁公室に提出したにもかかわらず、3年たった今でも審議中で法制化されていない。草案では硫黄分の少ない高品質な石炭の使用促進や汚染物質を削減する脱硫装置の導入など、汚染防止への取り組みが触れられているが、現状では絵に描いた餅となっている。

 根本的な解決に向けての道のりはなお遠い。24~25日に開催された全国環境保護工作会議で、周生賢・環境保護相は大気汚染対策のロードマップを示した。大気中の汚染物質の量が環境基準を上回る割合が15%より低い都市については15年までに基準に収まるように、15~30%上回る都市については20年までに基準に収まるように努力する。汚染が深刻な基準を30%以上上回る都市については中長期計画を作成、15年以上先となる30年までに、すべての都市で大気汚染指数で下から2番目のレベルに収まるようにするとしている。

 鼻毛地図に表示されている長い鼻毛は、問題が根本的に解決されるまでさらに長い時間がかかることも象徴しているといえそうだ。

2013年1月24日木曜日

首相執念 物価目標巡り暗闘1カ月

首相執念 折れた日銀
物価目標巡り暗闘1カ月 期限、あいまい決着
                                                    2013/1/23 3:30

 政府と日銀は22日、2%の物価上昇率目標を盛り込んだ共同声明を公表し、新たな金融政策へ一歩踏み込んだ。慎重姿勢を崩さなかった日銀を動かしたのは、衆院選前からデフレ脱却に向けた「レジームチェンジ(体制転換)」を求め続けた安倍晋三首相の執念だった。世界的に関心を集める政策実験が動き出す形だが、目標達成のハードルは高い。
記者会見する白川日銀総裁=22日
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記者会見する白川日銀総裁=22日
記者の質問に答える安倍首相=22日
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記者の質問に答える安倍首相=22日
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 「画期的な文書だ」。22日午後、共同声明の報告に首相官邸を訪れた日銀の白川方明総裁に、安倍首相はねぎらいの言葉をかけた。だが政府・日銀の連携強化に向けた文書が「共同声明」として仕上がるまでの約1カ月、首相と日銀は物価目標を巡って暗闘を続けた。

「劇薬」の解任権


 「物価目標が達成できなければ、日銀総裁を解任できるようにすべきだ」。15日昼、安倍首相が麻生太郎財務相、甘利明経済財政・再生相らを呼んで開いた勉強会。首相のブレーンの一人が配った政府・日銀の共同声明の試案には、日銀にとって「劇薬」の総裁解任権が盛り込まれていた。

 共同声明で論点となったのは、物価目標2%の達成期限と、達成できなかった場合の責任の所在。「日銀と政府の共同責任」というのが、財務省・内閣府と日銀の事務方が当初想定した落としどころだった。

 「デフレ脱却は金融緩和だけでは無理」「潜在成長力引き上げに向けた政府の努力も不可欠」というのが白川総裁の持論。物価安定の「めど」として掲げてきた1%の物価目標を2%に引き上げる案はのんだが、日銀だけが責任を負う形は避けようと粘った。

 9日の経済財政諮問会議。「日銀は責任をもってやってください」。首相は席上の白川総裁に迫った。同総裁が政府に成長力強化を求める持論をぶった直後の不規則発言。空気は凍り、2%の物価上昇率が「日銀の目標」として明確に位置付けられる方向性が固まった。

 「長期、中長期はあり得ない」。目標達成の期限でも首相は持論を押し通した。着地点は「できるだけ早期に」。前倒しでの実現を求める首相側と、期限を区切られて過度な緩和を迫られる事態を懸念する日銀が折り合ったのは「スピード感を示す」(政府関係者)表現だった。目標達成の期限や、達成できなかった場合の責任論は曖昧なまま決着した。

委員2人「反対」


 衆院選で圧勝した首相の勢いに折れた日銀。しこりは残る。「いまの物価がマイナス圏なのに、いきなり2%の物価目標を掲げても中央銀行の信認を失うだけだ」。行内の異論はこの一点に集約される。

 「まずは物価上昇率1%を着実に目指すべきだ」と訴えてきた木内登英、佐藤健裕両審議委員は、22日の政策決定会合で2%目標の導入にそろって反対票を投じた。今後、2%の物価目標を目指した金融政策運営に、民間エコノミスト出身の両審議委員は異論を唱え続ける可能性が高い。

 「日銀法改正と今年4月の総裁人事がちらついた」。日銀幹部は苦渋の表情を浮かべる。日銀が守り通したのは日銀法が掲げる「金融政策の独立性」だ。日銀法改正の可能性について22日の記者会見で問われた菅義偉官房長官は「共同声明を見る限り、そういう必要はなくなってきている」と理解を示した。

 安倍首相や首相のブレーンの浜田宏一・米エール大学名誉教授(内閣官房参与)が主張していた雇用の安定を日銀の政策目標に含める案もひとまず見送られた。

 だが白川総裁が「相当思い切った努力が必要」と認める通り、物価上昇率2%という目標達成のハードルは高い。実現の見通しがつかなければ、日銀への風圧が強まる構図は安倍政権が続く限り、変わりそうにない。

2013年1月23日水曜日

日本の将来が危なぃ 日本を潰す日教組と民主党

安倍政権方針に警戒の声…日教組、教研集会開幕
    
                           2013年1月26日(土)12時56分配信 読売新聞
日本教職員組合(日教組)の教育研究全国集会(教研集会)が26日、佐賀市内で開幕した。
自民党に政権が戻って初めての開催で、全体集会では、日教組の志向と異なる方向に安倍首相が推し進める教育改革を警戒する声が相次いだ。
全体集会で、あいさつした日教組の加藤良輔委員長は、自民党政権の復活について、「教育における民意とは異なるもの」と述べ、全国学力テストを全員参加方式に戻す方針など「競争原理の導入は、子供たちの育ちを阻害する」と批判。民主党政権の目玉政策の一つだった高校授業料の実質無償化は「学びたい子供を支えてきた」とし、自民党政権にも継続実施のうえ、朝鮮学校へも適用するよう求めた。
基調報告を行った日教組の岡本泰良書記長も、安倍首相が教育再生実行会議を設けるなど「民主党政権での教育政策を根本的に見直そうとしている」と警戒感をにじませた。学力テストの全員参加方式などは「序列化、過度の競争に拍車がかかることが危惧される」と抜本的見直しを求めた。

教師と教育委員会の無能を隠すための
                                       「学力テスト潰し」に躍起

民主党政権で権力を握った日教組27万人は

                   教育より政治活動を優先する利権集団だ

                      (SAPIO 2012年8月22・29日号掲載) 2012年9月6日(木)配信

森口朗(教育評論家)
 近年の日教組には、若い教員はあまり加入せず、組織率は右肩下がりで、その力は年々衰えているそんな解説を耳にすることが多いかもしれない。確かに数字だけを見ればそうだ。しかし、日教組はいまだに選挙で集票マシンとしてフル稼働し、その力で政治の意思決定に大きな影響を及ぼすのだ。

 日教組の政治力の源泉は、さまざまな選挙にあたって多数の勤勉な運動員を支持政党(現在でいえば民主党)や支持候補に提供するところにある。

 公職選挙法では、選挙期間中に駅前のビラ配りなどをする運動員は、ボランティアでなければならないと定められている。公明党や共産党のように、“宗教的”な支持母体のない民主党の政治家の選挙では、この運動員の確保が重要な課題となる。

 民主党の選挙は「労働組合丸抱え」とよく指摘される。官公労がその代表だが、日教組以外の労組は組織率こそ高いものの、加入をお付き合い程度に考えている者が多く、集会やビラ配りにそれほど熱心ではない。つまり、“稼働率”は低い。

 一方、かつては80%以上を誇った日教組の組織率は26%(昨年10月時点)と低くなったものの、教員たちは選挙運動となると驚くほど生真面目でよく働く。

 国会議員や首長、市町村会議員の選挙では、組合本部から各学校にいる役員クラスの組合員に対し、民主党と社民党が推薦する候補を応援するように指示があり、教職員の人数を超える大量のビラが送られてくる。組合員は同僚にビラを渡すだけでなく、割り当てで決められた駅前でのビラまきをし、投票依頼電話をかけまくるといった具合だ。

