当初から最悪の事態想定 枝野氏、事故調で強調
2012/5/27 23:44
東京電力福島第1原子力発電所事故の原因を究明する国会の事故調査委員会(黒川清委員長)は27日、事故当時の官房長官、枝野幸男経済産業相を招致した。枝野氏は事故後の状況や政府対応などの情報発信に関して「情報の集約、その後の予想や想定ができなかったことを反省しないといけない」と述べ、不十分だったと認めて陳謝した。
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枝野氏への聴取は公開された。東電の第1原発からの「撤退」問題では、清水正孝社長(当時)が枝野氏に電話をかけ、全面撤退と受け取れる言動をしたと説明。全面撤退を前提にした枝野氏の質問に「清水氏は口ごもった」として「部分的に残すという趣旨ではなかった」と話した。一方で第1原発の吉田昌郎所長(当時)からは電話で「まだやれます。頑張ります」との報告を受けたと述べた。
首相だった菅直人氏が第1原発の視察を強行したことについては、視察前に「抽象的、感情的な政治的批判は免れないと進言した」と述べた。
枝野氏は経産省原子力安全・保安院が事故直後から首相官邸の指示で「炉心溶融(メルトダウン)」の表現を使わなくなったとの見方には「言うなと言ったことはない」と否定。「炉心が溶けているのは間違いない。大前提で議論してきた」とも語り、初期段階から最悪の事態を想定していたことを指摘した。
枝野氏、影響予測の公表遅れ「信頼損なう原因」
2012/5/27 23:42
27日開いた国会の東京電力福島原子力発電所事故調査委員会(黒川清委員長)では、当時、官房長官だった枝野幸男経済産業相を交え、事故後の情報提供の検証が焦点になった。枝野氏は放射性物質の広がりを予測するSPEEDI(緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)の試算公表の遅れに関して「(政府の)信頼を損なう大きな原因になった」と認めた。
枝野氏によると、SPEEDIの存在を知ったのは、事故発生4日後の昨年3月15日か16日。担当者は「使えない」と説明したが、枝野氏はデータの公表を指示し、作成直後の23日に公表した。原発から放射線の向きの予測が早く公表されれば、住民が避難区域から離れる際に線量の高い地域に向かうことなどを防げたとして、政府の対応が批判されている。
避難区域をめぐっては、枝野氏が半径10キロから20キロに拡大を発表した3月12日の記者会見で「念のために万全を期す」と発言したことなどを事故調委員が問題視した。事態を矮小(わいしょう)化して短期で自宅に戻れるなどの印象を与えたというものだ。枝野氏は「避難が長期にわたるという問題意識を私だけでなく皆さんが持っていなかった。大変じくじたる思いだ」と語った。
事故後に繰り返した「直ちに健康に影響はない」との発言にも「『直ちに』の言い回しが政府発表への不安を助長した」との批判があった。枝野氏は(1)基準値を超える食品の摂取(2)屋内退避区域への一時的な立ち入り(3)避難が遅れた北西部の住民被曝(ひばく)――の3ケースで使ったと説明。(3)では「使い方が正しかったかは分からない」とし不適切だったと事実上認めた。枝野氏は「私の思っていたことと、被害者の受け止めとの間にずれがあった。改めて申し訳なく思っている」と語った。