2013年1月28日月曜日

第二次安倍内閣の初国会所信表明演説の要旨

安倍首相の所信表明演説の要旨
                           日本経済新聞  2013/1/28 13:49


 アルジェリア人質事件発生以来、総力を挙げて情報収集と人命救出に取り組んできたが、世界の最前線で活躍する何の罪もない日本人が犠牲になったことは痛恨の極みだ。

 無辜(むこ)の市民を巻き込んだ卑劣なテロ行為は、決して許されるものではなく、断固として非難する。事件の検証を行い、国民の生命・財産を守り抜く。国際社会と引き続き連携し、テロと闘い続ける。

■はじめに

 私はかつて病のために職を辞し、大きな政治的挫折を経験した人間だ。過去の反省を教訓として心に刻み、丁寧な対話を心がけながら真摯に国政運営に当たっていく。

 国家国民のために再び我が身をささげようとする私の決意の源は、深き憂国の念にある。

 デフレと円高から抜け出せない日本経済の危機。東日本大震災からの復興の危機。我が国固有の領土・領海・領空や主権に対する挑発が続く、外交・安全保障の危機。学力の低下が危惧される教育の危機。このまま、手をこまねいているわけにはいかない。

 額に汗して働けば必ず報われ、未来に夢と希望を抱くことができる、まっとうな社会を築いていこう。そのためには、日本の未来を脅かしている数々の危機を突破していかなければならない。

 内閣発足に当たって、私は全ての閣僚に「経済再生」「震災復興」「危機管理」に全力を挙げるよう一斉に指示した。危機の突破は、全閣僚が一丸となって取り組むべき仕事だ。危機を突破しようとする国家の確固たる意思を示すため、与野党の英知を結集させ、国力を最大限に発揮させよう。

■経済再生

 我が国にとって最大かつ喫緊の課題は、経済の再生だ。

 私が経済の再生に最もこだわるのは、長引くデフレや円高が、「頑張る人は報われる」という社会の基盤を根底から揺るがしているからだ。

 これまでの延長線上にある対応では、デフレや円高から抜け出すことはできない。だからこそ、これまでとは次元の違う大胆な政策パッケージを提示する。断固たる決意をもって、「強い経済」を取り戻していこう。

 既に、経済再生の司令塔として「日本経済再生本部」を設置し「経済財政諮問会議」も再起動させた。この布陣をフル回転させ、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略という「3本の矢」で経済再生を推し進める。

金融政策については、従来の政策枠組みを大胆に見直す共同声明を、日銀との間で取りまとめた。日銀において2%の物価安定目標をできるだけ早期に実現することを含め、政府と日銀がそれぞれの責任で共同声明を実行していくことが重要であり、一層の緊密な連携を図っていく。
 先にまとめた緊急経済対策で景気を下支えし、成長力を強化する。補正予算はその裏付けとなる。「復興・防災対策」「成長による富の創出」「暮らしの安心・地域活性化」という3つを重点分野として、大胆な予算措置を講じる。速やかに成立させ、実行に移せるよう各党各会派の理解と協力をお願いする。

 他方、財政出動をいつまでも続けるわけにはいかない。民間の投資と消費が持続的に拡大する成長戦略を策定し、実行する。

 イノベーションと制度改革は、社会的課題の解決に結びつくことによって暮らしに新しい価値をもたらし、経済再生の原動力となる。最も大切なのは、未知の領域に果敢に挑戦していく精神だ。今こそ世界一を目指していこう。

 世界中から投資や人材をひきつけ、全ての人々が生きがいを感じ、何度でもチャンスを与えられる社会。男女が共に仕事と子育てを容易に両立できる社会。中小企業・小規模事業者が躍動し、農山漁村の豊かな資源が成長の糧となる、地域の魅力があふれる社会。そうした「あるべき社会像」を、確かな成長戦略に結びつけることで、必ずや「強い経済」を取り戻す。同時に、中長期の財政健全化に向けてプライマリーバランス(基礎的財政収支)の黒字化を目指す。

■震災復興

 復興という言葉を唱えるだけでは何も変わらない。まずは政府の体制を大転換する。これまでの行政の縦割りを排し、復興庁がワンストップで要望を吸い上げ、現場主義を貫く。今般の補正予算でも、思い切った予算措置を講じ、被災地の復興と福島の再生を必ずや加速する。

■外交・安全保障

 外交・安全保障についても、抜本的な立て直しが急務だ。

 何よりもその基軸となる日米同盟を一層強化する。2月第3週に予定されている日米首脳会談で、緊密な日米同盟の復活を内外に示す。同時に米軍普天間基地の移設をはじめとする沖縄の負担の軽減に全力で取り組む。

 大きく成長していくアジア太平洋地域で、我が国は、経済のみならず、安全保障や文化・人的交流など様々な分野で、先導役として貢献を続けていく。

 今年は日・東南アジア諸国連合(ASEAN)友好協力40周年に当たる。2015年の共同体構築に向けて、成長センターとして発展を続けるASEAN諸国との関係を強化していくことは、地域の平和と繁栄にとって不可欠であり、日本の国益でもある。

 国境離島の適切な振興・管理、警戒警備の強化に万全を尽くし、国民の生命・財産と領土・領海・領空は、断固として守り抜いていくことを宣言する。

 アルジェリア人質事件は、国家としての危機管理の重要性について改めて警鐘を鳴らすものだった。テロやサイバー攻撃、大規模災害、重大事故などの危機管理対応について、24時間、365日体制で、さらなる緊張感を持って対処する。

 北朝鮮に「対話と圧力」の方針を貫き、全ての拉致被害者の安全確保及び即時帰国、拉致に関する真相究明、拉致実行犯の引き渡しの3点に向けて全力を尽くす。

■おわりに

 我が国が直面する最大の危機は、日本人が自信を失ってしまったことだ。日本経済の状況は深刻で、今日明日で解決できるような簡単な問題ではない。しかし、「自らの力で成長していこう」という気概を失ってしまっては、個人も、国家も明るい将来を切りひらくことはできない。

 何よりも、自らへの誇りと自信を取り戻そう。私たちも、日本も、自らの中に眠っている新しい力を見いだして、成長していくことができるはずだ。危機を突破し、未来を切りひらく覚悟を共に分かち合おう。「強い日本」を創るのは、私たち自身だ。

 

0 件のコメント:

コメントを投稿