 確固たる支持基盤を持たない民主党にとって、これほどありがたいものはない。

自民党政権時代の
「三師会」に匹敵する影響力


 政治活動は組合員の奉仕だけに留まらない。

 政権交代が起きた衆院選の翌10年、民主党の小林千代美前代議士の選対幹部が政治資金規正法違反で逮捕され、小林氏が辞職したことは大きく報じられたからご記憶の読者も多いだろう。小林氏に違法献金していたのは、日教組傘下の北海道教職員組合(北教組)であり、その委員長代理は小林氏の選対委員長だった。

 参院民主党のドンと呼ばれる輿石東・党幹事長は日教組の下部組織でも、特に高い組織率を誇る山梨県教組の執行委員長だったことで知られ、党内には日教組出身者や選挙時に支援を受ける議員は山ほどいる。

 日教組そのものは、巷間言われている通り組織率も組合員数も下降の一途を辿っている。私は、現在の教育現場で起きている問題の根本原因が日教組だけにあるとは考えない。むしろ、「子供に競争を強いる学力テスト=悪」といった“日教組的な思想”が、教育委員会を中心に蔓延していることが問題と考える。

 しかし、弱体化する日教組が、政策決定への大きな影響力を誇っていることだけは見逃せない。問題を深刻にしたのは、09年の政権交代によって民主党が政権与党となったことである。

 日教組の組合員は30万人を割り込み約27万人となったが、「野党の側の27万人」と「与党の側の27万人」では影響力は全く異なる。約30万人と言えば、かつて自民党を支えた日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師会(いわゆる三師会)の合計人数と同程度の規模となる。与党時代の自民党の医療行政に三師会が与えた影響に匹敵する力を、民主党政権下で日教組が握ったわけである。

 本業であるはずの教育を捨て置き、政治活動に邁進する日教組が政治家を使って何を目論んでいるのか。それは、政権交代後の民主党政権下で、教育行政がどう変えられてきたのかを見ればわかる。

 日教組が実現させた政策の象徴が「全国学力テスト」の“骨抜き”だろう。

「学力低下」に対処すべく、自民党政権は07年に「全国学力テスト」を復活させた。ところが、当初予定された悉皆調査(全員が受験する調査)は、民主党政権によって、サンプリング調査に変更されてしまった。

 全員がテストを受け、自治体ごとや学校別、クラス別の成績データを公表すれば、生徒・保護者の学校選択の多様化、不適格教員の把握に繋がると期待された。しかし、「学力の把握はサンプリングで十分」という日教組の主張に沿うものに政策が歪められてしまった。

 学校やクラスごとの成績が明らかになって困るのは、指導力不足を知られたくない教員、学校経営や行政管理を問われたくない校長や教育委員会の役人である。つまり、自分たちの無能を暴露するような政策は許せないのだ。

 また、児童生徒の学力低下と同様に喫緊の課題となっている「教員の指導力低下」にも同じことが起きた。06年に安倍政権が不適格教員の排除を目的に創設を掲げ、その後の自公政権で導入された教員免許更新制度は、政権交代とともに見直しが打ち出され、“お蔵入り”にされる方向だ。

 教員から教育委員会までが、日教組的な思想を共有する巨大な一つの利権集団化し、その利権を死守するために政治家に圧力をかけるのが日教組という構図である。

 大津市のいじめ自殺問題では、いじめと自殺の因果関係を認めようとしない学校や教育委員会に国民の批判が集中するなか、輿石氏が7月19日の会見で、「学校が悪い、先生が悪い、教育委員会が悪い、親が悪いと言っている場合じゃない」と発言した。「誰の責任も追及しませんよ」というメッセージである。こういった人物が政権中枢にいることも、政治集団としての日教組があげた“成果”の一つだと言えるだろう。

 また、日教組の政治力は、組合や教委に批判的な改革を断行しようとする候補にネガティブ・キャンペーンを張る形でも機能する。昨年11月の大阪市長選で改革を掲げた橋下徹氏の対立候補を、袂を分かったはずの日教組と全教(日教組から分裂した共産党系の教員組合)が揃って支援していたのはその典型である。

「戦中教育への反動」を
今でも引きずっている


 教員たちは、なぜ本業であるはずの教育よりも、政治活動に熱を上げるようになってしまったのか。その答えの一つは歴史的な経緯にある。

 日教組が誕生したのは1947年。戦中教育の反動で、「子供を戦場に送るな」という思いは真面目な教員ならば誰しも持っていた。そこに早い段階から左翼が入り込み、共産党や社会党が「反日教育」を日教組思想として日本の隅々まで行き渡らせた。つまり、反権力の運動体としての役割が早い時期に定着してしまい、それを引きずっているわけである。

 今では、「日の丸・君が代強制反対」という象徴的なイデオロギー介入は、当の日教組ですら表向きは否定するほど影を潜めたが、それに代わる形で「弱者=正義」という悪しき平等主義が教育現場に蔓延してしまった。だから、子供に競争を強いる「学力テスト」は悪であり、いじめが起きれば、「加害者だって弱者」という倒錯した奇麗事がまかり通る。

 そうした日教組思想に異を唱え、保護者ややる気のある自治体の首長が教育改革に取り組んでも、制度上、教育委員会が首を縦に振らない限り、何も変えることができない。自治体にもよるが、教育委員会には日教組の元校長や教師が大勢入り込んでいるし、政権与党の座には日教組に支えられた民主党がいる。

 来年夏までに総選挙が行なわれるわけだが、権力の側に回った日教組が政治力を駆使してこれまで何をしたかを検証し、厳しく判断しなければならない。

朝日新聞「中山前国交相批判」の詐術を暴く

やっぱりあった学力テストと日教組の“相関関係”

                                (SAPIO 2008年11月26日号掲載) 2008年12月1日(月)配信
 
高崎経済大学教授、日本教育再生機構理事長 八木秀次
「教育ニュース」が連日のように新聞・テレビを賑わし、数だけでなく、その質までもが我々世代と大きく変わり果ててしまっている。こんな教育に誰がしたのか。物議を醸した中山前国交相の「日教組発言」から問い直す。
 日教組やそのシンパのメディアは火消しに必死だ。しかし一旦放たれた火は騒げば騒ぐほど広がり、燎原の火となって日教組やそれを有力支持母体とする民主党を焼き払っていくだろう。一連の“失言”で国土交通大臣を辞任した中山成彬衆議院議員の「日教組発言」のことだが、同時に行なった「成田ゴネ得」「単一民族」発言は撤回し謝罪したものの、「日教組は教育の癌」「日教組をぶっ壊せ」などの発言に関しては撤回するつもりはなく、むしろ「(日教組をぶっ壊す)運動の先頭に立ちたい」と中山氏のボルテージは上がるばかりだ。

中でも注目されたのは「日教組の強いところは学力が低い」という発言だ。中山氏は大分県の教員不正採用問題に言及して「大分県教育委員会の体たらくなんて日教組(が原因)ですよ。日教組の子供なんて成績が悪くても先生になる。だから大分県の学力は低い」と発言し、文部科学大臣時代に復活させた全国学力テストについても「私がなぜ学力テストを提唱したかといえば、日教組の強いところは学力が低いんじゃないかと思ったから」と述べた。実はこれらの発言は一々正しい。
実際、大分の事件でわが子を不正採用させた校長らは、いずれも日教組出身であったし、教育委員会で現場の教員を指導する「指導主事」の試験を受けるには「組合の推薦が必要」など県教委と組合との癒着関係が長年続いていたことや、不正採用には教職員組合の働きかけもあったことは、県教委の教育行政改革プロジェクトチームが公表した『調査結果報告書~大分県教員採用選考試験等に係る贈収賄事件を受けて~』にも明記されている。大分の全国学力テストの順位は第40位だ。
 しかし「日教組の強いところは学力が低い」との発言はよほど関係者の癇に障ったのか、早々に『朝日新聞』は中山氏の「現にそうだよ。調べてごらん」との発言を逆手にとって「中山説『日教組強いと学力低い』 大臣ズレてます 調べたら無関係」との大見出しを付けた記事(9月27日付)を掲載した。

「データをたどってみると、成績トップの秋田の日教組の小中学校組織率が5割超で全国平均(34・1%)を大きく超えるなど、全国的な相関関係はうかがえない」というものだが、論点をずらした意図的な記事だ。

 中山氏は日教組の「強さ」と学力との相関関係について言及したのだが、この記事は「強さ」を勝手に組織率に置き換え、相関関係はうかがえないとする。しかし記事が「『中山説』に合わない」とする、組織率は高く学力テストの正答率も高い秋田・福井・富山・静岡・愛知の各県の「日教組」は、日教組本部が展開するような階級闘争的あるいは反国家的な姿勢とは無縁の、穏健で互助会的な組織として知られている。

