2012年9月22日土曜日

アキレス腱断裂、30~40代で多発 日常生活でも発生

アキレス腱断裂、30~40代で多発 日常生活でも発生

 スポーツの秋を迎え、夏の間の運動不足を解消しようという人もいるだろう。けがをしないように励みたいところだが、特に中年で注意したいのは重傷度が高いアキレス腱(けん)の断裂だ。中にはあまり痛みを感じないため断裂したことに気付かず、治療の開始が遅れたりすることもある。日常生活でも起こるので気をつけたい。

 腱は筋肉と骨をくっつけている組織で、主成分はコラーゲンの線維。アキレス腱は、ふくらはぎの腓腹(ひふく)筋とヒラメ筋を、かかとの骨の踵(しょう)骨に付着させている。人体の腱ではもっとも強く大きい。

30~40代で多発




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 アキレス腱が切れたときは後ろから蹴られたり、棒でたたかれたりしたような衝撃を感じる。バチッといった音がすることもある。「30代ぐらいから増え、40代でスポーツ中に起こす例が多い」と順天堂東京江東高齢者医療センターの副院長を務める黒澤尚・順天堂大学特任教授は話す。

 一般にバドミントン、バレーボール、テニスなどで発生が多いといわれる。ダッシュやジャンプ、急に止まる、強く踏ん張るなど瞬間的に強い力がかかる動作は足に負担をかける。黒澤副院長によると、ボウリングでボールを投げた際や、ゴルフで切る例もある。ゴルフではボールを上り坂になっているラフに打ち込み、そこを駆け上る時などが危ない。

 まっすぐ立った状態に対し、つま先を上げる方向に足首の関節を曲げることを「背屈」と呼び、この動作をすると、アキレス腱は緊張し、断裂の恐れが増す。坂を上るときはこの状態になっている。日常生活でも坂道を走って上るときに切ったりする。スポーツ以外では階段の踏み外しや転倒の際も要注意だ。
 治療法は2つに大別できる。手術療法と手術をしない保存療法だが「ケース・バイ・ケースで一長一短。よく医師と相談して決めてほしい」(黒澤副院長)。手術時の入院は通常1週間以内という。

 一般に多いのは手術療法。切れた腱の端と端を縫い合わせる。背屈とは逆につま先を下げる方向に足首を曲げることを「底屈」と呼ぶが、手術をしたら目いっぱい曲げた最大底屈位という状態にギプスで固定する。その後、固定する底屈の角度を段階的に小さくしていく。このほかに切開をしないで、小さな穴を開けて縫い合わせる方法もある。

 取り外しができる装具などを使ったリハビリ運動も組み合わせる。リハビリをするのは(1)他の筋肉が弱る(2)足首が硬くなる(3)足首を上下に曲げる力が弱くなる――といった症状を防ぐためという。



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 一方、保存療法は最大底屈位に固定、切れた腱の端同士を接触させ、自然に再生させる。「人間に本来備わっている治そうとする力を活用するシンプルな治療法だ」と全日本男子バレーボールのチームドクターでもある杏林大学病院の林光俊医師は説明する。

 手術や入院がないので患者の負担が軽く、それだけ治療費も少ない。一部で見られる傷のうずきや皮膚がつっぱる感じも、手術の場合よりはるかに少ないそうだ。傷痕がないこともあって「1年ぐらいたつと、けがをしたことを言われるまで忘れている人もいるぐらい、ほぼ完全に元に戻る」(林医師)という。

 切れた部分を糸で縫ってないので、ギプスで固定する期間は手術よりもやや長く、治療期間も少し延びるが、せいぜい1カ月程度の差という。断裂してからあまり日数がたつと癒着して再生が難しくなるので、原則、けがから5日以内に治療を始める。
転倒で再発も


 手術と同様、固定する角度は段階的に小さくしていく。ギプスや装具を外すようになる時期は転倒などで再び断裂してしまう危険が最も高いので、特に注意が必要だ。

 治療以前に注意したいのはけがが発生した時の対応だ。アキレス腱断裂は痛みがあまりなかったり、歩けたりすることもある。このため断裂とは思わずに何週間もたってから受診する例がある。勝手に判断せずに、早めに受診した方がよい。

 断裂の簡易な診断法としてはトンプソンテストがある。まず、うつぶせになり膝を直角に曲げて膝から下を垂直に立てる。この状態でふくらはぎを握ってもらうと、正常ならつま先が上がり底屈する。断裂していると底屈が起きない。また、断裂するとつま先立ちができなくなる。腱が切れた部分はへこむ。

 もっとも、けがはしないに越したことはないので予防が一番。「趣味でスポーツをする人は始める前に10分間、ストレッチ体操をしてほしい」と黒澤副院長は訴える。ストレッチの仕方をよく知らない人はラジオ体操でもよいという。

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