2012年10月6日土曜日

反日デモを徹底分析 中国共産党の国家総動員令

     反日デモを徹底分析!見えてきたものとは?

過去最大の規模に拡大した今回の反日デモ。映像をよく見るとデモが当局によって組織的に行われた様子が伺える。重慶の15日のデモでは、拡声機を持った男性の後ろに国旗、横断幕、プラカードの順番で隊列が組まれた。同じ15日の北京のデモでは、少なくとも50本以上の同じ形の旗が用意されていた。さらに広州のデモでは、数百人が「開戦」と書かれたTシャツを着て行進。18日の上海では、当局が直接便宜を図っているケースもあった。デモ隊を運ぶためのバスを当局が用意。警察官が見守る中、先導役と見られる男性がTシャツを配っていた。
   
現代中国が専門の神田外語大学の興梠一郎教授は、デモは政府の動員によって行われたものだと指摘する。「映像を見るとホテルだかデパートだかの会社から動員されている人がいる。きれいに化粧しているし、ユニフォームも着ている。明らかに職場で動員かけている。党の組織が学校であれ企業であれいろんなところに根をはっているので、上から動員をかけるとそれが一挙に1つのグループとして総動員される」と話す。

デモの沈静化も当局の指示によるものだった。北京の警察は、市民に日本大使館に行かないようショートメッセージを送信。このメッセージを受けて、デモ隊で埋め尽くされていた日本大使館の前は平常に戻った。前日に1万人以上が押し寄せた上海の日本総領事館前もデモ隊の姿は見られなくなった。興梠教授は「デモは最初から大きくすることも小さくすることもできる。中国の政治体制は当局の思うままにコントールできる。動員国家というのは、全然変わっていない」と話す。


    デモの参加者の多くは若者。1990年代から始まった愛国主義教育を受けていて、特に反日感情が強いといわれている。彼らが中学校で学ぶ歴史の教科書には、日本との戦争が1つの独立した章として設けられている。上海と東北部の瀋陽でそれぞれデモに参加したという20代の男女2人が電話取材に応じた。女性は「みんなが一致団結して抗議の声を上げ気分がとても高まった」、男性は「今回の日本の島の国有化は本当に頭にきた。またデモがあれば参加する」と語った。


インターネットの呼びかけや口コミで集まった若者たちの姿も目立った。広州では祖国を思う歌を合唱するグループや頬に国旗のシールを貼って盛り上がる人たちの姿も。中国ではデモや集会が厳しく規制されている。反日デモであれば、政府のお墨付きで街頭に繰り出すことができ、若者がストレスを発散する機会になると言われている。興梠教授は「遊び感覚で、お祭り感覚でやってる人もいる。普段は彼らは日本のアニメが好きだったり日本の本が好きだったりする子が多い」と指摘する。

一方で、今回の反日デモでは、当局のコントロールがきかない深刻な状況も浮かび上がった。一部の参加者は暴徒化。関係のないホテルの看板を破壊する人たちや広東省では、共産党の建物が襲撃された。経済成長から取り残され、共産党幹部の汚職に怒る人たちの不満が反日デモを機に爆発したとみられている。また建国の父、毛沢東の肖像画をかかげてデモに参加した人たちもいた。興梠教授は「毛沢東の時代はよかったという現政権への批判だ」と話す。全国に広がった反日デモは、中国政府にとって、対応を誤れば批判の矛先が自分たちに向きかねない「両刃の剣」であることが、改めて浮き彫りになった。

 

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