組織率では見えない日教組の強さ


 例えば学力テスト第1位の秋田は昭和40年代に組合員の中から教育正常化運動が起こり、以後はイデオロギー色の薄い活動に終始し、中央本部の否定する道徳教育も充実しているし、国旗国歌についても学習指導要領に沿ってきちんと指導している。第2位の福井も組織率が群を抜いて高い(90%)のは校長・教頭といった管理職も加入しているからだが、管理職と教員との対立もなく、以前から独自の学力調査を毎年実施している。平成16~18年の3年間で国旗国歌に反対して処分された教員は全国で計247人に上るが、両県は一人もいない。

 あまり知られていないが、日教組は各都道府県組織の連合体だ。中央本部は依然過激なイデオロギー色の強い闘争的な姿勢を示すが、県によっては穏健な保守色の強いところもある。『朝日』が「『中山説』に合わない」とする組織率も高く学力も高い各県はその代表例の「弱い」県だ。

 記事が意図的なのは同じく「『中山説』に合わない」として組織率が低く学力テストの成績も振るわない道府県として大阪と高知を挙げていることだ。第1に高知は学力テストの結果が第46位と振るわなかったが、平成元年に日教組から分かれた共産党系の全教(全日本教職員組合)の拠点地域として知られている。同様に和歌山も全教の拠点だが、学力テストは第41位。中山氏が全教を含めて左翼色の強い教職員組合の代名詞として「日教組」と言っているのであれば、そのような組合が強いところは「学力が低い」。
第2に大阪は日教組の組織率は3割弱だが、全教も強い。その大阪では中山発言は「本質を突いている」と発言した橋下徹知事と府民が教育問題について意見を交わす討論会で、知事が発言するたびに現場教員らからの野次と怒号がやまず、会場は終始騒然とした雰囲気だったという。
 中山氏も「大阪の日教組は強いんですよ。私が文部科学大臣のとき、大阪の学校訪問に行きたいといったけれど、どこも受け入れてくれなかった。日教組が反対してね。ひどいのは、そのあと僕は校長先生に個人的に会ったんですよ。みんなもうくたびれ果ててるんですね。毎日、日教組に突き上げられて大変だと。だから校長先生のなり手がいないんだって」と発言している(『産経新聞』電子版10月1日付)。要は「強さ」とは組織率のことではない。質の問題、闘争的な人々がどれだけ全体に影響力を持っているのかということだ。大阪の学力テスト順位は第44位だ。

 ご覧の通り、『朝日』の記事は何の説得力もない。少し検証してみるだけで「日教組の強いところは学力が低い」という中山発言は全く正しいことが分かってくる。橋下大阪府知事は先の討論会で教員らの野次がやまない中で「中山前国交相の発言こそ、まさに正しいじゃないですか」と発言している。国政レベルでも町村信孝前官房長官、森喜朗元首相、塩谷立文科相、森山眞弓元文相など中山発言支持の声が相次いでいる。

相関関係が現われる3つの理由


 日教組中央本部は『朝日』の記事に呼応するかのように9月28日、岡本泰良書記長名で「日教組に対する誤った偏見に基づく誹謗・中傷発言は、断じて容認できない」「『日教組の強いところは学力が低い』発言は何の根拠もなく、学力調査結果からも相関関係はないことは、明確になっている」「日教組は、改めて一連の発言に対して強く抗議するとともに、発言の撤回・謝罪を強く求める」という抗議文を発表している。やはり「日教組の強いところは学力が低い」との中山発言にはよほど困ったと見える。全国順位という数字となって表われたがゆえにそこに相関関係はないと必死で火消しに努める様が読み取れる。

 しかし「日教組(日教組・全教)」の「強さ」と学力に相関関係があることは多くの国民が肌で感じていたことだ。それが学力テストの順位となって表われたから彼らはあわてているのだ。日教組は学力テストの全国悉皆調査はやめ、サンプル調査にするよう求めている。あるいは市町村別、学校別の結果公表をやめさせるべく教育委員会に圧力を掛けている。直接に組合活動と学力との間に相関関係があることが明らかにされることを恐れてのことだ。
組合活動と学力との間に相関関係があるのは、第1に自らの勤労条件の改善などに懸命では子供たちに目が向かなくなるからだ。第2に特定のイデオロギーや政治的主張を子供たちに吹き込むのに一生懸命で本当に必要な「教育」を行なわなくなるからだ。日教組本部が発行する『日教組 政策制度要求と提言 2007~2008年度版』(07年3月)には在日米軍基地の整理・縮小・撤去、自衛隊の縮小・改編、定住外国人の地方参政権、「人権侵害救済法」の制定、ジェンダーフリー、夫婦別姓、性教育の充実などありとあらゆる左翼市民団体の主張が掲載されている。これらは当然、学校現場でもあらゆる機会を捉えて子供たちに吹き込まれている。反面、日本国民として必要な基礎学力や規範意識を身につけることが疎かにされる。学力が低くなるのも当然だ。第3に日教組が年来主張し今では文部科学省も取り入れている「子ども中心主義」という教育観に立脚するため、子供の自主性・主体性・個性ばかりが尊重され、教育に不可欠な強制を排除する。同様に競争を排除し、進学指導でさえ「選別」「差別」に当たるなどと否定してきたからだ。相関関係がないと考える方が不自然だろう。
 次期総選挙は政権選択選挙と言われる。日教組は民主党の有力支持母体だ。選挙互助会とも称される民主党には右から左までの多様な議員がいる。仮に保守系候補者に投票しても、民主党政権になれば、結果として日教組は力を持つ。候補者の資質の問題ではないということだ。このあたりをも考慮して投票行動をとるべきだろう。そのためにも日教組問題を含む教育問題を選挙の争点にするべきだ。

2013年1月22日火曜日

「政府・日銀」 共同声明の全文

「政府・日銀一体で」 共同声明の全文

            日経     2013/1/22 14:03

 デフレからの早期脱却と物価安定の下での持続的な経済成長の実現に向け、
以下のとおり、政府及び日銀の政策連携を強化し、一体となって取り組む。

 、日銀は、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することを理念として
金融政策を運営するとともに、金融システムの安定確保を図る責務を負っている。
その際、物価は短期的には様々な要因から影響を受けることを踏まえ、
持続可能な物価の安定の実現を目指している。

 日銀は、今後、日本経済の競争力と成長力の強化に向けた
幅広い主体の取り組みの進展に伴い
持続可能な物価の安定と整合的な物価上昇率が高まっていくと認識している。
この認識に立って、日銀は、物価安定の目標を消費者物価の前年比上昇率で2%とする。

 日銀は、上記の物価安定の目標の下、金融緩和を推進し、
これをできるだけ早期に実現することを目指す。
その際、日銀は、金融政策の効果波及には相応の時間を要することを踏まえ、
金融面での不均衡の蓄積を含めたリスク要因を点検し、
経済の持続的な成長を確保する観点から、問題が生じていないかどうかを確認していく。

 、政府は、我が国経済の再生のため、機動的なマクロ経済政策運営に努めるとともに、
日本経済再生本部の下、
革新的研究開発への集中投入、イノベーション基盤の強化、大胆な規制・制度改革、
税制の活用など思い切った政策を総動員し、経済構造の変革を図るなど、
日本経済の競争力と成長力の強化に向けた取り組みを具体化し、これを強力に推進する。

 また、政府は、日銀との連携強化にあたり、財政運営に対する信認を確保する観点から、
持続可能な財政構造を確立するための取り組みを着実に推進する。

 、経済財政諮問会議は、金融政策を含むマクロ経済政策運営の状況、
その下での物価安定の目標に照らした物価の現状と今後の見通し、
雇用情勢を含む経済・財政状況、経済構造改革の取り組み状況などについて、
定期的に検証を行うものとする。

2013年1月21日月曜日

円安で問われる安倍政権の品格

円安でデフレを輸出する日本、問われる安倍政権の品格
                                                                                   日本経済新聞   2013/1/21 7:46

これまで中国は、人民銀行が市場の人民元買いを吸収することで人為的に自国通貨を安めに誘導し「為替操作国」と非難されてきた。中国は米国の製造業を空洞化することで「失業」を輸出している、ともいわれた。そして今、日本が「デフレを輸出する国」「隣国の雇用を奪いデフレ脱却を図る国」として国際社会から「イエローカード」を突き付けられている。
 「為替政策」とは往々にして「為替操作」と紙一重の危うさを持つ。特に、政権要人の口先介入で「石破ライン85~90円」とか「浜田ライン95~100円」などを市場にあけすけに意識させる「円安政策」は、その政策の品格を問われる。

