2013年6月19日水曜日


オバマ氏・習氏会談 

米中の風圧、日本揺らす(真相深層)
対北朝鮮の独自外交にも備え

                                                                 2013/6/15付 [有料会員限定]
米国と中国の関係が動けば、波は日本にも打ち寄せる。これが、経験則に裏づけられた日本の宿命だ。先週末、米カリフォルニアで8時間超におよんだ異例の米中首脳会談。日本への損得はどう出るのか。
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■尖閣問題で配慮

 オバマ米政権は米中首脳会談に際し、日本が疑心暗鬼にならないように神経を使った。
 日本を外して中国と取引することはない――。会談に先立ち、ホワイトハウス高官が来日し、日本側にこう伝えた。会談後に結果を説明するため、オバマ大統領が最初に電話した外国要人も安倍晋三首相だった。
 日本が注目しているのは、尖閣諸島について、オバマ大統領が正面から取りあげたことだ。
 「争いを過熱させるべきではない。行動ではなく、外交の対話に努めるべきだ」。オバマ氏は同盟国の日本とのきずなを強調したうえで、習近平国家主席にこう求めた。
 「当初、想像していたより、大統領は尖閣に時間を割いた。彼自身が強い問題意識を持っているからだろう」。米政府当局者はこう解説する。
 会談内容を知る日本政府筋も「習主席は『尖閣での日米の連携は強い』と感じたはず。中国への圧力になる」とみる。
 もっとも、日米に全く温度差がないわけではない。「米国はやや、腰が引けているのでは……」。実は、尖閣へのオバマ政権の姿勢について、日本政府内からはこんな声も聞かれる。
 日米は昨秋以降、離島防衛に向けた共同演習に力を入れだした。緊急時の協力を定めた日米防衛協力のための指針(ガイドライン)の改定作業も始めた。いずれも中国軍をにらみ、日米の協力を強めるためだ。
 それなのに、米国は目的が「対中」にあることを公言するのは好まない。「中国を刺激するのは得策ではない。彼らを標的にするような言動は控えよう」。米国は水面下で日本にこうささやく。対中抑止は怠らないが、中国を挑発したくない。これが本音だ。
■「蚊帳の外」懸念

 こうしたなか、日本にとって痛しかゆしなのが、北朝鮮問題だ。米中首脳は北朝鮮の非核化で足並みをそろえた。「これを機に朝鮮半島の将来をめぐるディープな米中対話が、日本抜きで始まるかもしれない」。複数の日本の安全保障担当者はこう身構える。
 日本側がそんな気配を感じるようになったのは、習主席訪米を2カ月後に控えた4月だった。
 「中国の北朝鮮への態度は変わってきた。彼らとは協力できる余地がある」。4月に訪中し、習主席らと会談したケリー国務長官は日本に立ち寄ったとき、ひそかにこう打ち明けた。
 その約1週間後に訪中した米軍トップのデンプシー統合参謀本部議長も、「習近平氏は話が分かる。アプローチしやすいかもしれない」との感想をもらしたという。
 米中の協力が本当に深まるなら、北朝鮮のミサイルの射程内にある日本にとっても追い風だ。それで北朝鮮の暴走が止まるなら、日本の安全にもつながるからだ。
 ただ、良いことずくめではない。朝鮮半島をめぐる米中協議の「蚊帳の外」に置かれたら、日本は手探りで長期戦略を練らなければならなくなる。日本人拉致問題も置き去りになりかねない。
 「米中に連動し、やがて米朝対話も始まるだろう。日本も独自に北朝鮮に働きかける足場をつくらなければならない」。安倍首相の周辺はこう話す。飯島勲内閣官房参与の北朝鮮派遣にも、そんな思いがにじむ。
 1970年代初め、ニクソン米政権は電撃的に中国と和解し、日本を揺るがした。98年にはクリントン大統領が日本を素通りして訪中、日本パッシングと騒がれた。
 サイバー攻撃や海の安全保障で激しくぶつかる米中。そんな両国が簡単に近づくとは思えないが、こうした歴史の教訓からも目をそらせない。日本は浮足立つことなく、冷徹に米中協力の地金を見極め、次の一手を練るときだ。
(編集委員 秋田浩之)


 

                                                                           


 

 




 

 



 
 
 






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