2012年3月29日木曜日

自社株買いは株主にどんなメリットがあるのか

上場会社は、株主に対してどのような形で利益還元しているのでしょうか。それには大きく分けて2つの方法があります。  1つは配当金、もう1つは自社株買いです。
配当金や自社株買いに必要な資金は、税引後利益を利用したり、あるいは利益剰余金や資本剰余金などを取り崩して、その資金を使うことも可能です。
ちなみに自社株買いとは、上場会社が自社の株式を市場で購入することです。株価操作に悪用されるおそれがあったため、日本では長い間、禁止されていましたが、持ち合い解消の受け皿として利用できるように、1994年から消却などに限って解禁されています。
97年にはストックオプション(自社株購入権)についても認められ、さらに2001年からは目的を限定しない自社株買い(金庫株)が認められるようになっています。
それ以外にも、自社株買いの使い勝手がいいように、いくつかの改革が進められています。
2001年からは、法定準備金のうち資本金の4分の1を上回る分を取り崩して、自社株買いの原資となる剰余金に振り替えることができるようになり、さらに03年からは、取締役会の決議でも自社株買いができる(それ以前は株主総会での決議が必要だった)ようになっています。
その結果、日本でも自社株買いが急速に普及するようになっています。
東京証券取引所の資料(「東証要覧」など)によれば、自社株買い実施企業は2002年以降増加が続き、06年に4兆4949億円と過去最高を記録。07年には4兆4943億円、08年4兆303億円と高水準が続いています。
09年8360億円、10年に9130億円と急減した後、11年には1兆6525億円と再び増加傾向となっています。
その結果、自社保有の株式(自己株式)が大株主のトップ、あるいは10位以内の上位にランクされる上場会社が急増しています。
ちなみに、自社保有分が10位以内の大株主となっている企業の数は2010年9月末で1700社(全上場企業数の46.5%)。このうち筆頭株主に相当している企業の数は236社に上っています。
日本企業は自社株買いによって得た自社株(自己株式)をどのように処理しているのでしょうか。その年によって異なりますが、2011年では消却処分1兆3601億円、合併・株式交換・会社分割に伴う移転3413億円、引き受ける者の募集による処理385億円となっています。

このように、自社株買いされた自社株(自己株式)は、消却処分され、2度と市場に出回らないようにしたり、ストックオプションに利用したり、M&Aなどの際に株式交換に利用したり、資金調達に再利用するなどの目的に利用されています。

では、自社株買いはなぜ、株主への利益還元になるのでしょうか。

上場会社が自社株買いを行えば、市場に出回る株式数が減少して、株価が上昇しやすくなるからです。

自社株買いされた株式(自己株式)には議決権がなく、配当も支払われないなど、株主としての権利が認められないため、消却してもしなくても、発行済み株式数から差し引かれることになります。

消却すれば、その分の株式が消滅して2度と市場に流通しなくなり、消却しなければ将来、株式交換などに再利用されて、市場に出回る可能性がある、という違いがあります。

自社株買いが行われると、その分だけ発行済み株式数が減少するため、1株当たり利益や1株当たり純資産が増加し、株価が上昇しやすくなります。株価が上昇すれば、株主の含み資産が増えるため、株主のメリットになる、というわけです。
一方、自社株買いのデメリットとしては、自己株式は資産として認められない(会計上は純資産の控除項目として処理される)ため、純資産が減少し、財務体質が低下することを挙げることができます。
しかし、株主にとって、デメリットよりメリットの方がはるかに大きいとみることができます。配当が多少増えるより、株価が上昇する方が株主にとってメリットが大きいからです。

また、配当金をもらって喜ぶのは株主だけですが、自社株買いによって株価が上昇すると、会社と株主の双方にメリットがあります。

株価を高くしておけば、企業買収を行う際に、株式交換制度を利用して、自社株を現金代わりに利用することができるほか、敵対的M&Aの対策としても有効です。また、時価発行増資をする場合にも、株価が高ければ高いほど、多くの資金を調達することが可能に

なります。役員や従業員は、ストックオプション(自社株購入権)で大きな利益を手にすることも可能です。このため、上場会社は株主にとっても会社にとってもメリットの大きな自社株買いに力を入れています。

自社株買いは、日本株にとって数少ない好材料の1つです。

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