 なりふりかまわず全力でデフレ脱却に動く政権の言動に対し、選挙民は半信半疑ながらも心地良い響きを感じるかもしれない。しかし、環太平洋経済連携協定(TPP)参加は逡巡(しゅんじゅん)し、隣国を踏み台にしても国益を優先、となると国際的反発を誘発する。本欄1月15日付「円90円秒読み 鍵握る米国発リスクオフ」に「世界モーターショーが開催されているデトロイトでは日本勢の巻き返し現象が顕著だ。ドル高が続けば、米国内産業もだまってはいまい」と書いたが、早くも自動車ビッグ3で構成する米自動車貿易政策評議会(AAPC)が、円高修正を目指す安倍政権を「近隣窮乏化策」と批判。対抗措置を大統領に要請した。

 1ドル=90円程度までは、世界も「落ち目とはいえ世界第三位の経済大国が元気になってもらわないとグローバル経済も困る」との認識で反則切符は切られなかった。しかし、一気に95~100円誘導に突進すれば、国際ルールで「オフサイド」と認定されよう。

 そもそも、国内ではデフレといわれるが、アジアの中で、日本はダントツの生活水準を維持している。この経済的繁栄が様々な規制の上に成り立っていることは否定できない。それらの規制を撤廃することは選挙民に痛みを背負わすので、政治家は先送りする。

 本来は、同じルールのもと、同じ土俵の上で競うべきだ。自国が比較優位を持つ産業に特化し、比較劣位産業は優位を持つ国に譲る互譲の精神こそが国際貿易の基本である。さすれば、1プラス1が3にもなるのだ。パイの取り合いでデフレを輸出しあうのではなく、パイを大きくする世界経済成長モデルとなる。しかし、貿易自由化も過渡期には短期的失業を生み、選挙民に痛みを与える。

 そこで、選挙民が痛みを感じにくい、(無制限?)量的緩和などの金融政策と巨額の財政出動、そして円安誘導がデフレ脱却政策第1弾として華々しく祭り上げられるわけだ。安倍政権がとなえる「デフレ脱却のための3本の矢」のうち金融政策、財政政策に続く3本目の「成長戦略」は痛みも伴い、効果が出るにしても1年以上はかかる。選挙民も忍耐の限界ゆえ、目に見える即効性を期待し、焦がれがちだ。けれども、構造改革のような病巣にメスを入れる治療なかりせば、糖尿病のように、痛みを感じなくても病状は進行する。出血は止まっても、経済の基礎体力は戻らない。そもそも、今の円安の基礎的要因の一つが貿易収支赤字化だ。日本国の経済成長を支えてきた輸出産業の衰退化の結果の円安ともいえる。

 しかし、円安が進行すれば、輸出産業も息を吹き返し、やがて貿易収支は再度黒字に転換し、外為市場では円高圧力がかかる。これが変動相場制における外国為替レートが抱合する自動安定メカニズムだ。そのプロセスでの短期的なかく乱要因がシカゴ国際金融取引所(IMM)通貨投機筋などの投機マネー。そのマネー騒乱を刺激するのが要人発言なのだ。

 バーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長は、常に「市場とのコミュニケーション=対話」「政策の透明性」を重んじ、米連邦公開市場委員会(FOMC)後には、学者としての見識にユーモアを交ぜつつ、自ら記者会見で1時間、忍耐強く記者団の質問に答える。しかし、ガイトナー財務長官や米民主党幹部、そしてオバマ大統領の政策ブレーンが具体的なドル相場水準に言及することはない。安倍政権にも経済政策の品格が問われているのだ。

2013年1月20日日曜日

大津市中学生の自殺問題報告書 こんなゆっくりでぃぃのかなぁ

大津の中学生自殺 今月中に最終報告書
                             NHKニュース  1月20日 21時17分


  おととし大津市で中学2年の男子生徒が自殺した問題で、
市が設置した第三者委員会は、
生徒に対するいじめの事実関係や再発防止策を盛り込んだ最終報告書を
 今月中にまとめることを決めました。

  第三者委員会は、
おととし大津市で中学2年の男子生徒が自殺したあとに行われた
学校や教育委員会の調査がずさんだったとして、
去年8月市が再調査のため設置しました。
 委員会はこれまでに11回開かれ、
20日大津市役所で開かれた会合で、
生徒へのいじめの事実関係や自殺後の学校や教育委員会の対応、
それに再発防止策について、
今月中に最終報告書をまとめ、越市長に提出することを決めました。
 委員によりますと、
報告書では生徒へのいじめ行為と自殺との関係についても
盛り込む方針だということです。
  委員の一人で京都教育大学の桶谷守教授は
「やれるかぎりの調査を行ったと思う。事実を解明し、
いじめと自殺の因果関係についても明らかにしたうえで、
何が問題だったのか提言したい」と述べました。
 また、同じく委員の一人で教育評論家の尾木直樹法政大学教授は
「みんなが調査に協力してくれるわけではなく、
学校や教育委員会の隠蔽もあり、過酷だった。
このような事件は発生後速やかに調査すべきで、
この点についても報告書に入れたい」と述べました。

2013年1月19日土曜日

円安による 米欧 他 各国の思惑苦情

アベノミクス、米欧で波紋 自動車ビッグ3が円安批判
「円は過大評価」と擁護論も

                                                              日本経済新聞  2013/1/19 8:07


 積極的な金融緩和を通じ円高是正とデフレ脱却をめざす安倍晋三政権の経済政策が、
米欧などで波紋を広げ始めた。
 国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事が「競争的な通貨切り下げには反対」とけん制。
米自動車大手3社(ビッグ3)は
「日本が円安を通じた近隣困窮政策をとろうとしている」とオバマ政権に対応を求めた。
一方、「金融危機後、円は過大評価されてきた」とする識者も多く、反応は一様ではない。
 ビッグ3でつくる米自動車貿易政策評議会(AAPC)のブラント会長は17日、
「政権に戻った自民党が、
円安による日本経済の成長で他の貿易相手国を犠牲にしようとしている」と声明で批判。
「この政策が受け入れられないことをオバマ政権は日本に対し明確にすべきだ」と強調した。

 円安により日本車がドル建てなどで安くなり、
米国メーカーに対して優位に立つとの危惧が背景だ。
東日本大震災後の復活が著しい日本メーカーを通貨問題をテコにけん制する狙いと見られ、
AAPCは議会工作などに乗り出す可能性がある。

 米国は米連邦準備理事会(FRB)の量的緩和策が「ドル安を狙っている」
とブラジルなどから批判されてきた。
 表だって日本を批判しにくい面はあるが、円安加速で米産業界に反発が広がれば、
事情は変わる。
米国は中国に為替管理をやめるよう求めてきたが、
日本の政策次第では中国に為替管理を続ける口実を与えてしまう面もある。

 
 ラガルド専務理事も、
日銀が新たな物価上昇率目標を設けて金融政策を緩和する案には
「興味深く良い計画」とする一方、
名指しを避けつつ「競争的な通貨切り下げには断固反対するのがIMFの原則」とくぎをさした。
 
 安倍政権の経済政策については、
円安による輸出競争力の強化を狙っているとの見方から、
輸出品が競合する韓国なども警戒。
 欧州でも、ユーロ圏財務相会合の議長のユンケル・ルクセンブルク首相が
「ユーロは危険なほど割高」と発言。
ロシア中央銀行幹部も16日、「日本は円を下落させており、
他国も追随しかねない」と警戒感を示した。
 もっとも、日本の円安是正を擁護する声も専門家の間にはある。
 アダム・ポーゼン米ピーターソン国際経済研究所所長(前・英中央銀行政策委員)は
16日付の英フィナンシャル・タイムズ誌に寄稿。
この中で「日本の本当の問題は、デフレと通貨(円)の過大評価だ」と指摘。
弊害が伴う財政刺激策でなく、積極的な金融政策で対応すべきだと訴えた。
同氏は日本経済新聞のインタビューでも
「これまで日本は通貨戦争の犠牲者だった」とも語っている。
 

