2012年10月5日金曜日

肥満の僧侶が タイで急増中

仏教徒が国民の9割以上を占めるタイ。僧侶は人々から尊敬されているが、最近、肥満に悩む僧侶が急激に増えている。
 
バンコク近郊にある寺院の僧侶、パイラットさん41歳。朝のたく鉢に出ると、次々とお布施の食べ物が差し出される。かつては質素な家庭料理が中心だったが、暮らしが豊かになり、お菓子や屋台の肉料理などカロリーの高いものが増えいる。

集まった物はすべて食べるのが原則だが、とても食べきれる量ではない。可能な限り食べ続けた結果、パイラットさんは13年で50キロも太ってしまった。最近は高血圧と糖尿病にも悩まされている。「食べないと“料理がおいしくなかったんだ”と信者もがっかりするので、たくさん食べるしかないんです」とパイラットさんは話す。

 週末には、さらに大量の食事が待ち受けている。大勢の信者が、肉や揚げ物などたくさんの料理を寺院に持ち寄る。僧侶が食べることで、亡くなった先祖や家族が食べたことになると信じられている。信者は「亡くなった子どもと両親のために、お布施をした」「みんながおいしい料理を持って行くから、お坊さんの血圧やコレステロールが高くなってしまうと聞いたが、いいものを持って行きたい」と話す。最近の調査ではタイの僧侶の半数近くが肥満に悩んでいるという。

 



肥満は、日々の修行に影響を及ぼすまでになっている。一番後ろで1人だけ足を崩すパイラットさん。ひざを十分に曲げられないため、お経を読むときはいつもこの格好だ。「よくないとはわかっているが、座れないからしかたがない」とパイロットさん。









僧侶専門の病院も対策に乗り出した。ことし5月からダイエットの講習会を始めた。パイラットさんも参加。威厳を保つため、戒律で運動が禁じられているタイの僧侶はジョギングもエアロビクスも許されない。ストレッチでダイエットに挑戦だ。











講習会のあとパイラットさんは、肉や揚げ物を減らし、野菜と米中心の食事に変更。食後は人目を避けてのストレッチが日課になった。たく鉢では歩数計を身につけ、歩く距離を1キロから3キロに延ばした。











ダイエットを始めて3か月。10キロの減量に成功。しかし、まだ体重は130キロ。ウエストも100センチ以上ある。「以前はたく鉢のあと、ひざが痛くて2、3日休んでいたが今は平気。体が健康なら、あちこちに出かけてたく鉢もできるし、張りのある声でお経を読むこともできる。僧侶として長く活動していきたい」とパイラットさんは話す。昔も今も国民の心の支えであり続けるタイの僧侶。食べきれないほどのお布施と、厳しい戒律の中で、健康な体を取り戻すための取り組みが続いている。
 

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