 足元で景気の先行き不安が薄らぎ、
世界的な資金の流れが変化している点も見逃せない。
 投資家がリスクを取り始めた結果、
これまで代表的な「逃避先」だった円が売られ、
ユーロや韓国ウォンなどが買われている面がある。
 ただ、為替レートは各国の国益が絡むゼロサム・ゲームだけに、
こうした見方を各国が受け入れるかは微妙。
 それゆえ、米国を含む各国当局は通貨安につながる金融緩和を進める一方、
「通貨安をめざす」などの発言は避け、各国の反発をかわしてきた。
円安・株高に沸く日本政府要人が「円安をめざす」などの露骨な発言を続ければ、
各国の思わぬ反発をまねく懸念がある。
 

円、次の照準は「浜田参与ライン」 まずは95円
                                   2013/1/18 18:02

 自民党の石破茂幹事長が望ましい水準とした1ドル=85~90円の「石破レンジ」を下抜け、2年7カ月ぶりに90円台に下落した円相場。野田佳彦前首相が衆院解散を表明した昨年11月中旬から続いた円高修正の流れはひとつの節目を抜けたが、外国為替市場は満足することなく、18日の東京市場でも円は下値を探った。午後に政府関係者から一段の円高修正を容認する発言が出ると、飛びつくように円売り・ドル買いが広がった。

「1ドルが95~100円であれば心配ない」。安倍晋三首相のブレーンが講演で語った
「1ドルが95~100円であれば心配ない」。安倍晋三首相のブレーンが講演で語った
 「95~100円なら何も心配ない」「110円なら問題」。デフレ脱却と円高是正を最優先課題に掲げる安倍晋三内閣の内閣官房参与である浜田宏一エール大名誉教授の講演内容が伝わると、89円台後半に下げ渋っていた円は再び売りの勢いを増し、前日の海外市場で付けた安値をあっさり下回った。
 「2日前あたりから、急にHamadaの名前が海外勢の話題になっていた」。ある外国銀行の為替担当者はこう明かす。積極緩和派である浜田氏が追加緩和に消極的な教え子の白川氏にしびれを切らして政府の「黒幕」になろうとしている――。市場ではこんな臆測まで飛び交ったという。
 浜田氏の発言に関心が集まりやすかった背景には、閣僚が円相場についてのコメントを一斉に避け始めた時期に重なった面もある。「為替に関することは一元的に財務相に聞いてほしい」。甘利明経済財政・再生相は18日午前の閣議後の記者会見で言葉少なに語った。話を振られた形の麻生太郎副総理・財務・金融相も「コメントすることはしない」と口をつぐんだ。市場では「相場への影響が大きいため、かん口令が敷かれたのでは」との見方が多い。
 前日の海外市場では、甘利経財相が足元の相場の動きについて「まだまだ修正局面にある」との認識を示したダウ・ジョーンズ通信のインタビューが話題になった。東京市場で伝わった瞬間こそ円を40銭程度押し下げるにとどまったが、欧州市場に取引の中心が移ると「海外勢が異様なほど注目した」(邦銀)。経財相が先に示唆した「100円は過度な円安」との警戒が解け、持ち高を一気に円売り・ドル買いに傾けたという。
 円が政府・自民党が示唆していた警戒水準に差し掛かったタイミングで、降って湧いたように登場した「浜田ライン」。クレディ・アグリコル銀行の斎藤裕司外国為替部ディレクターは「これで次は1ドル=95円が照準になる」と指摘する。「政府関係者」の発言に相場が揺さぶられる日はまだ終わりそうにない。
 

「アベノミクス」影響注視 中韓など警戒強める
                         2013/1/16 0:57 (2013/1/16 3:30更新)

大胆な金融緩和や財政出動を柱とする安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」を巡り、日本経済復活への期待が高まる一方で、円安による輸出競争の激化や余剰マネーの流入を危惧する声が中韓などの周辺国で上がり始めた。日本経済や経済・金融政策は長引く景気低迷で関心が薄れていたが、円安株高の進行で世界中の投資家や識者の目が久しぶりに日本に向いている。
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 韓国の聯合ニュースは一連の金融・財政政策について、大胆な金融緩和により「円安が加速するとみられる。韓国では財閥系企業の業績悪化懸念が広がっている。韓国の輸出企業や証券市場にも持続的な衝撃が避けられない」と報じた。
 韓国は日本と自動車や造船、鉄鋼の輸出で競合しており、円・ウォン相場が収益を大きく左右する。こうした構造を受けて円安・ウォン高が進めば日本企業の収益性が高まり、日経平均株価が上昇するが、韓国では業績悪化から株価の下押し圧力が強まる。
 韓国銀行(中央銀行)の金仲秀(キム・ジュンス)総裁は14日の記者会見で円安とウォン高の同時進行を警戒し「必要なときには(為替相場の急激な変動を緩和する)スムージングオペレーションなどにより積極的に対応する」との認識を示した。為替市場に介入する姿勢を明確にした。
 中国も日本の金融緩和策に神経をとがらせている。人民元相場の上昇圧力が増し、中国の輸出産業にとって一段の減速要因になりかねないためだ。また、3兆ドルを超える外貨準備に占める円資産を徐々に増やしており、円安になれば人民元建てでの円資産の価値が目減りしてしまう。
 余剰マネーの流入による、バブル懸念も浮上している。米欧に続き、日本も大胆な金融緩和に踏み切ることで、低金利の円を借りて高金利通貨などに投資する「円キャリートレード」が活発化するためだ。
 あふれたマネーが香港などを通じて中国国内の不動産市場に流れ込むことで、不動産価格の一段の上昇を招き、成長の足取りが不安定な経済を混乱させかねない。新興国の通貨高や資源価格の上昇といった景気のリスク要因が増す可能性もある。そんな「通貨安戦争」を中国は警戒している。
 アベノミクスにはまだ期待先行の部分が大きいのも事実。シンガポール経済紙ビジネスタイムズは年初に掲載した東京発の解説記事で「アベノミクスは日本の抱える根本的な問題を解決するわけではない」と論評した。
 「日本経済をめぐる最大のニュースは昨年に過去最大の21万人も人口が減少した事実だ」と指摘。労働人口の減少を補うために「移民受け入れの是非が議論になるべきなのに先の総選挙では与野党ともに素通りした」。アベノミクスで景気が一時的に盛り上がったとしても「日本の若者が子供を産む気になるとはとても思えない」と皮肉っている。
 世界第3位の経済規模を誇りながら、日本の経済や金融を巡る話題は長らく世界の関心事とは言い切れない状況が続いてきた。「ゾンビ(死に体)企業の退場、農業補助金の削減、移民受け入れの拡大」(ニューヨーク・タイムズ紙社説)といった抜本的な構造改革を通じて需要の拡大に取り組めるかに世界の関心が集まる。
 

株高、真の主役は円安にあらず
大阪経済部・須野原礼展

                              2013/1/18 20:01
18日の東京株式市場では日経平均株価 が高値引けとなり、昨年来高値を更新した。株価を押し上げた材料は1ドル=90円台に下落した円相場。16日には自民党の石破茂幹事長の発言で円高・株安になった直後だけに、円高修正の継続に胸をなで下ろす市場関係者も多かった。野田佳彦前首相の衆院解散表明後は円安と株高が同時進行し、「市場を意識した発言が安倍晋三首相に目立つ」(東海東京調査センターの隅谷俊夫投資調査部長)のをみれば、安倍政権への期待→円高修正→株高の流れができているとみるのは不自然ではない。
「今は為替がセンチメントを決める為替連動相場」(国内投信の運用責任者)だとすれば、しばらくは為替動向を注視する展開が続くことになる。株式市場参加者は為替相場と為替に関する内外の要人発言に一喜一憂しそうな雲行きだ。だが、株価上昇の背景に円安に負けず劣らず重要な要因があるとすれば、投資家の迷いも緩和されるのではないか。
JPモルガン証券の北野一チーフストラテジスト が「相場のことは相場に聞け」と題し、興味深い分析をしている。最近の物色動向と似た過去の局面を探すために、東証33業種の業種別株価指数の月間騰落率(3カ月前比)を算出し、騰落率の相関係数を計算。足元の局面と相関の高い時期をあぶり出した。
それによると、2000年以降で最近の相場付きと似ている過去の株高局面は03年6月、09年6月、12年2月の3回。このうち03年と09年は円高・ドル安トレンドの真っ最中にあり、今のような円安局面ではなかった。北野氏は「円高修正は直近の株高の本質的な要因ではない」とみる
では「相場に聞いた」答えは何か。北野氏によれば、直近を含む4回の局面に共通していたのは米国の在庫調整の終了だ。出荷の前年同月比(%)から在庫の前年同月比(同)を引いて算出した米国の出荷・在庫バランスを見ると、過去3回の類似時期はいずれも米国の出荷・在庫バランスが底入れ した局面にあたり、直近でもその兆候がみられる。北野氏は「円安と日本株高は(米国の)景気回復という同じ材料を手掛かりにした現象にすぎない」と言い切る。

SMBC日興証券の牧野潤一チーフエコノミストも「直近の日本株高と円安は、ともに米景気の回復を先取りした動き」とみる。実際、17日に米商務省が発表した昨年12月の住宅着工件数は4年半ぶりの高水準だった。米国の住宅市場が回復すれば「資産効果 で消費が上向き、輸出関連株には追い風」(牧野氏)という理屈だ。
米住宅市場を巡ってはサブプライム 問題をきっかけに08年のリーマン・ショックが発生し、世界の投資家をリスク回避型の投資に向かわせた。これが回復するとなれば、投資家のリスク許容度が増し、消去法的に買われてきた円は売られ、リスク資産である株は買われるはず。いちよしアセットマネジメント の秋野充成執行役員は「過去の傾向から類推すると、日経平均のPBR(株価純資産倍率 )は1.28倍程度が適正値」とし、「過度のリスク回避から『過度』がとれるだけでも、日経平均は1万2500円程度まで上昇する余地がある」と話す。
今のところ株高は為替動向に加え、旺盛な外国人投資家の買いなどの需給要因で説明されることが多い。日本の輸出動向に影響が大きい「米景気の持ち直し」というファンダメンタルズ要因が後押ししているとすれば、仮に円相場が要人発言で一時的に神経質な展開となったとしても、株式相場は中期的に堅調な地合いが続くとみてよいのではないか。
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2013年1月18日金曜日

頑張る公務員ランナー 大会新記録でエジプト国際マラソン優勝

公務員ランナー川内が優勝 エジプト国際マラソン 
                                       日経  2013/1/18 20:05

                                                             

 公務員ランナーの川内優輝(埼玉県庁)が18日、エジプトのルクソールで行われたエジプト国際マラソンに出場し、大会事務局によると2時間12分24秒の大会新記録で優勝した。序盤から独走態勢を築いてゴールし「第20回大会で僕も20回目のマラソン。運命的なものを感じる」と満足げに語った。

 日本から出国する際にはパスポートを自宅に忘れて予定した便に間に合わず、自腹を切って航空券を購入する事態に見舞われたが「自分のミスでパニックになり、反省している。何とか気持ちを切り替えようと思った」と力走を振り返った。

 川内は8月の世界選手権(モスクワ)代表を目指し、2月に別府大分毎日マラソン、3月にびわ湖毎日マラソンの出場を予定している。〔共同〕 
大会新記録で優勝し、日の丸を広げて喜ぶ川内優輝(18日、エジプト・ルクソール)=エジプト国際マラソン大会事務局提供・共同
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大会新記録で優勝し、日の丸を広げて喜ぶ川内優輝(18日、エジプト・ルクソール)=エジプト国際マラソン大会事務局提供・共同

 

2013年1月17日木曜日

編集長交代 中国の言論の不自由を週刊誌「南方週末」に見る

南方週末、編集長交代へ 早期の幕引き狙う
後任に記者出身の王氏


                                                日経新聞         2013/1/19 0:09
 
 中国の週刊紙「南方週末」の紙面が広東省共産党宣伝部の介入で改ざんされた問題で、同紙発行元の南方報業伝媒集団(広東省広州市)は18日、当局の介入を認めて現場記者と対立している南方週末の黄燦編集長を交代させ、後任に南方集団の王更輝副編集長を就ける方向で調整に入った。早期幕引きを狙う広東省トップの胡春華氏の意向に沿った対応とみられる。

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 中国当局は当初、南方週末の黄燦編集長の交代と引き換えに、紙面の改ざんを指示した広東省党宣伝部の●(席の巾が尺)震部長を事実上の更迭とし、双方が責任を取る形での幕引きを図ろうとした。
 その後、当局側は記者側との折衝を通じ、記者の間に当局の改ざん指示を受け入れた黄編集長への不満がくすぶっていることを把握。事態の早期収束に一定の手応えを感じ、管理下にある南方週末発行元の南方集団を通じ、まずは黄編集長の交代を指示した。
 これで南方週末記者の反発が弱まれば、改ざんを指示した広東省党宣伝部の●震部長が責任を取らずに事態を収めることができるとの思惑も当局側にはありそうだ。

 ただ、記者側は当局にも混乱の責任を取るよう迫る構えを崩していない。紙面の事前検閲の大幅な緩和も求めており、再び反発が強まる可能性はある。

 インターネット上のミニブログでは、プロフィル写真を南方週末のロゴに変え、暗に同紙を支持する姿勢を示すユーザーが依然多い。南方週末編集部が入る南方集団の本社前では18日も、記者を支持する人々が抗議活動をしないよう警戒態勢が敷かれた。

 南方週末の新たな編集長に就く見通しの王氏は、南方集団が発行する広東省党機関紙、南方日報の記者出身。香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポストによると、現場記者からの信任は厚いという。広東省党宣伝部の管理下にある南方集団は、王氏ならば記者らの反発を収められると判断したようだ。

 南方週末の記者らがまとめた報告書によると、黄氏は当局の指示を受け、当局者とともに新年号の記事改ざんを記者に指示した。反発した記者らがストライキを実施。この際、当局者や黄氏とともに、王氏も事態の収拾に向けて対応していた。

 今回、記者らが反発した背景には、当局が南方週末に対し、近年特に執拗で強引な介入を繰り返してきたことが大きい。同紙発行元の南方集団は他の中国メディア同様、地元の広東省共産党傘下にあるが、発行部数170万部の南方週末は不正追及や改革的な論調で知られる。

 同紙関係者によると、2012年の1年間で当局によって書き換えや掲載中止を指示された記事は1034編にのぼる。新年号の記事は年末年始の休暇中だった記者の目を盗むように、当局が編集長に改ざんを指示したことが、記者の反発を招いた。

2013年1月12日土曜日

民主党の少子化解消対策 云々吹聴ウソだった

保育士不足で給料上乗せの仕組み導入へ
                              NHKニュース    1月12日 18時38分

都市部を中心に深刻になっている保育士の不足を解消しようと、
厚生労働省は、
来年度から民間の保育所に勤める保育士を対象に、
勤続年数に応じて給料を上乗せする
新たな仕組みを導入することを決めました。

保育所の空きを待つ待機児童を解消するため、
新たな保育所の設置が各地で進められていますが、
待機児童が多い都市部を中心に保育士不足が深刻で、
厚生労働省の調べで、
5年後には7万人以上不足する見通しです。
その理由として、

国の補助金などで賄われる民間の保育所の保育士の給料が、
すべての職業の平均と比べて
月額で10万円余り低いことが指摘されています。
このため厚生労働省は、

来年度から民間の保育所に交付する補助金の額を、
保育士たちの平均勤続年数に応じて上乗せする
新たな仕組みを導入することを決めました。
交付された補助金を

どのように配分するかは各保育所の判断になりますが、
厚生労働省は、勤続5年の場合で月額8000円程度、
勤続10年で月額1万円程度、
給料が高くなると試算しています。
また、保育士の資格を取る人を増やすため、

大学や専門学校に通う学生に学費として
160万円を貸し付ける制度を新たに設け、
5年以上保育士として働けば返済の必要はないとしています。
厚生労働省は、

これらの施策に必要な費用438億円を
今年度の補正予算案に盛り込み、
保育士の処遇改善を進めることにしています。

2013年1月11日金曜日

橋下市長と安倍総理が首相として初会談



首相、補正予算など協力呼び掛け 橋下市長と会談

                                      日経ネット      2013/1/11 13:10   16:08

首相 橋下氏に補正予算案で協力要請
安倍総理大臣は、視察のために訪れた大阪市内で日本維新の会の橋下代表代行らと会談し、11日に閣議決定した緊急経済対策の内容を説明したうえで、その裏付けとなる今年度の補正予算案の早期成立に協力を求めました。
安倍総理大臣は、再生医療に関する施設などを視察するため大阪市や神戸市などを訪れ、これに合わせて、大阪市内で日本維新の会の橋下代表代行や松井幹事長と会談しました。
この中で安倍総理大臣は、11日に閣議決定した緊急経済対策の内容を説明し、その裏付けとなる今年度の補正予算案の早期成立に協力を求めました。
これに対し、橋下氏は、「大胆な金融緩和や機動的な財政出動に加えて構造改革が必要だ。法人税率の引き下げや規制緩和も進めてほしい」と要請しました。
また、松井幹事長は、「国会では手を抜くことなく徹底的に議論するが、補正予算案の中身については同じ方向性だ」と述べました。
会談のあと、橋下氏は記者団に対し、「『野党は何でも反対』という国政にうんざりして維新の会を立ち上げたので、政策ごとに議論して、まとめるものはまとめ、修正が必要なものは修正するという当たり前の国政運営を目指したい。維新の会が安倍政権に歩調を合わせるためには、構造改革をやってもらうことが大前提になる」と述べました。
今回の会談を巡っては、安倍総理大臣が、ことし夏の参議院選挙後の連携もにらんで、維新の会との関係構築の第一歩とするねらいがあるという見方も出ています。

  安倍晋三首相は11日昼、大阪市内で日本維新の会代表代行の橋下徹市長と会談した。参院で与党が過半数割れしている現状を踏まえ、今年度補正予算案など国会審議への協力を呼びかけたとみられる。首相は冒頭、「規制改革会議をスタートする。成長戦略の重要な会にしていきたい」と表明。
橋下市長は「規制緩和を進めてもらいたい」と応じた。

日本維新の会代表代行の橋下徹大阪市長(中央)と握手を交わす安倍首相(11日、大阪市内のホテル)=代表撮影
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日本維新の会代表代行の橋下徹大阪市長(中央)と握手を交わす安倍首相(11日、大阪市内のホテル)=代表撮影

 首相は会談に先立つ午前の記者会見で
「この国会で補正予算を早期に通過させていくことが
景気、経済、地域の発展にとって極めて重要だと話したい。
協力についてもお願いしたい」と述べた。

 会談には維新幹事長の松井一郎府知事も同席。
かねて首相は教育制度改革への取り組みなどを巡って橋下、松井両氏と親交がある。
昨年9月の自民党総裁選に出馬する前には都内や大阪市内で会談を重ね、
衆院選での連携も取りざたされた。
憲法改正や教育改革など首相が強い意欲を示す政策の実現を目指し、
将来的な維新との連携に布石を打つ狙いがありそうだ。

 首相は橋下氏らとの会談後、神戸市なども訪れる。
地元の中小企業やiPS細胞の研究施設などを視察。
ノーベル生理学・医学賞を受賞した山中伸弥京都大教授らとも面会する。
 

日銀、雇用拡大も責任 安倍首相インタビュー
円高是正、ともに努力

                 2013/1/11付

          日本経済新聞 朝刊
安倍晋三首相は10日、日本経済新聞のインタビューで、日銀の役割について「実体経済にも責任を持ってほしい。雇用を最大化することも頭に入れてもらいたい」と述べ、金融政策を通じて雇用拡大に努めるべきだとの認識を示した。為替水準に関して「日本は為替によって競争力を失っていた。(円高を)是正するのは政府と中央銀行の責任だ。努力し続けなければならない」と強調した。

2013年1月9日水曜日

首相 経済再生実現に向け本格始動



安倍政権は、景気回復に向けた具体策などを検討する日本経済再生本部に続き、9日、中長期的な経済財政政策を検討する経済財政諮問会議を始動させることにしています。
安倍総理大臣としては、2つの会議を車の両輪に、最重要課題に掲げる経済の再生に向けた取り組みを本格化させることにしています。

安倍政権は、8日、すべての閣僚が出席して、景気回復に向けた具体策などを検討する日本経済再生本部の初会合を開き、道路の老朽化対策や学校の耐震化など「復興・防災対策」や、再生可能エネルギーの普及などに向けた設備投資の促進などを重点分野に挙げた緊急経済対策の骨子を確認しました。
そして、11日に緊急経済対策をとりまとめ、今年度の補正予算案に盛り込むことにしています。
これに続いて安倍政権は、民主党政権の時には開かれなかった経済財政諮問会議を9日に開くことにしています。
経済財政諮問会議では、かつての小泉内閣で策定された中長期の経済財政運営の基本となる、いわゆる「骨太の方針」を、ことし6月ごろをめどにとりまとめることなどを確認することにしていて、「骨太の方針」には、新たな財政再建策も盛り込みたい考えです。
さらに安倍総理大臣は、経済の成長戦略の取りまとめに向けて、「産業競争力会議」を設置したのに続き、稲田行政改革担当大臣に対し、「規制改革会議」を復活させるよう指示しました。
また、科学技術政策を担当する山本沖縄・北方担当大臣には、技術革新に向けた施策などを検討する「総合科学技術会議」でも議論を始めるよう指示しました。
安倍総理大臣としては、日本経済再生本部と経済財政諮問会議を車の両輪に、産業競争力会議など3つの会議でも議論を始め、最重要課題に掲げる経済の再生に向けた取り組みを本格化させることにしています。

緊急経済対策 国の支出10.3兆円に 

政府が11日に閣議決定する緊急経済対策の全容が明らかになりました。
この中では、震災からの復興や防災対策に、3兆7000億円を投じるほか、大規模な公共事業に伴う地方自治体の負担を軽くするための交付金を1兆4000億円計上するなど、総額で10兆3000億円となることが固まりました。

緊急経済対策は、政府が重点的に対応していく3つの分野に分けられ、まず、「復興・防災」として、トンネルや橋の老朽化対策といったインフラの再構築に6200億円など、合わせて3兆7000億円を計上します。
さらに、「暮らしの安心・地域活性化」として、1兆9000億円が盛り込まれ、合わせて、大規模な公共事業に伴う地方自治体の負担を軽くするための交付金を1兆4000億円確保しました。
さらに「成長による富の創出」として、官民による共同研究の推進やベンチャーを支援するための資金供給など3兆円を配分します。この結果、今回の対策の国の支出は、総額で10兆3000億円となり、自治体や民間の負担を合わせた事業費ベースでは20兆円と、大型の対策となります。
また今回の対策には、こうした財政支出に加え、税制面での支援策として、従業員の給与や雇用を増やした企業に対し、給与の増加分の一定割合を法人税から減税する措置の創設や、研究開発を行った企業に対して行っている減税措置の拡充などが盛り込まれる見通しです。
緊急経済対策20兆円超の規模に
緊急経済対策 国の支出10.3兆円に
緊急経済対策20兆円超の規模に
政府の緊急経済対策は、公共事業が中心となるため、地方などの負担を合わせると事業費ベースでは20兆円を超える大型の対策になる見通しで、政府は、足りない財源についてはすべて建設国債の発行で賄う方針を固めました。

政府は今月11日の閣議決定を目指し、景気回復に向けた政策対応の第一弾と位置づけている緊急経済対策について、総額10兆円前後とする方向で詰めの調整を進めています。
関係者によりますと、これまでの調整の結果、地方自治体や民間の負担を合わせると事業費ベースでは20兆円を超える大型の対策になる見通しです。
これは対策の中心が公共事業になっているためで、政府は地方の負担を軽くするための臨時の交付金といった財政措置についても、さらに調整を続けることにしています。
一方、経済対策の財源について、政府は見込まれる5兆円程度の財源不足を、すべて建設国債で賄って赤字国債は発行しない方針を固めました。
政府は、緊急経済対策を今月11日に閣議決定したうえで、来週中に基礎年金の国の負担分も含めた今年度の補正予算案を決定し、今月中の国会提出を目指すことにしています。

経済再生本部 緊急経済対策骨子を確認
安倍政権は、「日本経済再生本部」の初会合を開き、「『縮小均衡の分配政策』から『成長と富の創出の好循環』へと転換させ、『強い経済』を取り戻す」などとした、緊急経済対策の骨子を確認しました。

「日本経済再生本部」は、安倍政権が企業の競争力強化に向けたミクロ経済政策の司令塔として設置したもので、8日午前、すべての閣僚が出席して初会合が開かれました。
そして、「日本経済再生に向けた緊急経済対策」の骨子を確認しました。
この中では、「『縮小均衡の分配政策』から『成長と富の創出の好循環』へと転換させ、『強い経済』を取り戻す」ことを目標に掲げ、重点分野として、▽道路の老朽化対策や学校の耐震化などの「復興・防災対策」、▽再生可能エネルギーの普及などに向けた設備投資の促進などの「成長による富の創出」、▽安心できる医療体制の整備などの「暮らしの安心・地域活性化」の3つを挙げています。
会議の最後に、安倍総理大臣は、「10年以上にわたるデフレからの脱却は、人類史上、歴史的な取り組みだ。大胆な金融政策、機動的な財政政策、成長戦略の3本の矢で取り組んでいかなければならない」と述べ、骨子に沿って今週11日に緊急経済対策を取りまとめる考えを示しました。
さらに、会議では、「再生本部」の下に、成長戦略の具体策を検討する「産業競争力会議」を設置し、小泉内閣で総務大臣などを務めた慶応大学の竹中平蔵教授ら9人をメンバーに起用することを決めました。

緊急経済対策の骨子案が明らかに
安倍政権が取りまとめた日本経済の再生に向けて「『縮小均衡の分配政策』から『成長と富の創出の好循環』へと転換させ『強い経済』を取り戻す」などとした緊急経済対策の骨子案が明らかになりました。
そして、8日、経済政策の司令塔と位置づける「日本経済再生本部」の初会合で、この方針を確認し、今年度の補正予算案を編成することにしています。

安倍政権が取りまとめた「日本経済再生に向けた緊急経済対策」の骨子案によりますと、「『縮小均衡の分配政策』から『成長と富の創出の好循環』へと転換させ、『強い経済』を取り戻す」などとしたうえで、「まずは景気の底割れを回避し、民間投資を喚起し、持続的成長を生み出す成長戦略につなげていく」として、対策はそのための第一弾だとしています。
そして、今後の経済財政運営について、「15か月予算」の考え方で切れ目のない経済対策を実行することや、前政権による今年度予算を最大限見直しつつ公債発行も含めて必要な財源を確保すること、それに政府と日銀の連携を強化する仕組みを構築することなどを掲げています。
また、経済対策の重点分野として、道路などの老朽化対策や学校の耐震化などインフラ整備を中心とした「復興・防災対策」、再生可能エネルギーの普及などに向けた設備投資の促進や企業の海外展開の支援などの「成長による富の創出」、それに安心できる医療体制の整備などによる「暮らしの安心・地域活性化」などを挙げています。
政府は、8日、経済政策の司令塔と位置づける「日本経済再生本部」の初会合で、こうした「緊急経済対策」の方針を確認して今年度の補正予算案の編成作業を急ぎ、来週15日に閣議決定することにしています。

 

 

2013年1月4日金曜日

日本ブランドが世界を巡る TOTOのトイレ製品

TOTOのトイレ製品、欧州で狙う「華麗な地位」

 日本の輸出品といえば車と家電だけかと思ったら大間違い。生活用品をはじめ、実に多くの日本製品が海外で使われている。欧州のトイレ市場に参入を図るTOTOの試みを見てみよう――。本連載「日本ブランドが世界を巡る」では、日本で売れている製品の工業デザインやパッケージが、海外進出の際にどう変化しているかに迫る。ものづくり企業のマーケティング担当者や製品開発者をはじめ、多くのビジネスパーソンに役立つはずだ。


 水周り製品の総合メーカーTOTOは2008年4月、ドイツのデュッセルドルフに「TOTO Europe GmbH」を設立し、ウォシュレットを中心に欧州での販売を強化し始めた。2010年5月には英国ロンドンに欧州初の直営ショールームをオープンし、現在も販路を拡大中だ。

TOTOが日本と欧州で発売するウォシュレット製品
[左]タンクレスタイプのウォシュレット一体型トイレ。2007年に発売、2009年と2012年2月にマイナーチェンジ。瞬間暖房便座タイプと通常タイプの2種、6色のカラーバリエーションがある。床置きタイプ。欧州に比べるとやや先細り気味なのが日本の便器の形状面の特徴。デザインは社内。国内で製造。2009年にiF賞とレッドドット賞を受賞
[右]ロシアを含む欧州(主にドイツ、フランス、イギリス、イタリア)で、2008年発売。壁着けタンクレスタイプ。日本向けに比べると形状が四角いのが特徴。便器も家具の延長で考えているため、四角いタイプが多いのではないか、とTOTOは言う。欧州向けのウォシュレットはほかに4種のバリエーションがある。色は白のみ。デザインは社内。製造工場は商品により異なる
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TOTOが日本と欧州で発売するウォシュレット製品
[左]タンクレスタイプのウォシュレット一体型トイレ。2007年に発売、2009年と2012年2月にマイナーチェンジ。瞬間暖房便座タイプと通常タイプの2種、6色のカラーバリエーションがある。床置きタイプ。欧州に比べるとやや先細り気味なのが日本の便器の形状面の特徴。デザインは社内。国内で製造。2009年にiF賞とレッドドット賞を受賞
[右]ロシアを含む欧州(主にドイツ、フランス、イギリス、イタリア)で、2008年発売。壁着けタンクレスタイプ。日本向けに比べると形状が四角いのが特徴。便器も家具の延長で考えているため、四角いタイプが多いのではないか、とTOTOは言う。欧州向けのウォシュレットはほかに4種のバリエーションがある。色は白のみ。デザインは社内。製造工場は商品により異なる


 ロンドンのTOTOのショールームがあるのは、東ロンドン・クラーケンウェルエリアのセントジョンズストリート。デザイン事務所や建築事務所などクリエーティブ産業の事務所が多く、高級家具ブランドのショールームも急速に増えている。毎年秋に行われるロンドンのデザインフェスティバルの中心地でもある。

■高級感を演出する理由

 東京で言えば青山や六本木のメーンストリートにTOTOのショールームがあるようなものだ。実際、製品をカタログ然と並べる日本のショールームとは異なり、高級ホテルやコンドミニアムなどを思わせるぜいたくな空間を演出し、水周りメーカーというよりは高級インテリアメーカーのショールームのようだ。

 高級感の理由は、TOTOが海外ではターゲットをハイエンドに絞っていることにある。海外ではまだ普及していないウォシュレットや汚れの付きにくいセフィオンテクト加工など、高品質と技術を前面に出していくことでユニークな立ち位置を確立しようと試みている。

 家具ブランドのようなショールームのインテリアは、建築家やインテリアデザイナーに単品だけ見せていてはイメージしてもらいにくいため。インテリアと組み合わせることでイメージしやすくする。
 加えて、「日本と欧州のトイレのとらえ方の違いを反映している」と渡井朗・TOTOヨーロッパロンドン支部ジェネラルマネージャーは言う。



■欧州ではトイレを単体でとらえない

 「欧州ではトイレを単体で考えるのではなくバスルーム空間で考える。つまり衛生陶器というジャンルではなく、インテリアや家具と同じ感覚。「ネオレスト」という名称も日本では便器と便座がセットとなった商品名だが、日本以外では、トイレ、便器、洗面器ほかのバスルーム用什器を合わせた空間演出のブランド名として使っている」(渡井氏)。



欧州では、バスルーム周りをすべて1冊のカタログに収めている。左はNEOREST SEのトップページ。バスルーム全体を見せ、その中で便器は控えめな存在。写真を中心に全体的に高級インテリア雑誌のような作り。商品の特徴やスペックなどは後ろのページで解説している
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欧州では、バスルーム周りをすべて1冊のカタログに収めている。左はNEOREST SEのトップページ。バスルーム全体を見せ、その中で便器は控えめな存在。写真を中心に全体的に高級インテリア雑誌のような作り。商品の特徴やスペックなどは後ろのページで解説している


ウォシュレット便器単体ではなく、バスルームとして周囲を固めていく。TOTOはこの手法をさらに広げ、2011年にドイツ、フランス、イギリス、ロシアで「MH」という新しいシリーズを発表した。「欧州の中でもバスルーム空間に対する考え方が一様ではなく、サイズバリエーション、家具の品ぞろえもさまざま。頻繁に器具を換える消費者も多い」という背景から、洗面台、キャビネットなどの商品サイズをモジュラーで組み合わせやすくした。



TOTOは日本では、トイレ周りだけでも複数のカタログを用意。左はネオレストだけのカタログのトップページ。ネオレストという商品名がトイレだけを示すことが分かる。TOTOのトイレの中でも高額商品だが、ハイエンドというよりはもっと身近なイメージ
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TOTOは日本では、トイレ周りだけでも複数のカタログを用意。左はネオレストだけのカタログのトップページ。ネオレストという商品名がトイレだけを示すことが分かる。TOTOのトイレの中でも高額商品だが、ハイエンドというよりはもっと身近なイメージ

 内閣府の消費者動向調査によれば、温水洗浄便座の日本国内での世帯普及率は73.5%(2012年3月時点)に達する。しかし欧州ではまだ出荷数が非常に少なく、人口普及率1%未満の国が大半を占める。ウォシュレットなんて見たことも聞いたこともない、という消費者も多い市場の中で、TOTOは奮闘中だ。